第435話 四天王神災竜と支配者
この瞬間。
多くのプレイヤーたちが、運営陣が、観戦者が――。
望んだもしくは恐れていた光景が目の前で起きた。
赤く光る満月の光の下。
ついに神災竜が二体姿を見せる。
不気味な夜空に光る沢山の星と月明かりが照らすソレは微笑む。
その二体の化物を使役するレッド蓮見はソレの頭上で驚き見上げる者たちを見下ろす。
まるで人がゴミ……小さい、と言わんばかりに。
「あらあら、今回もまた派手な演出ね……」
「毎回毎回規模が大きいな、ったく」
「もう、アイツがラスボスじゃん、今回も……」
と地上から聞こえてくる声。
「やっぱりダーリンが最大の敵になっちゃったか」
「前々からもうそろそろかもと思ってはいたけど……」
朱音が驚き、続いて美紀までもが驚く。
「うひょー! 紅見つけたー♪」
そこに綾香の声も加わる。
つまるところトッププレイヤー再集結。
蓮見は視界先の集まってくるプレイヤーたちとそれに連れられて集まってくる幽霊達に視線を向ける。
「毎回思うがこれは勝てないよな……流石の俺様でも」
目の前の光景から微笑みながらも真面目な独り言を珍しく呟く。
今も何事かと思ってか、沢山のプレイヤーが大きな穴が空いた元書物庫付近に騒ぎを聞きつけては集まってくる。
何もしらない人が見れば神災竜VSプレイヤーの総力戦と勘違いしてしまいそうな状況ではあるが、蓮見はブルー蓮見の頭上から動こうとはしない。
冷静に周囲の状況を観察している。
「スキル『ミラーワールド』」
蓮見がエリカの勧めでイベント前にこそっりと取っておいたスキルを発動。
ミラーワールド――HP5割を消費後スキル使用回数を無視し一度だけ自身のスキルもしくは相手のスキルをコピーし使用する事ができる。一日一回という限度はあれど今の蓮見に体力温存――火力温存という選択肢はない。あるのは全力の二文字のみ。すぐHPポーションを飲み全回復。
数秒後。
赤い満月に照らされできた影が倍になる。
それはまさに朱音、美紀、綾香ほどの実力があっても言葉を一瞬失ってしまう光景。
神災竜が全部で四体。
まるで神災竜で構成された四天王。
黒い羽が八枚宙を舞う。
巨大な身体は存在するだけで多くのプレイヤーたちを畏怖させる。
それはプレイヤーたちだけでなく幽霊にも同じことが言えた。
「これが俺の解だ。里美やお母さんの期待に俺なんかが答えられるかはわからない。だけど俺は俺なりに全力でその期待に応えようと頑張った。それがコレ。正直二人からしたら物足りないだろうけど今の俺が用意出来る最高の舞台であることは間違いない」
いやいや、期待外れなわけ……ない!
と、つい叫びたくなる光景を相変わらず意図も簡単に作り上げた蓮見に美紀と朱音がクスクス笑い始める。そして綾香も。ゲームを始めた頃から期待していた。もしくは見つけた時から期待していた。まさかここまで大物になろうとは。
「ってことでお前達、見せてやれ! 最初から最後まで死に物狂いの最恐の俺様を!」
そう蓮見が叫んだ直後。
多くのプレイヤーたちに緊張が走る。
「いいじゃん。里美ちゃんセンサーをかいくぐって里美ちゃんを倒す? いい度胸じゃん。なら本気で行くよ、く・れ・な・い♡」
目を閉じ開いただけ。
それだけでも目つきがかわり雰囲気が変わった。
まるでたった一人の存在が周囲の空気をピリピリしたものへと変える。
「これは認めるしかないかな……でもね、私に喧嘩を売るのは百年早いわよダーリン♪」
こちらはこちらで殺意丸出しで笑顔を見せる朱音。
「ずっと忘れていた。落ち着いてやれば勝てるはずなのに勝てないかもと思うこの感覚。力が拮抗していると思える強敵の存在。ってことで最後の試練よ。私のライバルとして相応しいか見せて頂戴ダーリン♪ いや【異次元の神災者】!」
足腰に力を入れて飛んだ朱音。
その先には勢いよく地面に向かって突撃する四体の神災竜。
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