第7話
「くそっ!! なんだ!!」
「この、光……」
震える。シャハルの、瞳が、唇が、体が。
シャハルは目を鋭くして、部屋を飛び出し、銃を持って外へと駆ける。すると、そこには来黒いフードを深く被った男と、その後ろに二体のアルマンが。
「よぉ、くそガキ。昨日ぶりだなぁ……」
男はそう言って、ニィッと笑みを浮かべた。その笑みに、シャハルの背筋が凍る。すると、後ろからポンと、誰かの手がシャハルの背中に触れた。
「シャハルちゃん、下がって」
「……えっ」
そう声をかけたのは、サラ。シャハルの横を通り過ぎ、「さーてと」と腕をグッと伸ばしながら剣を抜いているニータ。
「おい、てめえ、噂の人殺しか? まさか本当にお目にかかれるとはなあ」
「……なんだ、てめえ」
「てめえにてめえとは言われたくねえなあ! はっはー! ……サラ、準備はいいか?」
「……当然よ」
「さあ、狩ろうか」
ニータの言葉に、シャハルは目を丸くする。シャハルちゃんは下がってて」というサラの言葉に、シャハルは小さく頷き、一歩下がる。そして玄関のドアをあけると、ニグムが剣を持って立っていた。
「あん、た……」
「お、れ……シャ、ハルと一緒に……」
「……私と一緒に……?」
シャハルが首を傾げると、また先ほどと同じく、外が赤く光る。振り返れば、シャハルは目をまん丸にする。振り返った先の光景は、右側に息を荒くしているサラ、そして敵の近くで両肩から血を流しているニータ。その光景に、シャハルはグッと噛み締め、銃を持って左へと走った。
「こっち!!」
ニグムの手を取って、必死に走る。
(ニータさんは、ほぼ動けないのと同じだ。サラさんは、まだ動けそうだけど、狙われたら終わりだ。動ける私に気を向かせよう)
「私が煙玉を投げたら、ニータさんをこっちに」
「……わか、った」
「……いくよ」
シャハルは思いっきり煙玉を地面へと投げる。その煙に、男は「ちっ」と舌打ちをした。そして、ニグムは煙に飛び込んでニータのもとへといく。
「はっ、こっちはアルマン二体だぜ?」
男はそう言って、「おい!! 例のをやれ!!」と荒く叫ぶ。その言葉に従うように、アルマンは口から風を出し、煙を飛ばす。ニグムとニータの姿が見え、男はニッと笑う。そして、ニグムとニータへ銃を向けるが、その銃にシャハルが撃った弾が当たった。
「その銃、もう使いものにならないんじゃない」
「このくそガキ……っ」
ニグムとニータがシャハルのもとへとたどり着き、「サンキュ……っ」とニータが声を振り絞る。
「……べつに」
シャハルは、男へと視線を移す。すると、サラが男とアルマンに銃を乱射しているが、アルマンには効かず、男はアルマンに守られている。
(ギルドの人って、いい腕の持ち主ばかりってきいてたのに……これじゃ、ガッカリね)
そう思いながら、シャハルはニータとサラに冷たい視線を送る。そして、銃をアルマンへと向けた。
「おい、銃はアルマンに効かねえぞ……」
そんなニータの助言に、シャハルは「黙ってて」と言い放つ。
(あの鉄の装甲に銃が効かないのは百も承知。なら……)
「ねえ、ニータさんだっけ? 足は動くでしょ。悪いけど、アルマン一体の相手、サラさんとお願いしたいんだけど」
「……俺に指図か?」
「勘違いしないで。どっちも倒すのは私よ。ただ、二体を同時に相手にするのはさすがに無理だから、一体倒すまでをお願いするの。それとも、時間稼ぎすらできる自信がないの?」
そう挑発するようなシャハルの声色に、ニータは「けっ」と笑う。そして、剣をもち、「黙ってろ、くそガキ」と笑ってサラの方へと駆けていった。
「シャ、ハル、俺、は」
「あんたは、前線で戦って。あいつの動きは私が止めるから、その隙にぶちこわして」
「わか、った」
ニグムはそう答えて、もう一体のアルマンへと向かった。そして、シャハルは向こうのアルマンへと銃を向ける。
(この銃でアルマンを倒すのは不可能。でも……)
シャハルが引き金を引くと、その弾はアルマンの膝の関節へと。それにより、アルマンの足は上手く動かなくなり、動きが止まる。
「でも、動きを止めることくらいはできるのよ」
そう言って、もう一度引き金を引いた。その弾は右腕の肘の関節へと。それにより、剣は振りかざすことはできず、アルマンの胸にニグムの剣が突き抜けた。そして、アルマンから煙がでて、四肢が崩れていった。そして、それによりあちらこちらに火がつく。
「……まずは、一体」
シャハルは、ふうと息を吐き、ニータの方へ視線を移すと、目を丸くし、唇を噛み締める。
「ったくよお……まさか、小娘にアルマンを壊されるとわなあ……。まっ、そっちのアルマンはお古だ。昨日できたばっかのこのアルマンには、勝てねえよ?」
そう笑った男の後ろには、ニータとサラが倒れていた。二人の下の地面には、大量の血が流れており、二人ともピクリとも動かない。
「おい、今日はハッピーデーだあ。三人も狩れるんだからよお」
「……あら、わかってるじゃない。今日はあんたにとって記念日になるわよ。……命日っていうね」
「この……っ、くそガキが……っ!!」
男の言葉により、アルマンが右手の指をこちらへと向けられる。シャハルは、その指を狙って、三発撃つが、以前のように指の向きは変わらない。
「なっ……」
シャハルは目を丸くする。そして、中指と人差し指から青色のビームが放たれた。シャハルに当たる寸前、ニグムがシャハルへと飛びつく。
「……っ」
ニグムの両肩には、ビームによって焼けた跡。そして、致命傷は避けたが、シャハルの両足首にはビームが擦った跡が。
「ほお、アルマンが盾になるか」
アルマンは、左の指を向ける。そして、人差し指と中指から今度は銃弾が放たれた。その銃弾はニグムの両肩へとあたり、先ほど焼けた肩は、そっと崩れる。
「あんた肩が……っ!! 退きなさいよ!!」
「……」
「あんたアルマンでしょ!! その程度の肩の絆なら、逃げるなんてどうってことないはずよ!! 私なんか置いて、早く退きなさいよ!!」
「……」
「……っ、あんただけでも、生きてよ……っ!」
シャハルの振り絞られた声が響く。そんな中、ニグムがゆっくりと口を開く。
「シャ、ハルは、わが、まま、むすめ」
「……こんなときまでっ、わかってるわよ!! これが最後のわがままよ!! お願い……っ、お願いだから……っ」
シャハルは下を向き、必死に叫ぶ。しかし、ニグムは「だけど」と付け出す。
「だけど……と、っても、やさ、しい……女の子」
そんなニグムの言葉に、シャハルは目を丸くした。そして、顔をあげる。シャハルの瞳に、ニグムの大きな背中が映る。
ニグムはゆっくりと右腕を動かす。拳を握り、左胸へと当てた。その動きに、シャハルは瞳を揺らす。
「お、れは、ニグム。アッ、シャ、との、約束、守るため」
ニグムの言葉に、シャハルの唇が震える。
「シャ、ハルを、まもる、ため、たたか、う」
その言葉に、シャハルの頬に、一筋の涙が流れた。
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