第437話 神災竜とエリカの共同作業と超全力シリーズ
暴れる蓮見。
その先には幽霊の大群。
だけど屍になるまでに時間はかからない。
「た~ら~ら~ら~らららた~ら~ら~スキル『猛毒の捌き』!」
空から降ってくる銃弾。
仮にそれをなんとかしても今度は追尾性能を宿した猛毒の矢。
空に一つ目の魔法陣ができたかと思いきや、それは瞬く間に数を増やしていく。
「た~ら~ら~ら~らららた~ら~ら~スキル『猛毒の捌き』! ま~だ~ま~だ~い~く~ぜ~数のぼうりょーくぅ~スキル『猛毒の捌き』! お~れ~こ~そ~かっ~こ~い~い~く~れ~な~い~く~んスキル『猛毒の捌き』!ご~き~た~い~に~こ~た~え~て~スキル『猛毒の捌き』!」
幽霊なすすべなくして死亡。
ポイントが蓮見に還元されていく。
凄い勢いでランキング上位を狙うべくポイントをあら稼ぎする蓮見を援護するように、
「こうなったらやけくそだー! 全員の力を合わせて今こそアイツを倒すぞ!」
と、勇敢な者の元気な声が空中浮遊する蓮見の耳へと聞こえてきた。
そして多くのプレイヤーたちが逃げるのを止めた。
武器を構え、飛んでくる銃弾を力を合わせて阻止。
障壁は何重にも張られ一回のKillヒットでは攻略不可能。
「いいか! 俺達は選ばれし者たちだ! ここで逃げていては俺達の未来はない! 朱音や里美を見習いあの悪魔を俺達が止めるんだ! 行くぞ!」
「「「「おぉーーーー!!!!」」」」
反撃の狼煙をあげたプレイヤーたち。
飛んでくる毒の矢を躱し空へと飛び立つ。
そんな光景を目にしてエリカが叫ぶ。
「私の邪魔をしないでよ! 私は紅君と一緒にいたいの! なにより紅君の楽しそうな笑顔が好き! だから皆争そうとしないで! だからお願い、もう止めて! こんな無駄な争いを! だから紅君全弾アイツらに向けてフルファイアーよ!」
言っていることが無茶苦茶なエリカの瞳には一滴の涙。
それは争いを本当に止めて欲しいと思っているから出ている涙ではない。
純粋に笑いを耐えている少女の演技。
なによりこの状況を色々な意味で蓮見以上に楽しんでいると思われるエリカはやはり神災者のパトロン以外の何者でもない。
エリカの命令を受けた蓮見が狙いを幽霊から近づいてくるプレイヤーたちへと向ける。
「はい! 任せてください! 武装エネルギー充填完了。フルファイアー!」
銃口が向けられても臆することなく立ち向かってくるプレイヤーたち。
それを勇敢と呼ぶ者もいれば無謀と呼ぶ者もいるだろう。
「「「援護は任せてください!」」」
突撃するプレイヤーの援護を始めた後衛職。
「一つの銃弾は近づいてくる者達への制裁、一つの矢は遠くから危害を加えようとする者達への制裁、行くぜ! 俺様全力シリーズ、正義の味方カオスワールド!」
レッド蓮見がそう唱えると四方八方から蓮見の攻撃を援護するように飛んでくる猛毒の矢。その数百を超える。分身一体につき、一回の猛毒の矢の援護。
「悪いが俺にも味方はいる! 援護はお前達だけの専売特許じゃねぇ!」
トッププレイヤーたちと交戦中の神災戦隊(分身)による援護は生半可な防御では耐えられない。なぜならその全てが一撃死が可能な脅威があるからだ。
この瞬間、後衛職に余裕がなくなる。
前衛職の援護を止め、自分の身を護る事に必死になる後衛職。
だけどそれではもう遅い。
障壁はガラスが割れるような音を鳴らして次々と壊れて行く。
