第374話 追い詰められた神災戦隊


 運よく異常状態の一つである麻痺が効力を弱め解除された所でレッド蓮見が二人に合図を送る。

 そのまま急降下からの地面が近づいたタイミングで羽を広げ水平飛行へと切り替える化物。だが後方から感じる違和感にレッド蓮見が振り返ると、そこにはもう追いついてきた小隊メンバーがいた。幾らなんでも速すぎる。そう思うが、この小隊が付けているブースターが他のメンバーの物と若干形が違うと気付いた蓮見はこれが時間経過による強敵出現なのだと理解する。出現したタイミングでステータスが決まり、そこからさらに強くなる。なんとも厄介だなと思い、ため息と一緒に言葉を吐き捨てる。


「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」


 化物の頭上から飛んでくる敵を狙っていく。

 通常攻撃を合わせ、敵の集中力を欠いていくが。

 なにしろ数が多い。

 蓮見一人の援護だけでは限界がある。


「……グハッ!?」


「……ガハッ!?」


 敵の機動力が思ったより高い。

 違う。

 まだ……さらに速くなっているのか!?

 と思った時には敵の剣が化物の身体に切り傷を作っていた。

 そして動きが単調では読まれると思い、速度があることから恐いながらも思い切って飛び降り地面へと逃げた蓮見にも攻撃が降り注ぐ。その後なんとか小隊による連携攻撃の隙を見つけては神災モードの力を借り頑張ってくれているブルー蓮見とイエロー蓮見が倒されるのを阻止する。


「させねぇ! スキル『ポーションの矢』!」


 矢に撃たれるとHP回復効果が付与されたスキルを連続で使用することで二つの化物の援護。

 それでも減っていくHPではあるが、HP減少に伴い神災モードの境地(後少しでHPが尽きる状態)となった化物達の動きも速くなりハエのように動き回る武士達へと反撃が可能になっていく。


 それからは一進一退の攻撃合戦が始まる。

 時間が経つに連れて最初に戦っていた生き残った武士達も合流してきてと徐々に神災戦隊が追い詰められていく。

 それでも神災戦隊は世界の平和という建前の裏にある己の欲望を満たす世界のためにHPゲージがある限り戦い続ける。


 二体の化物の方に武士達が集まり出すと。


「お前の相手はこっちだ!」


 化物を援護する蓮見に敵の小隊六人が固まって突撃してくる。


「レッド! 逃げろ! そいつの剣は鎧と同じく赤いラインと紫色のラインがある! 恐らく火属性と毒属性がある攻撃は全て明後日の方向に誘導されるぞ!」


 その言葉に本気でヤバいと危機感を覚えるレッド蓮見。

 おそらく目の前からやってくるコイツが親玉なのだろうが、そいつの防具にも当然紫色のラインがある。それだけではない。水色と黄色のラインと恐らく水属性と雷属性も。これはいよいよ向こうも本気を出してきたと肌が感じとる。


「な、なんでもありか……てめぇら!?」


 ブルー蓮見が巨大な尻尾を振り回してレッドへと迫ってくる小隊に攻撃するも見事に空を切る。


「終わりだ。連携スキル『六芒星の剣』!」


 親玉の剣が光輝くとそれに続く小隊が持つ剣も光出す。

 そのまま広がりながらあっという間に囲まれるとレッド蓮見を中心として六芒星の魔法陣ができる。


「ど、どうすればいい!?」


 これでは誰を狙い攻撃を阻止をすればいいかわからない。

 流石に今から六人全員への攻撃は無理だ。

 きっと構えている間に敵の攻撃が届くからだ。

 もっと言えば逃げ道もないように見えるこの状況にレッド蓮見は戸惑っていた。


「レッド許せ!」


 レッド蓮見の危機にイエロー蓮見が自らの攻撃回避行動を止めて、巨大な尻尾を振り回してレッド蓮見を遠くへと飛ばす。それはハンマー投げのハンマのように勢いよく半ば強制的に六芒星の攻撃範囲外となる空中へと一直線に飛ばされる結果となった。しかし、それによりレッド蓮見は間一髪の所で助かった。


「ナイスイエロー! おかげで助かった!」


「おう!」


 空気抵抗と重力抵抗により飛翔した身体が自由落下を始めると、スキルが空振りとなった小隊が再びレッド蓮見の方へと飛んでくる。

 このままでは今度こそやられてしまう。

 なにか対策案をすぐに考えなければならない。

 そんな焦りが思考を支配する。


 だが。

 俺の超全力シリーズ一号(大本命)となる天地創造をイベント中にするまではくたばるわけにはいかないだろう!

 と、心の中でもう一人の自分が熱く語りかけてきた。


 ドクン、ドクン、ドクン。


 心臓の鼓動が高まる。

 それに反応するかのように脳もアドレナリンを大量に分泌していく。

 活性化した脳はすぐにある事を思い付く。

 工場が壊れないならアレが出来るかもしれない。

 名付けて――「俺様全力シリーズバーニング爆発()」!


 今ならなんでもできそうなぐらいに身体が軽く感じるのはきっと気のせいなんかではないはずだ。


「……あはは。面白れぇ、まだ終わってねぇぞ!」


 赤くなったHPゲージを気にもせずレッド蓮見は気合いを入れ直し目前の小隊だけに集中する。

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