第三十二章 到来悪夢のイベントを攻略せよ 謎が隠された工場編

第367話 最高にカッコ良かった者



 スカイを倒したことでボス戦報酬は最高ランクでの獲得が決まった。

 まずは一安心の蓮見。


「一時期はどうなることかと思ったがこれでリアルでの平和を何とか手に入れた気がする……」


 安堵のため息と一緒に天守閣を降り、城外へとやって来た。



 ■■■


 観客席では蓮見の奇想天外な行動に多くの者が苦笑いしていた。


「あはは……あれ、なに?」


「さ、さぁ?」


「そう言えば第二回イベントでもアイツあんなことしてたな……」


「……だな」


 そんな者達には人知れずこれで蓮見からのプレゼントが確定したエリカは誰にも見られないように気を付けながら小さくガッツポーズをして喜んでいた。


「やった~♪ これでプレゼントゲットだぁ~」


 その声は表情を見れば一目瞭然でとても柔らかい。

 誰だって好きな人からのプレゼントは嬉しいもの。

 当然エリカだってその一人。

 幾ら年上のお姉さんとは言え、そこに年上も年下も関係ない。

 恋とはそういうもの。

 だからエリカは日々蓮見が欲しい物や欲しそうな物を蓮見の笑顔を見るためだけにあげている。その笑顔を見ているとこちらまで嬉しくなるから。でもやっぱり一番嬉しそうのは好きな人から貰うプレゼント。本当は抱きしめて欲しかったり恋人になってくれた方が嬉しいのだが贅沢ばかり言って蓮見を困らせたくはないのでそこは我慢している。


「やっぱりアイツが歌うとろくな事がないな……」


「てかあの歌はないだろ……なんだよ、バーニング俺様って」


「そもそも歌がどんどん危ない方向に進化してるんだけど……そこら辺どうなってるの?」


「ん? 私に聞いてる? さぁ? あの歌に関しては私無関係だから知らないわよ?」


「本当に?」


「えぇ。そもそも被害が天守閣一個だけで済んだんだからそんなにビビらなくても良いと思うわよ?」


「つまり?」


「もしかしなくてもまだあるの?」


「まぁアレらと正面から戦えるぐらいにはなにかあるんじゃない?」


 エリカが上空にあるモニターの一つを指さす。

 そこにはガチモードの美紀がいて、別の天守閣のボスと一緒に妨害してくる他のプレイヤーを纏めて倒している途中だった。十三対一でありながら美紀の方が圧倒的優勢なのは誰が見ても一目瞭然。そんな化け物に正面から戦えるというエリカにある女が言葉を漏らす。


「あんなに真剣な里美さんでも止められくなったら深紅の美ギルドは最早神災の美ギルドね……あはは……」


「それにほら見て。隣を見ればミズナとルナもいるわよ」


 その隣のモニターではミズナとルナがペアを組んで町に設置された工場攻略をしていた。こちらも姉妹というだけあってコンビネーションは抜群かつ強い。さらにその隣のモニターでは綾香が暴れ、ソフィもいる。もっと言えば少し離れた場所のモニターではルフランと葉子、リュークとスイレンも映っていた。


「いやいや全員目がガチじゃん。てかなに? 皆【異次元の神災者】最警戒かつガチ報酬狙いなの?」


「なんか雰囲気的にそんな感じがしなくもないな……」


「あの人本当に敵を作るのだけは上手よね……あれプラス朱音さんもだろうし……」


 半分以上の観客は想定した通りの展開に半分呆れかえっていた。

 でももう半分は。


「マジかよ……ぱねぇな、紅!」


「流石は【異次元の神災者】なことだけあるわ~」


「きゃー、私の事も気にかけてー紅様ー!」


「あーあの人になら抱かれてもいいかも~。トッププレイヤーに狙われてもあんなに堂々としてカッコ良すぎるぅ」


 と蓮見の心情を知らない者達が盛り上がっていた。

 そんな感じでモニターの中の蓮見は先程通ってきた道を歩き続ける。


「まぁ……私が言う事じゃないけど……この調子でどんどんギア上げて頑張ってね紅君♪ それとさっきの最高にカッコ良かったしお姉さんドキッとしちゃたわよ、うふふっ」



 ■■■


 道中モンスターに遭遇する事もなく蓮見は工場がある方向へと足を向けていた。


「念のためにポーション使って全回復したけど……意味なかったな……」


 HPゲージとMPゲージに目を向けどちらも全回復する必要はなかったのかなと少し後悔。どうせなら構えていただけに雑魚モンスターでもいいから遭遇したかった。そうすれば少しは心の持ちようが違っていたかもしれない。

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