7/13(月) 葛西詩織①

 2年階の階段を上がってすぐにできた人だかりを避け、教室に入る。



「あ、おはよーなっちゃん!! いっちーもおはよっ」



 俺たちを見つけてすぐに、七瀬が手を振ってきた。



「七瀬ちゃんおはよ!」

「おう、おはよ」



 俺といちごがそれぞれ席に着く。七瀬も横向きに座り直して楽しそうに脚をぶらぶらさせた。



「ねねね、今日虎蛇だね! ひさしぶりの!」



 期末試験が終わったのは8日だったけれど、俺と先輩の体調不良に考慮して、休み明けの今日が虎蛇再開の日となっていた。



「今日はちゃんと活動あるみたいなんだけど、なんだろうね」

「さあ?」



 合宿の話かなとは思うけど……。とりあえず凛々姉から言うまでは知らないふりをしておこう。


 廊下を見た。いつもの3倍以上の人がせわしなく行き交っていた。

 今日は期末テストの順位発表の日でもある。で、廊下に貼り出されているのが順位表。



「七瀬ちゃんはもう見た?」



 いちごが俺の視線の先を気にしながら七瀬に聞く。



「あー、いいよいいよ。20位内しか掲示されてないんだよ。あたしには無理だって」



 七瀬はあっけらかんと笑う。



「いちごは見に行かないの?」



 いちごはうーんと考えてから首を振った。



「いいかなあ」

「点数よくなかったん?」

「んーと。だってあそこに知実くんの名前、ないし」

「なんで俺? 自分の見なよ(笑)」



 トップ20に俺の名前がないことは、クラスの誰もが知っていた。



「はっ! マイハニーが朝から来てる!」



 同じく張り紙に目もくれず、笑顔で教室に飛び込んできた男がいた。俺の席まで直行で来たかと思うと、そのまま隣の席に座って踏ん反り返った。



「デカイ声でハニー言うな。おっす野中」

「どしたの最近、病弱キャラ?」

「季節の変わり目かねえ。あと暑くてアイスばっかり食ってる」

「腹壊すぞ」

「それで休んでるんだけどな」

「ンマー!?」



 本当に最近は身体がめっぽうつらい。合宿するならその前に一度、病院に行ったほうが良さそうだ……。



「の、ノナカおはよ」

「ん?」

「ん じゃないんですけど。なっちゃんしか目に入ってないっていうんだ?」

「うん、まあ」

「むむー。もういいけどー」



 ふくれっつらだけどうれしそうだなー、七瀬。

 微笑ましく思っていると、野中が思い出したように言った。



「そういえばさっき、張り紙の近くで虎蛇会の3年の人見たけど」



 どくんと心臓が鳴る。反射的に立ち上がると、野中は心底驚いた顔をした。



「だれ……?」

「部田じゃないほうの」



 やっっっっべええええ。いちばん見られたくない子じゃん!

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