そうだ、動画撮ろう!

 そうだ、動画撮ろう。


 存分に我が聖獣達をもふり倒したあと、私は思い立ってすぐ行動に移した。別に聖獣ちゃんアルバムを作りたい! という思惑が全てではない。ええと、三割くらい? 


 残り七割はこの子達の進化を促すために必要だと思ったからだ。

 ステータスには表示されていないので進化条件は秘匿されているのかと思ったが、どうやらネットで調べた限り【聖獣図鑑】というメニューに登録されているらしい。


 それでまずアカツキの図鑑を見たところ、次の進化条件はレベルが20以上になること。そしてアカツキの前の姿……聖獣ルースターの図鑑にはレベル10以上という文字が表示されていた。


 けれどアカツキが進化したのはレベル1のときである。オボロもそうだ。図鑑では、グレイウルフの進化レベルは10になっている。


 進化先は行動によっていくつか枝分かれしているようだが、二匹共に正統進化だ。アカツキの『聖獣ルースター』はどうやらステータスの力を上げ続けると猛禽類に進化するらしいし。


 だがそれもレベル10までに力を一定以上にするという条件となる。レベルは絶対だ。でも、この子達は違う。


 ――ならどうして進化したのか? 


 観察眼で【信仰度】というものがあると分かり、それが進化にも関わるらしいことが分かっているだろう。ならアカツキやオボロがレベル1で進化できたのはその【信仰度】が密接に関わっているということだ。


 つまり、私自身の信仰をもっともっとこの子達に捧げるしかない! 

 そして、信仰度の説明にもあったように、私だけの信仰では経験値として貯まりにくくなる……な ら ば ! 


 信者を作ればいいんだ! 私天才! 


 というわけでこの子達の超絶可憐で美しいバトル風景を撮ることに決めました。だってもふもふと触れ合うだけの動画なら既に誰かアップしているだろうし、なるべく人の印象に残るようにしたい。ならばやることはただひとつ! 


 魅 せ プ レ イ だ ! 


 圧倒的な魅せプレイによる、この子達への信仰を集める! それが進化への近道なのだ! 


 まあ、モンスターによるバトルも悪くないけど、私はコンテストのごとく魅力を引き出すようなことをするのが好きだからね。従来のスローライフ系では毎日ブラッシングしたりして徐々にパラメーターを上げていくものだったけど、ここではそういう制限はないみたいだし、なんならVRだからいつも遊んでいるゲームより自由度が高い。


 それにだ、この世界では『敵を倒す必要がない』というのが重要だ。


 優しい世界。傷つける必要がないのなら、ひたすら受け流したり技を相殺したりしていけばいい! その過程で美しく舞うように行動できれば最高じゃない? なんせ私、舞姫ですし。


「アカツキ、オボロ、作戦があるのです。付き合っていただけますか?」

「くう!」

「うぉん!」


 こうして、ゲーム内時間で太陽がお空の天辺にやってきた頃……メニュー欄の撮影機能を駆使しながら、私ははじめての魅せプレイ動画作りを開始するのであった。

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