第二十七話 佐久間象山のアジア戦略
「今の状況において、日ノ本の取るべき対応策ですか」
佐久間象山先生は暫く考えてから話を始められました。
「まず、現状において、盤面にはイギリス、ロシア、清、太平天国などの様々は役者がおり、それぞれが、それぞれの思惑で動いております。
また、先程、僕が申し上げましたように、どの国も、最善手を打てる訳ではなく、間違った手を打って来る可能性も十分にございます」
「となると、その場、その場で臨機応変に対応するしかないということでございますか?」
アッシが尋ねると、象山先生は呆れたように首を振った後、安藤信正様を見て、納得したように頷く。
さすがは、象山先生、アッシが聞いた意図を察せられたようでございますね。
安藤様は、阿部正弘様や象山先生が練ってきた戦略を何処まで理解しているか解りません。
であるならば、結果だけ伝えるのではなく、戦略の根本からお伝えした方が良いと思うのですよ。
「臨機応変というのは、確かではある。
だが、前提条件として、国家としての目標を第一として考える必要がある。
その上で、国家目標を実現する為の政略目標、政略目標を実現する為の戦略目標、戦略目標を実現する為の戦術目標があり、そこを念頭にして、臨機応変に対策を練っていかねばならぬのだ」
「なるほど、それでは、まず、日ノ本の国家目標について。
日ノ本が目指すべき国家目標とは、日ノ本を異国の侵略から守ることでよろしいでしょうか」
「そうだ。
欧米列強が侵略を目論む、今の状況において、我が国の最大の国家目標は、我が国の独立を守り、異国からの侵略を防ぐことだ。
平八君が夢で見た様に、日ノ本が異国に事実上の分割支配される様な状況にされないようにするためにもな」
「そして、その国家目標を実現する為の政略目標としては、富国強兵でよろしいでしょうか」
安藤様の顔色を伺いながら、アッシは象山先生に尋ねる。
この根本原則を理解されていないと、今後の対策にズレが出る恐れがございますからな。
「そうだ。交易を行い、産業を振興して、国を富ませる、富国。
軍備を開発、購入し、兵を鍛え上げる強兵。
これが我が国の取るべき基本的な政略目標だ。
この政略目標を達成することが出来なければ、国を守ることなど出来はしない。
だから、軍備の足りない今の状況では戦いを避け、時間を稼ぐ必要があるのだ。
その上で、可能であるならば、日ノ本が繁栄すれば、異国も繁栄するという体制を作り上げる。
日ノ本だけが儲かるという仕組みにしてしまうと、異国からの妬みを生み、その体制を覆そうとする勢力が生まれる。
清国が今やられている様に、異国からの武力侵略を誘発する結果を生みかねないからな」
「確か、清国はイギリスに朝貢を行わせているつもりで、銀を大量に貢がせ、代わりに陶磁器や茶などを与えたのでしたな」
アッシが確認すると、象山先生が頷かれる。
「その通りだ。
清国は自国が地球で一番の存在であると自任している。
実際は、どうであるかは別にしてな。
それ故、清国はイギリスからの銀を朝貢の貢ぎ物として受け取り、その褒美として、イギリスの望む茶や陶磁器を下賜していたのだ。
清国がしているのは、交易ではない。朝貢なのだ。
清国にとって、文明国である中華は己のみで、周辺に住む異国は全て蛮族。
それ故、貢ぎ物を受け取ることはあっても、異国から取得したい物など存在しない。
結果、清国との取引で、イギリスは大量の銀を失って、陶磁器と茶だけを買い取ることとなる。
そうやって損失を重ねたことが、イギリスが清国を攻撃することを決めた一因であると僕は考えている」
「その様な事態を避ける為、我らも異国の物を買わねばならぬと?」
安藤様が不満そうに尋ねられる。
まあ、攻撃されない為に、異国の物を買わなきゃならねぇなんざ、お侍としては面白いことではないでしょうな。
だけど、象山先生は、そんな安藤様の不満に気付きもしないのか、平然と応える。
