第410話 ラブコールでの目覚めは修羅道へと続くかもしれない
――――異次元の神災伝説。
そこには、今までの蓮見の行動が沢山書かれている。
――神の目を持つ弓兵。
ある日、誰かが言った。
いつ、どこで、誰が、言ったかはわからない。
だけど、奇跡と呼ばれる現象を起こす人間はいる。
それが今は【異次元の神災者】と呼ばれる者。
彼は止まらなかった。
数多のプレイヤーが、モンスターが、外部の者が、それを止めようとした。
だけど、誰一人……【異次元の神災者】を止めるには至らなかった。
なぜなら、無名の弓兵は己の欲に誰よりも素直だったから。
欲は弓兵に力を与え気付けば天災へと姿を変えさせた。
だけどそれこそが悪夢の本当の始まりだと知ったのは今日。
それは更なる力をつけ、神災へと昇華し、逆らう者達を葬り始めた。
だけどそれを恐れた者達はついに反撃の狼煙をあげた。
そして神災を人の手で抑え込む事で脅威を取り除こうとした。
あるときは、集団戦――神災発動により失敗。
あるときは、一騎討ち――神災発動により失敗。
あるときは、トッププレイヤー達が手を取り合う――神災発動により失敗。
あるときは、運営が作った小百合シリーズ――神災発動により失敗。
脅威と言う名の成長を止めようとしたが全て失敗に終わった。
つまるところ、奇跡とは何なのだろうか?
あるサイトではこう定義されている。
人間の力や自然法則を超え、神など超自然のものとされるできごと。
結局のところ身も蓋もなく言うならば、それが本当に奇跡なのかを確認する事は誰にもできない。もっと言うなら、人によっては奇跡でも他の人から見れば奇跡でも何でもないと言う事はよくある話なのかもしれない。
つまり神災とはある意味奇跡であり、本来人の手では意図的に起こそうとすら思えない事象のことである。
「そうなのよね……でもこの子リアルじゃなにもできない奥手っぽいのよね~。ゲームの中だけ性格が変わるタイプなのかな~? う~ん、私はどっちも積極的な子の方がいいんだけど……」
と呟くは朱音。
ここだけの話旦那とは少し前に離婚し今は娘を持つ独身女性だと言うことは実の娘達にも黙っている。
「あぁ~、わからないな~」
朱音は一旦サイトを閉じてとりあえず蓮見へと電話をかけてみる。
■■■
夢の中の蓮見とそれを静かに見守る美紀。
そんな二人だけの空間に音が鳴り響き始めた。
音源は蓮見のスマートフォン。
寝ている蓮見の隣にスマートフォンがあるため、画面に映った名前が美紀の目に入る。
「えっと……ん?」
――お母さん
という名前に一瞬疑問を覚える。
なぜなら蓮見のお母さんの携帯番号は090から始まるのだが今着信がある番号は080から始まっている。よく夜ご飯のことで蓮見のお母さんと相談する美紀はその電話番号を正しく頭の中に入れている。なので、勘違いと言うことは絶対にあり得ない。
もっと言えば何処かで見覚えのある番号な気がする。と頭の中で何かがモヤモヤし始めた。
「えっと……この番号は……えっとー、えーっとー、たしか……あっ!」
思い出した。
七瀬と瑠香のお母さん――朱音の番号だと。
そうわかった瞬間――ようやく蓮見が長い眠りから目覚め、瞼を少し上げてもぞもぞと動き手探りで枕元にあるスマートフォンを手に取り、相手が誰かも確認せずにめんどくさ……眠そうな声で電話にでた。
「……もしもし? だれ?」
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