9/17(木) 穂積音和③
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職員室に駆け込むと、奥のソファに音和が座っていて、学年主任と担任と3人で話しているところだった。
「あのっ、すみません。2年A組の小鳥遊です」
「あら小鳥遊クン。今ちょっと取り込んでいるの」
音和の隣に座っていた担任が、拒絶するように言った。
「俺、こいつの保護者に面倒を見るように頼まれていて」
学年主任がふうとため息をつく。
「今日はこれ以上話しても無駄そうだから、明日また話しましょうか。穂積、帰ったら風呂にでも入って、心を落ち着けなさい」
「……」
「なんにもしゃべらないのよ。小鳥遊クン、お家に送ってあげてくれる?」
担任が音和の隣を立つ。
なんでこの人は担任のくせに、こうものんきなんだろうか。どうして音和をこんなところで尋問しているんだ。なにも知らないくせにと思うと、可愛いと評判の笑顔も癪に障る。
「先生。音和、クラスでなにか……嫌がらせとかされてないですか?」
行ってしまう前に質問をぶつけると、担任は立ち止まった。
「んー。友だちと話してるのはあまり見ないけど、無視されてるっていうより、音和ちゃんが恥ずかしがって避けてる感じかな?」
う、それは間違いないんだろうけど……。
「昨日の木に登った理由も、クラスの子にストラップを投げられたって聞いています」
「ああ、それはみんなでふざけて遊んでいたそうよ。音和ちゃんも参加してたのよね?」
「……」
音和は下を向いたまま答えない。
「じゃあ、何か悪口とかは」
「わたしは聞いてないけど、もし言われてるとしたら小鳥遊クンたちが原因なんじゃない?」
「え、俺?」
「だって、野中クンと小鳥遊クンみたいな目立つ先輩男子に囲まれてたら、ちょっとくらいやっかむ女子もいるんじゃないかな♡」
「ちょっとくらいって……」
「クラスのことは注意して見ておきます。だから今日は帰ってゆっくり休みなさい。音和ちゃんも、もっと自分からお友だちを作る努力をしてね? じゃあ先生はこれで」
「っ!」
音和の担任は俺の肩を叩いて、今度こそ行ってしまった。学年主任も腕組みをして考え込んでいる。
いっそここで全部話すか?
いや、様子のおかしいこいつを連れ出すのが先だろう。
「お騒がせして申し訳ありませんでした。……音、帰ろう」
ガタガタと震え続ける彼女を見ているのは辛かった。
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