「清国の様に攻撃されたくなくば、少なくとも日ノ本との取引で損をしていない。
むしろ、得をしていると異国に信じ込ませる必要はあるでしょうな。
幕府と外様大名の様に圧倒的な武力の差があるならば、力で抑えつけることも可能でしょう。
ですが、武力で劣るのに、良い関係を築きたいなら、近江商人の様に、売り手良し、買い手良し、世間良しの三方良しの関係を作り上げるしかないでしょうな」
力で押さえつけるのは愚策。
日ノ本の繁栄が異国の繁栄に繋がる仕組みを作り上げるのが上策。
それが出来れば、確かに日本を侵略しようとする勢力は現れず、あるいは日ノ本の侵略を企む勢力が万が一現れても、日ノ本を守ってくれる勢力が現れてくれるということでございますな。
もし、日ノ本の繁栄が、異国の繁栄に直結するのであれば。
「その様な方法は、本当にあるのか」
安藤様が訝し気に尋ねると、象山先生はお答えになられる。
「その方法と仕組みを探る為に、異国の情報を集める必要があるのです。
異国には、どの様な物があり、どの様な物が売れるのか。
その為に、今、アメリカの視察団に、日ノ本の様々な物を見せ、何を欲しがるかを確認している最中でございます。
更に、今のところ、我が国としては、異国の進んだ技術を取り入れる為に、武器や機械、それを生み出す工作機械などを必要としておりますが、異国も最新の物は売りたがらないでしょう。
ここにも、問題がございます。
また、我が国も技術開発を進めているところですから、もし我が国の技術が異国に追いついてしまったら、その場合、異国から何を買うかも考える必要があるでしょうな」
そう言うと象山先生は腕を組んで考える姿勢を取る。
日本の基本政策として、富国強兵を掲げ、日本の繁栄が異国の繁栄にも繋がる仕組みを作り上げることだとしても、その実現方法は決して簡単ではないということでございますね。
まあ、この辺は、情報収集しながら、考えるしかないことでございましょう。
放っておくと、象山先生が考え込み始めそうなので、アッシから声を掛けることにする。
「富国強兵が日ノ本の基本政略となることは解りました。
それでは、その富国強兵を実現するための戦略は、何でございましょうか?
富国強兵を実現するための時を稼ぐため、異国に敵を作らず、どの国とも友好関係を築くということでよろしいのでしょうか?」
アッシがそう尋ねると象山先生は肉食獣の笑みを浮かべて応えられる。
「それは、半分正解、半分不正解であるな。
平和共存を望む国が相手であるなら、その信頼に応えるべく、良き友であるべきだろう。
だが、油断をすれば、いつ襲い掛かってくるか判らない野蛮な国に対しては、それ相応の対応をする必要があろうな」
象山先生が話すのを見ながら、横目で安藤様の様子を確認すると、どうも、解ってらっしゃらないようなので、アッシはもう少し突っ込んだ話をすることにする。
「その為に、日ノ本を侵略する恐れのある危険な異国を分裂させ、あるいは互いに争わせる二虎競食の計を仕掛ける訳でございますな。
我が国に手を出す余裕をなくさせる為に。
まあ、あまり露骨にやると目の敵にされますので、表面上は友好的で無害な存在を装いながら。
善意で行ったことが、結果として、偶然にも争いの火種になってしまった様な顔をして。
それが、アメリカの分裂促進、コロニーとなっている天竺の独立運動活性化、イギリスとロシアの間の争いの劇化、ということでございますな」
アッシがそう言うと、象山先生が不機嫌そうに呟く。
「イギリスとロシアの対立の激化は僕の策ではない。
確かに、アラスカを買い取り、ロシアに戦争継続資金を与えた上で、策を与え、イギリスのコロニー天竺の独立運動を促し、イギリスとロシアとの対立を激化させたのは、結果として悪くはなかった。
だが、それが日ノ本の策であると知られれば、イギリス、フランスの反感を買い、侵略の口実を与えかねぬ危険な策でもあったのだ。
その上、アラスカ購入により、日ノ本には豊富な資金があると欧米列強に認識されてしまった。
