2017年 冬⑥
┛┛┛
思ってた通り、準備期間の1カ月はあっという間だった。でもそれは、決してまばたきをするような一瞬じゃなかった。
あたしにとって、こんなにも濃い1カ月は今までになかったと思う。
ひとりで頑張ってきた今までとは違う。あたしには味方がいる。
チュン太もきっと不安でいっぱいのはずなのに、あたしの前では常に笑ってくれていて、彼の強さにはとても励まされた。
それからこれは思わぬ副産物だったけれど、チュン太といると、人が寄って来るようになった。
「
そんなことを数人に言われて驚いた。
あたしは自分が他人からどう見られているか、気にしたことが一度もなかったから。
だから、見た目のことだって。ううん、見た目はもとより自信がない。
そんなことをうっかりこぼすと、チュン太は言った。
「あはは凛々姉、それもったいないよ!」
恥ずかしすぎて思わずカバンで殴ったけど、すごくうれしかった。
それからあたしはメガネをやめてコンタクトにして、演説の前には髪の毛をショートに切った。
笑われるかと思ったけど、選挙の日、体育館の舞台袖でチュン太は言った。
「凛々姉はすごいね。再会してわずかなのに、日々、カッコいいを更新してる」
「な、なにを言ってるの」
「でも今日はその一歩だし、これからもっと手の届かない人になるんだね!」
「……え?」
——部田凛々子さんの応援演説は、1年A組、小鳥遊知実さんが行います。
「じゃあちょっち場を温めてくるぜぇ!」
チュン太が颯爽と舞台へと出て行く。
あたしはその背中を、口を半分開けたまま見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます