第397話 芳しくない一日目


 ――イベント攻略一日目。

 三人はログインと同時に一回集まり、第一層にあるギルドへと来ていた。

 まだなにも詳しいことを知らない三人がここに来た理由は一つでここなら多くのプレイヤーが集まる事からイベントの最新情報があるのではないかという理由からだ。


 それはなにも蓮見達だけでなく、今では第三層まで追加されたことで過疎化していた第一層がリリース直後以上の賑わいがあることから、多くのプレイヤーが同じ事を考えてここに集まっていることは自ずとすぐにわかった。


「久しぶりに来たけどまた随分と賑わってるな~」


「私も久しぶりに来たけど多分イベントが終わればまたいつも通りだと思うよ?」


「なるほど。確かにそれはありそうだな。んでこんな所に何しに来たの、俺達?」


「……あんたね。普通に考えて情報収集とは思わないわけ?」


「思わん!」


 躊躇なく答えた蓮見。


「……はぁ~」


 大きなため息をつく美紀。


「情報収集よ、情報収集! 流石に第一層全域ってなると結構広いから闇雲に探しても見つからない可能性が高い。ならばどうするかって話し?」


「ん~とりあえず山勘?」


「……ばか」


「山勘もいいけどそれだと運頼りだからきっと里美は目撃情報が欲しいって考えたのよ、たぶん」


「そう、エリカの言う通り。少しは理解できた?」


「なんだ、そうゆうことか。なら最初からそう言ってくれよ」


 自由気ままに視線を泳がせキョロキョロし一人お気楽な蓮見。

 やれやれと頭を抱えたくなったのを何とか我慢する美紀。

 二人の仲介に入り、蓮見をさり気なくフォローするエリカ。

 そんな三人が揃って情報提示板の前へとやってくる。


 ここには第一層の全ての情報が集まると言っても過言ではない。

 なのでこの板を見ればある程度NPCの動きが分かり、そこから先読みし待ち伏せすれば見事イベントクリアとなる予定でいる美紀とエリカ。

 そのため人混みの中をかいくぐってなんとか板の内容が見える場所まで行く。

 そんな二人を少し遠目で人混みに混ざり見守る蓮見。


「イベントってなるとなんだかんだいつも熱量が凄いよな……里美のやつ」


 頭を使う事が苦手な蓮見は優秀な二人に情報収集並びに分析を任せ二人の帰りを待つことにする。本当はこの人混みから脱出したいが、声掛けもなしにどこかに行ったら戻ってきた美紀とエリカに怒られそうなのでここは大人しくしておく。


 特殊イベント:攻略情報


 フィールドの全域に渡り多くのプレイヤーが徘徊しているが未だに目撃者はおらず。


 美紀とエリカが見た提示板の内容は上記のとおり。

 なので特にすることがないので蓮見の元へとすぐに戻ってきた。


「あれ? 早くない?」


「うん。ちょっと困った事になってね」


「どうしたの?」


「まだ誰も見つけてないんだって……」


 本当に困っているのか表情が暗い美紀。

 それと難しい顔をしてなにかを考え始めたエリカ。


「それにしては妙よね。普通なら誰か一人ぐらいはもう戦闘していても可笑しくはないと思うのよね」


「エリカ?」


「だってそうでしょ? これだけ多くのプレイヤーが束になって探して誰も見つけれないって普通可笑しい。幾ら相手が動くと言ってもいつかは誰かしらに見つかると思うのよ」


「逆に動いて人が来たら隠れている。もしくはそう言った姿や気配を隠すスキルを使っているのかも」


「それだとかなり厄介になりそうね」


「だったら俺に考えがあるぞ」


「なに?」


「全部燃やして爆破して隠れてそうな所を全て灰にすれば……――いえなんでもありません」


 途中から鋭くなった美紀の威圧的な視線に蓮見が弱気になってしまう。

 なにを隠そう。

 【異次元の神災者】の最大の抑止力は美紀で、【異次元の神災者】の最大のサポーターはエリカ。

 なので抑止力の方から圧をかけられると何も言えない。


「もう考え方がぶっ飛びすぎ。そんなことしたら目的のNPCとは別に多くのプレイヤーの恨みを買う事になって、それも相手しないといけなくなるのよ? 相手の力が未知数なのにそんな余裕あるの?」


 美紀の正論に頭が痛くなる蓮見。

 事実その通りなので反論などもってのほか。


「すみませんでした」


「まぁ、わかればいいのよ、わかれば」


「でも最悪それも有りだと私は思うわよ」


「……まぁ最終日までもし誰も見つけれなかったらスキル警戒して強引にあぶり出すってのも一つの手かもしれないわね」


 可能性の話しをする美紀とエリカに蓮見は思う。

 だったら最初からしても良いのでは? と。

 だけどそんな事を言えば美紀の槍に串刺しにされそうな予感がするのでお口はしっかりとチャックしておく。


「とりあえず私達もフィールドに出て色々と探索してみましょう」


「そうね」


「……そうだな」


 こうして三人はフィールド探索へと出発した。


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