それは、異国に我が国が魅力的な獲物であることを知らしめることであり、あまり良い手であるとは言えないのだ」
全く、象山先生は本当に子どもでございますねぇ。
自分が考えていない策を実現されるのが、そんなに気に入らないのですか。
とは言え、もう打ってしまった策は取り消すことが出来ない以上、今の状況に対応する必要がございますから、少し機嫌を直していただかないと。
そう思って、アッシは象山先生に声をかける。
「仰せの通りでございますな。
とは言え、たとえ悪手であろうとも、打ってしまった以上は、布石として利用するしかありますまい。
他の者であるなら、取返しのつかないことになるやもしれません。
しかしながら、象山先生なら、悪手を好手に化けさせる妙手をご存じなのではありませんか」
アッシがそう尋ねると象山先生は機嫌を直してくれたようでニヤリと笑い、顎鬚を撫でながら答える。
「まあ、確かに、僕なら、その程度のこと、朝飯前ではあるな」
「ならば、他の方が打ってしまった手については、批判しても仕方ないのではございませんか。
どうせ、象山先生が、うまく補ってしまうのですから」
「そうだな。僕は心が広いからな。
人間は間違いを犯すものとして、多少の失敗なぞ目を瞑って、先のことを考えてやるとするか」
調子の良い象山先生を安藤様は呆れたような顔をしているが、もう、そんな象山先生に慣れてしまった阿部様は苦笑しながら、話を進める。
「それは、助かる。
現在、我らは地球の各地、ヨーロッパ、アメリカにも人を派遣している。
日ノ本から遠く離れている者の中には、こちらの意向を確認する余裕もなく、こちらの考えていない手を打ってしまう者が現れるやもしれん。
どうか、それらの者がどんな手を打とうとも、それらの失策を補ってやって欲しい。
佐久間殿ならば、いや、佐久間殿でなければ、出来ないことであろうからな」
その言葉に明らかに得意げな顔になる象山先生。
実に、解りやすい方でございますよ。
「そうですな。
イギリスとロシアの対立を煽った今の状況から考えますと、イギリス、ロシアに敵視されないよう気を付けるのが第一でしょうな」
「とすると、今回の第二次アヘン戦争には、手を出さないのが一番ということでよろしいのでしょうか。
しかし、今、対馬経由とは言え、交易を始め、香港などの異国に交易船を出している状況では、
そして、情報が漏れれば、我が国には、
アッシは象山先生に懸念事項を伝える。
まあ、自分でも考え過ぎかもしれないとは思いますがね。
そして、威勢の良い強硬策は、慎重策よりも支持を得やすいということもございます。
となれば、非難を受けない為の策を用意した方が良いと思うのですよ。
アッシがそう尋ねると、象山先生が首を傾げて尋ねる。
「確かに、情報を隠すことは難しいだろう。
だが、今の我が国に、日ノ本を出て異国と戦おうなどという勢力が本当にいると思うのか。
水戸藩の方々はロシア派遣で異国の実力を十分に理解しているはずだ。
国防軍の攘夷強硬派は、今、アラスカ探検に向けて出発中。
異国との国力の差を実感し、今はまだ戦うべきではないと理解することであろう」
「仰せの通りでございます。
確かに、アッシの夢で、攘夷を叫び、実際に異人を攻撃した方々は、象山先生の策により、目を醒まされたことでしょう。
ですが、アッシの夢が何処まで当たっているのか。
その上、夢に現れなかった強硬派がいる可能性もございますれば」
「なるほど、相変わらず平八君は慎重だな」
「それに、この
時間が経てば、準備が出来たと考える方もいらっしゃるかと。
いや、本当に、欧米列強に対抗出来るだけの兵力を手に入れた場合の象山先生のお考えもお聞きしたく」
アッシがそう言うと、象山先生は少し考え、話始める。
「たとえ、強兵が実現したとしても、富国が実現し、異国との間に共存共栄の体制が築けているのならば、それを崩す必要はない。
博打のようなもの。戦わずに済めば、それに越したことはないのだ。
