第6話 傲慢のファルシグリフォンと嫉妬のマーメイタン

 暴食のネメのステータスは今見る必要がないくらい、サリィーのステータス表でだいたい理解している。

 今やらねばならない事はこの地下ダンジョンにいるとされる7人の7つの大罪達美少女達をテイムするという事だ。


 1つ間違ってはならない事に僕は気づいていた。

 彼らは7つの大罪であり、そしてモンスターであり、そして美少女だが人間ではないという事だ。

 

 さらに彼女達はゴミダンジョンのボスモンスターとして降臨している訳で、

 そのボスモンスターと会話するだけでも恐らくすごい事なのだろう、

 だって今までボスモンスターと会話して、さらに仲間にする馬鹿は聞いた事がない。


 村にいた頃、伝説の冒険者と呼ばれる村長がいたのだが、

 彼の説明では、そういう事は聞いた事がない、


 という事は今僕はとんでもない事をしている。


 もう考えるのがめんどくさから、俺様モードになって、

 片っ端からモンスターを殺しまくった。

 その数千体を超えているだろうと思われるし、


 相手のレベルが1000に到達し始めてきた事に、

 僕は恐ろしさを感じる。

 今の僕のレベルの上がり具合が気になるのだが、

 この階層になってくると休む暇がない、


 次から次へと現れるモンスター達、

 憤怒のサリィーと暴食のネメが一緒に暴れてくれる中、

 2人が暴れるとモンスター達が逃げて行ってしまうので、


 僕というか俺様モードになって倒しまくった。

 その結果地下150階層にまで到達していた。


 ここまで7つの大罪の美少女達は現れなかった。


 しかし次の階層、つまり151階層の扉を開くとボスモンスターが2体いた。


 憤怒と暴食が反応した。


「あれは傲慢のファルシグリフォンと嫉妬のマーメイタンよ」

「しかもなんか普通じゃないわね」


 ファルシグリフォンとは、巨大なグリフォンそのものでありながら、翼が4枚存在している。

 僕のモンスター図鑑の記憶ではグリフォンとはワシの頭をしており獅子の体に、翼がある感じだし、翼だって右と左で2枚までだったはずだ。

 しかしそいつは4枚の羽を持っている家のようなグリフォンだったのだ。


 そして何より今までの憤怒のサリィーと暴食のネメには無かった事、

 黒いオーラが体を覆っているという事だ。

 傲慢のファルシグリフォンは口から涎を垂らしながら、

 苦しんでいるようにすら見える。


 こちらを必至で見つめている。


「なんか普通じゃないからあたしも手助けするよ」

「僕も何かやりたい」


「まて、ここは俺様に任せろ」


 俺様になって発言すると、

 2人は静かになって後ろに引いて行った。


 隣にいる奴も把握するべしと観察する事に。

 マーメイタンは見るからにマーメイドと呼ばれるモンスターだろう、 

 しまいには背中には黒い尾ひれが沢山付いている。

 だがここには水がない、どうやって戦うのか、非常に俺様的には興味深い話なのだ。


 そしてそいつからも全身を覆う黒い煙またはオーラみたいな物が噴出している。

 俺様は一歩また一歩と歩く。


 水竜神の剣を使うまでもない、


 武神のメリケンサックも使う必要がない、


 ここで使うべきなのは、馬神の弓であるのだから。


 背中に担いでいる弓を引っ張り出し、

 堂々と構える。その仕草を見て敵意ありと認識したのか、傲慢のファルシグリフォンと嫉妬のマーメイタンが動き出す。


 驚いた事は、マーメイタンが石材の地面の中を泳ぎ出し、

 天井から現れたり、真横から現れたり、

 彼女は鋭く長い鉾を持っていた。

 あんな武器に突き刺されば死は免れない。


 俺様は自分にしか出来ない事を考え続けた。

 2体のボスモンスターと相対しているし、

 鑑定眼鏡を使う暇がなく、それでもレベルは8000を超えっているのは確かだし、

 一撃でも食らえばシャレにならない致命傷になるだろう。


 弓矢を構えながら、

 ファルシグリフォンが広間の中を飛翔すると、

 まるで鷲のように空から地上の獲物を狙うそれとなる。


 普通ならここでファルシグリフォンを相手にして、マーメイタンの行動を見る暇がなくなり、

 マーメイタンの不意打ちで俺様は死ぬのだろう。


 だが自分にしか出来ない事を考えた俺様は、

 俺様と僕の思考パターンを同時に作動させる事に成功していた。


 マーメイタンを分析している僕がいる。

