信頼の進化! スノウホワイト・ウルフ!
「よーしよしよし、いい子ですねーオボロ」
「くうん、くうん」
「アカツキもよく頑張りましたねー」
「クーッ!」
即決で名前をつけ、グレイウルフのブラッシングをし始めて更にゲーム内時間で一時間。草原の中の安全地帯であろう場所で、土埃に塗れた灰色の毛並みをひたすら整えていた。
安全地帯っぽいとはいえ、フィールド上である。たまにやってくる魔獣はアカツキが引きつけ、ある程度相手の攻撃を受け流したり避け続けたりしているうちに『撃退』することができる。
相手が満足行くまで相手をすれば『撃退』扱いとなり、なんと経験値も入ってくるのだ。やはり戦って倒す必要なくレベルも上がっていく仕様になっているようである。
ただ、レベルが上がってもステータスは上がらない。こちらはステータスを上げるために必要な行動があるのだが……それはとりあえずあとだね。
まあ、まずは。
ビバ! 優しい世界! ですよね!
私はそういう優しい雰囲気、大好きです! ますますこのゲームが好きになっちゃいましたよ!
「オボロはふさふさですねー」
「わふぅん」
━━━━━
聖獣個体名【オボロ】の進化が可能です。
━━━━━
っと、ついにオボロにも最初の進化が来たね!
ブラッシングしまくってれば来ると思っていたんだよ! 大正解だった!
ちなみに名前の決め手は
実はステータス確認をせずにひたすらグルーミングをしていたので、この子のスペックとかなにも分からないんだけどね。
とりあえずオボロをスカウトし、やってくる魔獣の『撃退』を続けていたため私とアカツキはレベル6になっている。オボロは戦闘がまだなのでレベル1のままだ。
戦闘しているのはアカツキだけだが、『比翼』の効果が働いているせいか、私はなにもしなくともアカツキと同じだけ経験値が入ってくる。若干罪悪感がないでもないが、便利なのでいいでしょう。
「はい、進化っと」
目視できるボタンを手動でタップ。
すると、立ち上がったオボロの灰色の毛並みがざわりと動く。目と目の間に黒い宝玉のはまった美しい狼が、悠然と佇み足を揃えて遠吠えした。
――その途端、額の宝玉がその内より滲むように色を変化させていく!
黒曜石のような黒から、明るく澄んだ冬の空のような淡い水色に。そして、宝玉のはまった額から全身にかけて、まるで流水が巡るように灰色の毛並みが真っ白な美しい毛並みへと変化していった。
後に残ったのは、鈍い灰色の毛皮から純白の神々しい毛皮へと衣替えし、ひと回り大きくなったオボロの姿だけ。
私は感嘆の声を漏らしてから、その毛並みにそっと指先を沈める。それから一気にオボロの首に腕を回して額と額をくっつけた。
「綺麗ですよオボロ! さすがは女の子! こんなに綺麗になってしまうなんて……! お姉さん嬉しいです!」
「くうーん」
嬉しげに鳴くオボロの背中にアカツキが乗る。
大型犬よりもなお大きいオボロに、これまた大きいニワトリのアカツキが乗っている姿は『ブレーメンの音楽隊』をちょっと思い出す。
胸を張って「クックー!」と言うアカツキの首元を撫でる。多分自分も愛でろ! という自己主張だろうからね。
「はあ……幸せです」
溜め息を吐いて二匹まとめて抱きしめる。
視界の端で、オボロの種族名が変化して『スノウホワイト・ウルフ』となったのが見えていた。
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