あるいは、有利な状況で侵略国を呼び込み、完膚なきまでに撃退して、その実力を地球中に示す必要があるかもしれんがな」
象山先生が話を続ける。
「だから、基本的に撃って出る必要などないのだ。
アラスカを確保出来れば、資源の問題もなくなることであるしな」
「とすると、たとえ強兵が実現していようとも、清国とイギリスの争いに介入すべきではないと」
「どちらの側に立って戦ったところで我が国に益はないのだ。
我が国は、儒教国家とは相性が悪いのでな」
象山先生がそう言うと驚いた安藤様が声を上げる。
「何故だ、佐久間。
我が国も権現様(家康)の時代より、朱子学(儒教の一派)を国の礎に置いている。
同じ価値観を持つ国との相性は決して悪くないとは思うのだが」
安藤様がそう言うと、象山先生は首を振って応える。
「確かに、我が国と他の儒教国の間では仁義忠孝礼智信という徳が重要であるという認識は一致しているやもしれません。
ですが、海を隔てた為か、孔子の提唱した儒教の教えは、正確には我が国に伝わっていないのです。
あるいは、幸運なことなのやもしれませんが」
象山先生がそう言うと阿部様が興味深げに尋ねる。
「何処が違うのだ、佐久間殿」
「儒教とは、恐らく乱世を治め、秩序を維持する為の教えなのでしょう。
ですが、我が国では、孔子の提唱した徳よりも、お家の方が大事となっているようなのでございます。
我が国では、『老いては子に従え』、という言葉があるように、家を保つ為の実力が重要となってきております。
家を保つ力を持たぬ嫡男が廃嫡されることも珍しいことではございません。
ですが、これは儒教の教えからすれば、とんでもい不忠なのでございます。
親がどんなに愚かでも子は親に忠を尽くさねばならない。弟は兄に常に従わねばならない。
当主と言えども、隠居した長老には頭が上がらないのが儒教の教えにございます」
なるほど、確かに日ノ本とは大分違いますなぁ。
日ノ本では、お侍でなくとも、財産のある庄屋、
ですが、能力を無視して、地位を固定するような国がやっていけるのかと疑問になったので尋ねてみることにする。
「象山先生、日ノ本が他の儒教国と違うことは理解できました。
ですが、その様に、実力と関係なく、地位が完全に固定化されている儒教国が本当にやっていけるのでございますか」
アッシが尋ねると象山先生は平然と応えられる。
「やっていけるはずがなかろう。
だから、中華と名乗るかの国は、200年から300年に一度、大規模な反乱を引き起こし、革命の名の下に王朝が交代している。
まあ、官僚は科挙と言う試験で選び、地位に関係なく採用していたから、それで国家は運営出来ていたのやもしれんがな。
だが、それでも、貴族も、皇帝も愚かなままでは、どうしようもないということだろうな」
象山先生が応えると、暫く考えていた阿部様は話しかけられる。
「つまり、愚かでも、父や兄に従わねばならぬという常識を持つ儒教国相手では、日ノ本は、何をしても目下の者としての振る舞いを求められる。
それ故、関わるべきではないということだな」
阿部様の言葉に象山先生は嬉しそうに頷く。
「ご明察でございます。さすがは阿部様。話が早くて助かります。
清国も、朝鮮王国も、我が国を儒教的価値観の下、子あるいは弟と看做しております。
その様な国との間での対等な同盟は不可能。
我が国の価値観に基づけば、家を傾けた愚かな当主など、尊重する価値もないのではありますが、儒教国においては、何も出来ずとも尊重されるのが当主。
それ故、かの国の為に、血を流し、助けたところで、子や弟が忠を尽くすのは当然、天晴と看做されるだけ。
逆に、イギリスら欧米列強と共に攻めたところで、不忠であるとして、儒教国相手では、激烈な批判、反抗を受けることは明白。
その様な難治の土地、関わり合うだけ損であるかと」
象山先生がそう言うと安藤様が反論する。
「待て、佐久間。
我が国には天子様が
安藤様がそう仰せられると、象山先生は感心したように頷かれる。
