10/21(水) 日野 苺④

「野中くん大丈夫かな?」

「ああ、うん。あいつはタダじゃ死なないから」

「でもさすがに学校外だし……」

「んー、あ、来た来た」



 スマホが鳴って、知実くんが画面を見せてくれる。





うんち

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良かった、こっちも平気。

無罪放免。

やっちゃんとメッセ友にな

ったわ

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14:21





「……?」

「あいつ老若男女に好かれるから」

「でも、あれで友達になる!?」

「すごいよね?」

「てかてか、名前なにこれっ!?」

「あ……ずっと表示名変えてたんだよな、忘れてたわ」

「知実くんも忘れる!?」



 顔を見合わせてまた笑った。

 メッセの表示名を戻して、知実くんはお茶を開けた。



「なんか今日、久々に元気ないちご見た気がする」

「えっ、そうかな」

「うん、最近クラスでもおとなしくない? なんか、周りに溶け込みすぎてるような」

「自分じゃわかんないかも……」



 至近距離で見られているのが急に恥ずかしくなって、手元のペットボトルに視線を落とした。



「ダメじゃないけど、いちごはもっとそういうの出していけばいいのにとは思うけど」

「別にそんなつもりないよ〜。それにあたしよりも今まで他の子のほうが大変だったから、目立ってなかっただけじゃないかな。でもほら、今はあたしがメインヒロインだから」

「えっ、なにそのメタっぽい発言、怖いんだけど!?」

「めた? あたしが青春回収するために、知実くんに付き合ってもらってるって話だけど……」

「ああ、そういうこと。いや、ならいいんだけどね!」



 知実くんはなぜかあたふたして、お茶のふたをしめた。



「さて、今日はこんなだし、解散だなぁ」

「そうだね。心配してくれてありがと」

「うん」



 あたしも最後に、自分のお茶に口をつける。呼吸はもうすっかり落ち着いていた。




………………


…………


……




 二人で駐車場を出て、家方面へと向かう。知実くんはカバンとお菓子を両手に持って大荷物だった。



「はあ。なんかごめんいちご。今日、全然遊べなくて」

「え、全然だよ、楽しかったし」

「マジかよ、天使なの?」

「マジマジのマジだよ。制服でこうやって、知実くんと並んで歩いてるだけで充分素敵だから。思い出になったよ」

「女神だったわ!!」



 何かスゴイことをしたかったわけじゃない。こうやって友だちと一緒に、知らない道を歩くことだけでも。あたしにとって特別なことだから。

 知実くんは少し笑って、独り言のように。



「本当に、いちごは手がかからない、いい子だよなぁ〜」

「!」



 ――ああ、本当に良かった。



「またリベンジしような」

「うん、次は放課後にしようね」



 それは誰にも迷惑をかけない代わりに、誰からも特別に好かれることがないってこと。

 あたしはよく知っている。

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