前衛職の実力者は蓮見の攻撃の手数(銃弾、レーザー光線、ビーム)に対して落ち着いて対処してくるがそうじゃない者達は援護がなくなったことで一瞬動きが止まった。それが最後。慌てて攻撃回避を再開するも雨のように降ってくる攻撃にHPゲージが徐々に減らされていく。
「【異次元の神災者】覚悟!」
「お命頂戴する!」
蓮見の攻撃の間隙を狙い目の前、そして背後にやってきた二人のプレイヤーが剣先を蓮見へと向ける。
「ふふっ、忘れてない? この私がここにいることをね!」
そう言ってエリカニコッと微笑み蓮見に告げる。
「見せてあげなさい。私達が作り上げる新たな世界を!」
「任せてください。行きます! 俺様超全力シリーズインフェルノワールド!」
エリカが氷系統のスキルを使った。
それは美紀、七瀬、瑠香に頼んでスキル習得を手伝ってもらった氷系統のスキルでもかなりレアな物。
その効果は物体の運動エネルギーを減速させる広範囲スキル。
蓮見を中心にして円状に氷の世界が出来る。
正確にはエリカを中心にしてだが、周りからは蓮見の存在が大きすぎるためにそう見える。青色の魔法陣が空高い所に出現した。
エリカのMPゲージを全て消費したソレは七瀬の必殺スキルの一つとなっている【爆焔:炎帝の業火】と対照的な位置に存在している。
蓮見の遠距離攻撃まで対象とした一撃に多くのプレイヤーたちが一時的に九死に一生を得る。
「危なっかった……」
「攻撃が急に遅くなってなかったら回避が……」
だが、そんな平和を嘲笑うかのように。
そして今も近づいてくる二人のプレイヤーの努力と勇気を踏みにじるように間髪入れずに蓮見を中心に蓮見が呟く。
「えへへ。ミズナさんスキル使ってくれてありがとうございます。遠目でも見てしまえば俺の勝ちなんですよ。スキル「爆焔:炎帝の業火』!」
「援護は任せて! スキル『竜巻』!」
今度は蓮見が地上から真上。
つまりは凍った地面を貫き自分へと飛んでくるよう魔法陣を配置し紅蓮に燃える炎を発射する。
その炎を助けるようにエリカのスキルが発動し神災竜となった蓮見を燃やし尽くすようにして天高く火柱が伸びる。それを意図的に荒々しい物に変えるエリカの手には見なれた瓶がある。
これには近づいてきた二人のプレイヤーも手を止める。
このまま突撃すれば強化された【爆焔:炎帝の業火】を諸に受けるようなものだからだ。
この瞬間。
蓮見とエリカ二人の世界が出来上がる。
二人の中心部付近では灼熱地獄。逆にその外側では極寒の世界。
この二つの事象が重なり合う時、歴史は新たな一歩を踏み出す。
気圧差を利用して生まれたソレは巨大な竜巻。
極寒と灼熱地獄。
その両方を作り上げた二人のプレイヤーは巨大な竜巻を身にまとうして全てのプレイヤーたちを見下ろす。
不運にも近くにいた者や幽霊、そして館の一部は根こそぎ巨大な竜巻によって巻き上げられ、空での乱気流により動きの制御が効かなくなったものから地面に向かってひもなしスカイダイビングをしては天へと帰る。仮に生き残っても蓮見の猛毒の矢が追尾し、それをなんとかしても竜巻の中から飛んでくる銃弾が生き残ることを許さない。
俺様超全力シリーズインフェルノワールド。
それは恐れをなして逃げれば極寒地獄、立ち向かえば灼熱地獄、更に武器を向ければ暴風と化した嵐に身を喰われる、とでも比喩すればいいのだろうか。
蓮見の手に入れたソレはあまりにも非情で強力。
故に今の一撃で戦意喪失六十八名、戦死者二十一名、闘志燃やす者数名となってしまった。
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