6/19(金) 野中貴臣⑤

「そうそう、会長って幽霊信じる?」

「信じない」

「話広がんっっっっねえな!」



 せっかく会話を振ったのに、この会長。自分の興味のある話題以外は無関心を貫くお方でした。



「幽霊がどうかされたんですか?」



 隣で葛西先輩が身を乗り出す。

 そうですよ、これよ大人の対応ってやつは!(と会長に気づかれない程度に顔をしかめる)



「オカルト体験っつか、俺が小学生だった頃の話なんですけど。夏休み、音和が1カ月くらい家にいない時期があって、退屈して海岸づたいに結構遠くまで歩いて行ったら、同い年くらいの男の子に出会ったんですよ」

「まあ。それで?」

「しばらく毎日のように遊んでいたんだけど、音和が帰ってきて、二人で会いに行ったらいなくなってた……っていうオチ」

「ん? いなくなった?」



 会長も口を挟んできた。が、これは幽霊に興味があるとかじゃなく、事件性を感じたからだろうな……。



「毎日か通って探したんだけど、全然見つからなくて。その辺に住んでる子にも聞いてみたけど、そんな男の子知らないって」

「あらーこわいですわね」



 葛西先輩、怖いの全然平気そうだな。めちゃ棒読みなんだけど。



「名前も聞いたんだよ。片山か片岡かわからないけど、とりあえずカタちゃんって呼んでた」

「ふむ。カタなんとかで亡くなった子どもがいるのか調べておこうか?」

「いやいいよ。実際いたら気持ち悪いし……」



 会長のどーでもいい行動力がたまに怖い。



「その話になると怖い話が始まるから嫌い〜」



 音和がテーブルをがんがんと叩く。子どもかお前は。



「……はっ思い出した。あたしにもあったわ、オカルト体験」



 興味なさげだった会長がわざとらしく目を見開き、音和を見た。このドSねーさん、急にノリノリだな!

 そんな二人を見て野中が爆笑する。



「わはははは! なあ放課後、お化け屋敷行かね? 音和は行きたくないみたいだから、その他の人間でっ」

「あーーー!! ずるいーーー!」



 音和が叫んだ。



「ずるいーーーけど行きたくないーーー!! 困るーーー!!」



 かわいい後輩にみんな爆笑する。



 結局、放課後。音和もついて来て、始終泣くはめになっていた。

 でもな。いちばんかわいそうなのは、シャツを鼻水だらけにされたお守り係の俺だと思うんだ。

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