第32話 仲間? 友達?

 その2種類の風が巻き起こると、次から次へとミリーシャ王国の兵達を遥か空へと叩き飛ばしてしまう、彼らは鉱山に吹き飛ばされて、次から次へと戦闘不能になっていく、


 1つの風の塊ともう1つの風の塊は、

 どちらが早く沢山倒す事が出来るのかを競い合っていた。


 俺様はそれがとてつもなく楽しくて、

 兵士をなぎ倒す、

 武器を使う事はせず、ただ吹き飛ばすタックルを浴びせるのみ、

 圧倒的なステータスだからこそ可能な裏技のようなもの、


 それは勇者山中も同じ事であり、

 彼の場合はタックルしつつ、見た事のない組手のような技で兵士を弾き飛ばしている。


 ぐるんぐるんと回転しながら飛んで行く兵士に、 

 僕は苦笑を洩らす。


 あらかた兵士達が再起不能になっている所を見て、

 僕と山中は叫ぶのだ。


「221」

「221」


 2人が叫んだ数字は、2人が倒した兵士の人数であった。

 心の底から唖然とする。

 互角の相手が登場したのだ。

  

 その時沢山の兵士達が気絶して道を阻まれている所にミリーシャ王国の大将軍であられるセバスデンがやって着た。


「勇者山中様、これはどういう事ですかな? これは国王様の裏切りになるのではないでしょうか? わしとしては、ここで剣を収められる事を願いたいのです」


「お前達はあの子をあの子をどこにやった」

「なぁにあの子は特別な力を持っております、ゆえ実験をしてその力を研究しているのです」

「てめぇええ、あの子は超能力を使えるだけじゃないか」


「超能力?」


 俺様は初めてのキーワードに興味が湧いてくる。


「つまり異世界召喚されたのが1人だけじゃなくて山中ともう1人いたって訳だな」


「そうです。彼女は僕の同級生で幼馴染です。いつも超能力で差別されてきました。それがここに召喚されると、僕は勇者として待遇されました。しかし彼女は咄嗟に超能力を使い、この国の者達はそれが珍しかったのでしょう、彼女を奴隷にしました。僕は彼女を救い出す為に勝機を伺っていました。そしてそれが」


「今日だという事だな」


「その通りです。もう勝負はやめましょう、僕はあなたの仲間になります。条件は玲子を助ける事です」

「任せろ、勇者山中と超能力玲子を仲間にしてやるぜ、おいそこの糞爺、お仕置きの時間だ」


「ふ、わしとて戦場で生きた者そう簡単には倒されぬわ」


 セバスデンは大将軍らしく鞘からまるでお宝のようなロングソードを抜き取ると、

 構える。その構えははっきり言うと良いのか悪いのか分からない、

 僕は普通に剣を使えるだけなので、流派とかは分からない。


 普通に一歩一歩と前に突き進む。


「な、なに、この構えでも無意味だと」


「ではこの構え」


「ない、無意味だと、お、お前は何者だ、では必殺の構え」


「な、何、てか至近距離で」


「この伝説の構えで」


「るせぇええええええ」


 僕は怒鳴って、大将軍の顎から上に向けて

 滑らかな軌道に乗って、

 顎にヒットした。そのまま遥か天井に向かって吹き飛ぶ、

 そのまま鉱山の方へと落下して行く、


 その場の兵士はノックダウンされ、


 そして七つの大罪達は片付けが終わったのか、次から次へとこっちにくる。


 ネメだけが建物に入って食べ物を漁っているとの事。


「あの暴食は何をやっているんだ」


 ゴーナ姉さんがこっちに来ると、その後ろには沢山の奴隷達がいた。

 彼らはびくびくしている。


 主人と奴隷の間には時に信頼関係が生まれる時がある。

 食べ物を毎回与えられる事により衣食住の心配がなくなると、

 奴隷達は主人を信用し、主人の危機に立ち上がる時もあるのだと、

 小説で読んだ事がある。


 だが目の前の奴隷達は誰が主人か知らないのだろう、

 信頼関係を生むはずの兵士達でさえ彼らには厳しかったのだから、

 信頼関係は結べるはずがない、


 そして黒幕がミリーシャ国王である事がばれれば、とんでもない事になるだろう。


 その時、冥王ブランディ―と玄武タートルマウンテンがやって着た。


 2人は神妙な顔をしながら近づいてくると、


「勇者とリュウケン殿は来てください、女性は来ないほうがいいでしょう」


「七つの大罪のメンバーは奴隷達を守っていてくれ」


【了解しました】


 7人の美少女達が元気強く答えてくれると、

 ほっと胸を撫で下ろした。


 俺様と勇者と冥王と玄武が向かった先、

 それは巨大な鉱山がそびえている麓の小屋だった。

 小屋に入ると、そこには倒れている兵士がいる。

 どうやら見張で、玄武が倒したとの事。


「問題は下の部屋なのじゃ、言葉では説明出来んが」

「すごくひどい事なのは確かだ」


 玄武の後に冥王が告げると、

 地下に降りて、その小部屋の扉を開くと、

 そこには1人の少女、見た目は幼女と言っていいかもしれない。


「彼女は同級生で、生まれつき背が低い、背が伸びる度に自慢していた」


 勇者は涙を必至で堪えている。

 泣くものかと決めているようだった。


 少女は巨大な板に、右手と左手に棒を付き刺され、

 両足にも串刺しされている。


「イエスキリストの貼り付けの真似なのか?」


「恐らく違うと思う、そのイエスキリストなるものはこの世界には存在しない」


「そんなの分かってる!」


 勇者山中が怒鳴り声をあげる、

 それに反応して、幼女のような少女が目を覚ます。


「う、ううん、おおおおおお、正じゃん」


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