「ほう、安藤様は国学の知識もあるのでございますね。平八君は解るか?」
「いえ、国学の方はとんと」
「そうか。では、教えてやろう」
そう言うと教えたがりの象山先生は、嬉々として説明を始める。
「先ほど、儒教の話をしたが、儒教においての統治の理想は王道であるのだ。
王道とは、皇帝が徳を持って、公明正大な統治を行うことであるな。
これに対して、武力などの力で支配することを覇道と呼ぶのだ。
そして、驚くべきことではあるが、儒教国であるはずの清国も朝鮮王国も、王道の国にあらず、覇道の国なのだ。
清国は今から約200年程前に、蛮族と呼ばれていた女真族が明国を滅ぼし打ち立てた国。
朝鮮王国も、今から500年程前に高麗の武将が、高麗の王を廃して打ち立てた国。
これに対して、我が国の
それ故、本当に貴ぶべき天子様とは、清国や朝鮮の皇帝を僭称する連中ではなく、日ノ本の天子様である、とするのが国学の考え方だ」
象山先生の説明を聞いてアッシは頷く。
なるほど、確かに儒教の考え方から見ても、日ノ本が見下される筋合いはないという考えは解りますが。
「ですが、その考えを他の儒教国が受け入れる見込みはあるのでしょうか」
象山先生はため息混じりに首を振ると答える。
「ないだろうな。我らは和魂漢才。
必要な技術や知識を異国から取り入れているだけのつもりでいる。
だが、連中は文化文明を教えてやった辺境国であると我が国を見下しておる。
起源は我が国にあるのだから、それを教わった弟子である我が国は黙って従えというのが連中の常識なのだ。
実際は、自分達で作った文化ではなく、簒奪したものであるにも関わらずな。
その様な相手、我が国に従うこともなければ、我が国と協力関係を築けるはずもないだろう」
「確かに、友好関係を築くことは難しそうだな」
阿部様が仰ると象山先生は頷き続ける。
「はい。我が国を見下し、支配下に置こうとする国と付き合うことなど、我が国の為になりません。
欧米列強の様な侵略国同様、内乱を誘発し、分裂しておいて貰った方が、日ノ本の為かと」
象山先生が再び悪人の凄みのある笑顔を浮かべる。
その様子に苦笑しながら、阿部様が尋ねる。
「とは言え、何もしない訳にもいくまい。
現地の情報も集めねばならぬであろう。
だが、
その上で敵を作らないならば、どうする」
「さて、まずは香港に船を出し、上海租界からの避難を手伝うと申し出るのは如何でしょうか。
今は安全でも、太平天国の暴徒が来るならば、避難をしたいと言うものは少なくないはず。
ですが、イギリスだけでなく、他の国も、今、上海に送れる蒸気船は多くはない。
そんな状況で助けてやれば、日ノ本の評判は上がり、後々、日ノ本を侵略しにくくなるかと」
「なるほど。蒸気船を異人の人助けに使うか」
そう言うと阿部様は腕を組んでから、続けて聞かれる。
「悪くはない。
だが、出来るのか?
欧米人から見れば、清国人と、我ら日本人の区別すらつかない可能性もある。
その様な者が避難を手伝うと申し出たところで、下手をすれば攻撃を受ける恐れすらあるのだ。
かなり、難しい仕事となるだろう。
それにも関わらず、人が足りないのが現状。
今はアメリカ視察団が訪日中で、勝など、話の機微が解りそうな連中は、既にそちらに同行していると聞いておるぞ」
「確かに、海舟会で話の解りそうな連中は出払っておりますな。
と言って、僕が行く訳にもいきませんし」
まあ、そうですよね。
まあ、ご本人から行くと言うはずもなく、行くと言っても止めらるでしょうね。
アッシがそんなことを考えていると、象山先生は顎を撫でた後、アッシを見てニヤリと笑う。
「そうだ。平八君、香港まで行ってみないか?
英語など、海軍に行けば話せる者位いるだろう。
僕が一筆書いてやる。
僕の代理をして貰えないだろうか」
象山先生が楽しそうに微笑んだ。
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