第423話 開催のGONG『恐怖のお化け屋敷を攻略せよ』
イベント開始まで後五分。
イベント会場となる特別ステージに集まった約百五十人の選ばれしプレイヤー。
その者達は前回のイベント(詳しくはSSストーリー)にて『神災の巫女』(小百合)の力を継し者と対峙し力と知性を証明せし者達でもあった。
だけどそんな者達をもってしても理解しがたい現象が起きていた。
「……ぁぁぁ……ぅぅぅ……」
今では【異次元の神災者】とまで呼ばれる者がぶるぶると身体を震わせていることだ。別にステージが極寒というわけではない。むしろ現実と変わらず夏の夜が再現されているのか涼しい風が吹いているぐらいなのだが、蓮見は身体を小刻みに震わせていた。
「あ、あ、あ、あ……あぁぁぁぁぁああああ」
そんな蓮見になんて声をかけていいかわからない美紀、七瀬、瑠香、朱音は静かに近くで見守っている。エリカは一人何かを考えているのかさっきから黙っている。
「ねぇ……紅ヤバくない?」
「里美もやっぱりそう思う?」
「ってことはお姉ちゃんも?」
「う、うん……」
「ダーリンって寒がりなの?」
「違う。ってどう見ても顔色がヤバイ時点でお母さん少し考えて紅はお化けが恐いという発想は出てこないの?」
「でないわね。だってミズナ程私ダーリンについて詳しくないから」
「あのね……ならそのダーリンって呼び方前々から気になってたけど止めてくれない?」
「それは無理ね♪」
「「「…………」」」
(((こいつ……)))
そんな感じで今の蓮見に手を差し伸べる者は誰もいなかった。
当然周囲の者達も予期せぬ行動を見せる蓮見に戸惑うもののその多くの者たちは既に警戒態勢に入っていた。
「油断するなよ」
「えぇ、あれは演技の可能性が高い」
「そうだ。俺達は何度アイツにやられてきたことか、絶対に忘れるなよ」
どう転んでも蓮見がお化け嫌いという結論には至らないらしい。
「綾香アレをどう見る?」
「うーん、演技じゃない?」
「だろうな」
と、女二人が横目で見ていた。
そこに。
「お待たせしましたー! もう間もなくイベント説明ならびにイベント開始となりますのでもうしばらくお待ちくださいー!」
と元気な声が会場に設置された巨大なスピーカーから聞こえてきた。
各々が気合いを入れる中、蓮見は一人心の中で呟く。
(大丈夫、大丈夫、大丈夫、イベントが終わったら混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴、混浴)
一人プラス思考に持っていくのに必死だった。
なんならいますぐにでも逃げ出したい。
だけどそれではダメなのだ。
蓮見は数時間前、第二ラウンド、第三ラウンド、第四ラウンドと諦めず美紀達に現実世界で女の子達の体力がなくなるまで勝負を挑み続けた結果体力勝ちをしてなんとかその権利を手に入れたのだった。だが喜んだのも束の間で、一時間もすれば今の状況となっていた。そして女の子達から混浴の代わりに出された一つ目の条件は今日のイベントを途中リタイヤしない。二つ目は必ず楽しむこと。三つ目はイベント終わりまでに一度は俺様全力シリーズを使い、私達を楽しませること。四つ目は私達が敵になっても恨みっこなしなこと。そして五つ目は――。
「なにが私達の誰か一人でもいいから倒してね♪ だよ……ふざんけんな! 全員俺をやりに来てるじゃねぇか……って勝てるか、バカ! 今まで全員合わせて何百回負かさせて何回俺が勝ってるか覚えてるのか……勝率ゼロパーセントなめんなよ……ったく……あぁぁぁぁぁああああ---ああぁあぁぁぁぁぁぁぁぅぅぅぅぅぅあーもお、今すぐ逃げたい……」
それが蓮見に対する罰ゲーム。五人で一つの罰ゲーム。
普段ならなんとも思わない内容ではあるが、今すぐイベントから逃げたい、リタイヤしたい、目を背けたい、ログアウトしたい、とネガティブ状態の蓮見には耐え難い罰ゲームとなったいた。だけど目の前に混浴という飴をちらつかせる小悪魔に蓮見は従うしかなかった。だって一緒にお風呂に入りたいから……今年こそはリア充爆発しろとか思わなくていい夏休みをこの手にしたいから……。
「お待たせしました。では今からイベントについて簡単に説明いたします。内容は先日皆様にお伝えした通り。イベント期間は今日から三日間。ただしイベント開催期間は三日間とも十九時から二十一時までの二時間のみ。初日はダンジョン探索のみ、プレイヤーKill禁止、二日目はダンジョン探索&幽霊退治、プレイヤーKill禁止、三日目はダンジョン探索&幽霊退治&プレイヤーKill有りとなっております。幽霊にはそれぞれ個体ポイントがありますので、そのポイント数が倒したプレイヤーのランキングに反映されます。また三日目のみ可能となるプレイヤーKillでは倒したプレイヤーに倒されたプレイヤーが持つ三%のポイントが譲渡される仕組みとなっております。一発逆転を狙うには十分! そしてここからが注目。イベント終了時に上位三位までのプレイヤーには限定アイテム『神殺しの礼装』をプレゼントいたします! これはあらゆる災を払うとされる伝説の……え? 能力(効果)を先に教えろ? それは残念。手にしてご自身の目で確認してください! ってことで時間もやってきましたので、皆様を『恐怖のお化け屋敷』へとご案内いたします! それと毎日この時間にここにいないとイベント参加できないので、それだけはお忘れな――あっ時間が……なら皆様いってらっしゃいー!」
直後――愉快な声を聞いた全員の身体が眩しい光へと包まれた。
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