第4話七大地獄《セブンス・ヘル》への挑戦
愛しの母親を惨殺した、六人の勇者たち。
奴らに復讐する力を得るため、魔界の試練、《
第一の階層の主は《
「さぁ、次はクソガキの番だぜ。頑張りな」
「そ、そんな……あんな化け物を相手に……」
最悪の勇者たちには、絶対に復讐したい。
だが目の前の試練は、予想を遥かに超えていた。
今のボクはまだ七歳の子ども。森の獣なら狩ったことはある。
だが目の前にいるのは、山のような巨大な蛇の化け物なのだ。
「クソッ……やってやる!」
零剣を構えて、突撃していく。
これは力を得るための試練。
きっと何か突破口があるはずだ。
――――だが甘かった。
ガブリっ!
瞬殺だった。
《
「ウァアアア⁉ 身体が痛いよぉお! 熱くて、痛いよぉお!」
真っ暗な《
ボクは強力な酸の海によって、だんだんと消化されていく。
辛うじて生きているのが災いして、地獄のような苦しみ。
ひと思い出に楽にして欲しいほどの、苦しみと激痛だ。
――――そし意識が途絶える。ボクは死んでしまったのだ。
だが、その直後だった。
「えっ⁉ 生きている⁉」
気が付くと、ボクは元の場所に立っていた。
隣には不敵な笑みの魔族公爵ダンテがいる。
「ど、どうして、ボクは……生きているの? もしかして助けてくれたの、ダンテ叔父さんが?」
「はん! そんな訳ねぇだろう! この《
えっ……そんな法則があったの。
最初に言って欲しかった。
「ん? ということは今のボクは無敵なんですか? 不死身の身体の?」
それなら《
何回も死に直して、経験を積んで突破口を見つけていけば良いのだ。
「はん! おめでたい奴な! そんな都合の良い話が、地獄にある訳ねーだろう。ほら、アイツを見てみろ」
ダンテ叔父さんが指差した先にいたのは、先ほどの
ボクと同じ様に《
だが様子がおかしい。
『あああああ■■■■■■■■――――!!』
叫んだ直後、肉体が砕ける。
死体は地面へと沈んでいく。
「えっ⁉ し、死んだ⁉ でも、肉体は死なないはずなのに……」
「精神が持たなかったのさ、あの
「精神が……ですか?」
「ふん、説明するもの面倒だ。とりあえず《
「えっ、はい」
待ちかまえている《
――――いや、足が動かなかった。
ガタガタガタガタ……
全身が恐怖で震えて、一歩も動くことが出来ない。
歯も震えて心の奥底から、とんでもない恐怖が込み上げてきた。
――――もう二度と、“あの死の恐怖”は味わいたくない!
「はっはっは……ようやく理解したか。死の恐怖は人も魔族も同じ。大抵の奴は三回目で、さっきの
「せ、精神が砕ける……」
「この《
ダンテ叔父さんは他人事のように、面白そうに高笑いを上げる。
見た目は普通の青年だが、中身はやはり魔族。
思考能力は普通とは違うのだ。
「さて、どうする、クソガキ? ここでギブアップも出来るぞ? 《
魅惑的な誘いだった。
何故なら七歳のボクが、あの《
今なら魔界のことを忘れて、地上で静かに暮らすことも出来るのだ。
「――――いえ! やります、ボクは! たとえ魂が砕け散ることになっても、必ず、力を会得します! アイツ等に必ず復讐するために! 母さんのためにも!」
だがボクは逃げることを拒否。
《
「ほう……その顔構えは? まぁ、それじゃ、頑張りな。オレ様は暇だから、ここで見ておいてやる」
ダンテ叔父さんは腕組をして、鼻を鳴らしてくる。
まるで子どもの余興を見るように、期待してない眼差しだ。
(やってやる! やってやる! やってやる!)