 僕はマーメイタンをよーく観察し、次の行動パターンを読む。


 ファルシグリフォンに牽制している俺様がいる。

 俺様はファルシグリフォンがこちらを獲物のように捕まえようとしている。

 天井は結構な高さまであり、ファルシグリフォンが天井に激突する事はない。



 僕がマーメイタンの気配に気付く、俺様がそれを避ける。


 俺様はそこに弓矢を放とうとする。しかし僕がファルシグリフォンの牙に気付く、


 俺様がそれを避けて、弓矢で翼を狙う、

 4枚あるうちの2枚の翼が致命傷になり、

 空を飛べなくなり地面に激突。


 僕がマーメイタンの鉾に気付く、

 俺様がマーメイタンの鉾を馬神の弓で弾く、

 そのまま無限に召喚出来る矢を構えて解き放つ。


 僕がファルシグリフォンの殺気に気付き、

 奴がこちらに突撃してくる。


 それを俺様が弓を背中に背負うと、武神のメリケンサックを構え、


 体の節々まで動かして、

 流れる動作で、拳を突き出す。

 グリフォンの顔面にぶち当たる寸前で、

 僕は俺様を止めていた。


「なにより女の子の顔だろ?」


 僕が俺様に問いかけた。セリフだ。

 どうやら俺様が言った事により、

 ファルシグリフォンから翼を生やした美しい女性の美少女がいた。

 隣にはマーメイタンが仲間の危機だと思ったのか、

 まっすぐに突撃してくる。


 それに僕は弓矢を構えるのだが、

 俺様が矢を放つ、

 僕が力のセーブをかけ、


 マーメイタンが弾かれて動かなくなる。


 鉾がまっすぐに飛んでくる。

 最後の攻撃という訳だろう、

 俺様はそれを蹴り上げる事により、

 避ける事に成功する。

 

 弓矢を背中に担ぎ、

 ゆっくりとゆっくりとマーメイタンの元へと向かう。

 マーメイドのモンスターであるマーメイタンは、

 こちらを死んだ魚のように見ている。

 その姿だけでも化け物人魚にしか見えず、 

 涙を流し始めている事に俺様は気づく、

 

 彼女は本当に泣いているのだ。

 しかし闇色のオーラは消える事なく、

 嫉妬のマーメイタンは、こちらを睨み続け、そこには化け物人魚ではなく、魚人の美女がこちらを見ていたのだ。



 魚人の美女は走り出すと、

 白い翼を生やしている美少女と一緒になって、

 こっちを性犯罪者のような目で見ている。


「僕は敵じゃないんだけどなぁ」


 こういう事は俺様モードより僕モードの方がいいのだと、

 この時の俺様と僕は感づいていた。


 そして後ろにはいつの間にか憤怒のサリィーと暴食のネメがいた。

 そもそもサリィーが人間族なら、ネメは恐らくドワーフ族だろう、 

 あまりにも幼い彼女を見ておかしいとは思っていたのだが。


「久しぶり傲慢のルシュフ、そして嫉妬のレイディーちゃん」


「ふん、あなたは短気のサリィーと暴飲暴食のネメじゃない」


「まったくルシュフはいつだって傲慢だねぇい」

「うるさいわよネメ、豚ネメ」


「食べちゃうよ」


「やだー食べないで、確かに魚だけど」

「レイディーちゃんは魚人ってだけでしょ、ネメがドワーフのようにルシュフが天空族のようにね」


「もう、それはわかったけど、そこの殿方は誰なの? 強すぎるわよ」

「僕はリュウケンだよ、よろしくね、お嬢様」


 すると彼女は顔を真っ赤にしながらその手を取って、立ちあがる。


「お、お嬢様ですって、なんでそう思うのかしら?」

「えっと、あなたの言葉遣いに気品を感じたから?」

「そうよ、それでこそわたくしの愛人になる資格があるのですわ」


「だーれが愛人にするですって、リュウケンは下僕なんだから」

「非常食なんだから」


「何気にとんでもない発言が混ざってるぞ」


 僕がそう呟くと。


「では可愛い魚ちゃんのあなたはなんとおよびしたほうがいいの?」

「か、かかかかっかかかかかかか」


 レイディーちゃんは真っ赤に顔を染めながら、

 ぎこぎこダンスのように、体がかくかくしていた。

 どうやらこの子はパニックになりやすいみたいだ。

 僕はそれを認識しつつも。


「ではレイディーちゃんよろしくね」


「はい、王子さま」

「僕は王子ではなくてリュウケンなんだけど」


「王子様は王子様です」


「はは、それで君たちはどうしたんだい」


 すると2人はその場で小さくなってしまった。

 それから2人は色々と説明してくれた。

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