8/13(木) 部田凛々子③

「凛々……」

「チュン太、あれどう思う?」



 来なすった! どうも思いません!



「ロリスの耳……すね」

「ああ、ロリ耳というらしい」

「詳しいな」

「伝聞よ。……でも、チュン太がどうしてもつけたいっていうなら、別に付き合ってあげてもいいけど?」



 と、澄まし顔で俺の答えを待つ。

 いやいや女じゃないんだから、男でそれつけたいっていうのはよっぽどファンタジースタジオが大好きな人かめちゃくちゃ女慣れしている男しか、思わねーーー!!!


 と、刮目しつつも声には出せない。胸中でしか大きなツッコミが入れられない、自分の小ささにまじ追悼。


 いや? 俺は間違ってないぞ。凛々姉を夢の国で暴れさせてはいけないのだ。人類の平和を守ったといっても、過言じゃないな!



「どうした黙って。そうかそんなにつけたいのか、しかたないなお前は」

「凛々姉、ちょっと冷静に……」

「いいわよ買いましょう。うんうん、どれにしよっか!!」



 そう言うと、凛々姉は屋台のほうへ足早に向かった。



「すみません、コレを2つ」



 うわーーーー!! カンベンしてくれよ、まっっっったく! つけたくない!!

 財布から札を出して購入しようとする凛々姉とお姉さんの間に、俺は急いで身を滑り込ませた。



「ごめんくださーいっ!!!」


「いらっしゃいませ!」

「なによチュン太」



 さすが夢の国スタッフ、超笑顔。接客が行き届いている!



「いや、凛々姉。思ったんだけど、今日は誕生日だろ?」

「それがなに?」

「俺がプレゼントしよう。コレください、ひとつで(強調)! すぐ使います!」

「っ!?」

「どうもありがとうございます♪」



 お姉さんは手慣れた仕草で付属のプラスチックを外し、凛々姉にロリ耳を渡した。



「……いいの?」

「いいよいいよ、これで凛々姉が喜ぶなら安いもんだ!」

「はい? 別に喜んでないしどうしてそう見えるのか分かんないけどあんたがつけろっていうなら、っていうか人が買ってくれたものをつけないっていう無礼で非常識なことあたしにはできないから仕方ないよね、うわーい!」



 早口で言い訳しながらも、屋台の鏡を使って耳をつける凛々姉。

 その後ろで大きなため息をついている俺を、お姉さんはニコニコと見守ってくれていたのだった。


 屋台のお姉さんに「お似合いですよ!」と言われて目を輝かせる高3女子。こうしてると普通に可愛いJKなのになあ。なんなんだろうな、凛々姉の突然野性的になるあれは……。

 ともかく、俺の分のロリ耳は忘れていらっしゃるようだ。助かっっっっっったーーーーーーー!!!!



「さて、せっかくだし何か乗るわよ」

「おっけー。じゃあ地図をもらってくるよ」

「そんなのいらない。とりあえずドリームエクスプレスの先パスを取りに行くのが最優先事項ね」

「えっと……それどこ……」

「一番奥に決まってるでしょ。さあ行くわよ! はぐれたら人生まではぐれさせることになるからその気でいなさい」

「そんな物騒なことここで言うなよ! つか、凛々姉詳しいって!!」

「勘よ!」



 どんだけ好きなんだよ、この遊園地!!

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