だがダンテ叔父さんの視線は、もはや気にならない。
ボクは震える足を引きずりながら、《
凄まじい恐怖で、心臓が破裂してしまいそうだ。
「絶対に恐怖しない! 恐怖しない! 逃げない! 母さんのために! 復讐のために!」
今の自分を動かしているのは、復讐に対する想いだけ。
無残にも惨殺された母の姿を、脳裏に思い浮かべる。
すると不思議な力が、全身に湧いてくる。
まるで自分の身体ではないような、強い力だ。
ほう? と、後ろからダンテさんの声が聞こえてくる。
直後、《
さっきは反応すら出来なかった攻撃だ。
「はっ!」
だが今回は反応して、回避が出来た。
自分の身体が別人のように、俊敏になったのだ。
明らかに普通の七歳の子どもには、出来ない芸当だった。
ボクの身体に何が起きたのだろう?
「これは……もしかして」
先ほどダンテさんは言っていた。
……『《
「なるほど、そういうことなのか!」
つまり《
大切なのは精神的な部分。
強い感情を持ち続け、強大な復讐のエネルギーで決して諦めない。
常に強くなるためのイメージを、全身に持ち続けていく。
そうすれば子供でも強くなる可能性が、この《
「よし、これならいける!」
――――だが現実は甘くなかった。
ガブリっ!
先ほどの以上の《
またもや瞬殺。
ボクは一瞬で食い殺されてしまった。
「ウァアアア⁉ 身体が痛いよぉお! 熱くて、痛いよぉお! 誰か、助けてぇええ!」
またもや真っ暗な《
強力な酸の海によって、ボクの全身は消化されていく。
辛うじて生きているのが災いして、地獄のような苦しみ。
むしろひと思い出に楽にして欲しいほどの、苦しみと激痛だ。
――――そし意識が途絶える。またボクは死んでしまったのだ。
直後、肉体は復活。
「くっ……またか」
気が付くと、またボクは元の場所に立っていた。
隣には楽しそうな表情の魔族公爵ダンテがいる。
「よう、おかえり。次は鬼門の三回目だぞ? どうする、クソガキ?」
強靭な肉体と精神力を持つ魔族ですら、多く者が三回目で魂が消滅してしまう。
つまり引き返すなら今しかないのだ。
「――――いえ、いきます!」
だがボクは即座に答える。
正直なところ怖い。
先ほどの数倍もの恐怖で、全身が四散しそうだ。
だが諦める訳にはいかなかった。
無念に死を遂げ母のために。
自分の復讐のために何度でも、この恐怖に打ち勝つのだ。
「はん! クソガキの割には、往生際が悪いな! ちょうど暇だし、お前が消滅する時まで、観戦しておいてやるよ!」
集中して進むボクに、もはやダンテさんの声は聞こえていない。
零剣を構えて、巨大な《
◇
◇
それからは地獄のような挑戦だった。
強大な《
数回の回避は出来ても、その後は必ず瞬殺されてしまう。
でも諦めない。
瞬殺されたら、前回の前回の反省をしながら、肉体の復活を待つ。
恐怖は慣れるどころか、段々と倍増していく。
最悪の精神状態だった。
それ対しては、復讐の炎を燃やして対抗。
むしろ途中からは、恐怖すらも復讐心に変えて、自分の魂の強さにしていった。
挑戦と失敗。
微かな成功と、僅かな成長。
一度も無駄にすることなく、何十回、何百回と、永劫の時間を繰り返し、ひたすら試練に挑んでいった。
◇
――――そして“その時”が、ついにきた。
「いくぞ、《
「クゥウウウウウウウ⁉ そんな、馬鹿な⁉ 信じられないほどの成長! そして強靭な魔力! 嫉妬してしまうわぁあああ!」
ズシャァアアアアアアアアア!
ボクの右手の零剣が、巨大な《
「ふう……一万回目か……予想以上に、かかってしまったな」
こうして一万回の挑戦……地獄のような“三年の年月”をかけて、ボクは
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