第320話 神眼の巫女
「正面からとは甘く見られたものですね。スキル『連続射撃3』」
小百合の弓が蓮見に向けられると同時に矢が放たれた。
そこから、矢は五本に分裂し蓮見へと襲い掛かる。
「スキル『連続射撃3』!」
蓮見もすぐに同じスキルによる攻撃で相殺し、足の回転速度を上げて近づいて行く。
「面白いことをしますね。ではこれでどうでしょう、スキル『猛毒の捌き』」
小百合の後方に出現した紫色の魔法陣を見た蓮見はあのスキルの恐ろしさを身を持って知っているので、相手の射出前に叩く事にする。
「させねぇ! スキル『虚像の発火』!」
魔法陣に向かって飛んでいく一本の矢は炎を纏っている。
当然それは一撃で魔法陣を破壊する事が可能で、当たれば小百合の一撃を阻止する事が出来る。
だが――。
「なるほど、ではこちらもスキル『虚像の発火』!」
――必中。
正にその言葉通り、小百合の一射が蓮見の矢を撃ち落とした。
それと同時に魔法陣から三十本の矢が飛んでくる。
狙いはすぐにわかった。
矢の軌道から一番厄介な蓮見であると。
小百合はNPCでありながら正しく理解しているのかもしれない。
この中で一番弱い存在でありながら、最も驚異的な男の存在を。
「女性陣は三人で私の逃げ道を限定し、三方向からの攻撃ですか……。仕方ありませんね。我が主の為にもここからは手加減なしです。覚悟してください」
その言葉に蓮見がニヤリと微笑む。
距離にして二十メートルの所までやって来たからだ。
そして、左足を地面に付けて急ブレーキからの狙撃態勢に入る。
それを見た、美紀は蓮見を追い抜き飛んでくる矢と小百合に向かって突撃していく。
「ここは任せて」
「あぁ! 頼んだ!」
美紀の背中を見送りながら、蓮見が矢を放つ。
「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」
今度は蓮見の矢が美紀を追い抜いて行く。
その時だった。
「ルナ! ミズナ!」
美紀の声が戦場に響いた。
「スキル『加速』『アクセル』『パワーアタック』!」
「任せてください! スキル『加速』『アクセル』!」
「オッケー! スキル『連続攻撃』『援護射撃』!」
三人が自身にスキルを使い、身体能力を向上させる。
AGIが上がった美紀は蓮見に当たりそうな矢を槍の側面で弾きながら進んでいく。
その動きに迷いはなく、後ろを見ることなく、気配だけで蓮見が今どこに居るのかを察知し予測することで蓮見のルート確保並びに小百合にプレッシャーを与えて行く。それに合わせて蓮見の攻撃の一部が先陣を切った瑠香の援護をする。
対して瑠香は小百合の行く手を先回りして常に正面のルートを塞ぐようにしてして立ちはだかる。そのまま距離を詰めてレイピアによる連続攻撃。例え攻撃が躱されてもお構いなしと素早いステップを織り込んで小百合に極力反撃の時間を与えない。
瑠香を援護するのは援護職の中でもトップクラスの実力を持つ七瀬。スキル『連続攻撃』で通常遠距離攻撃のタイムラグを短くし『援護射撃』で通常遠距離攻撃の攻撃力を上昇させての援護で瑠香の背中を狙い倒そうとする小百合の意識をしっかりとこちらにも向けさせ攻撃の手数減らしと狙いを極力逸らさせる。
そこにある程度猛毒の捌きで射出された矢を撃ち落とした美紀が合流し、さらに小百合を追い詰めていく。だけど、ここに来ても大木を巧みに使った防御に後一歩が攻め切れない三人。そのまま森の奥深くに入っていき、木の影を利用しながら攻撃を再開する小百合に美紀が付いて行く。
「ミズナ、援護急いで!」
「わかった!」
美紀の攻撃が空を切り、木の幹を削るように斬るが、小百合には当たらなかった。
そしてミズナの攻撃が大きな木が邪魔して防がれてしまった。
そして美紀と七瀬と瑠香が森の奥深くまで来た時、小百合が三人の上空に姿を見せる。
小百合の持っている弓が炎で燃え、魔法陣が出現する。
「あれは……!? マズイ!」
「いけるか……スキル『破滅のボルグ』!」
美紀の槍が黒味のかかった暗くも白いエフェクトを放ち始めた瞬間小百合の放った矢が魔法陣を通り抜け赤いの炎を纏い放たれた。矢が放たれた同時に聞こえた風を切る音が三人の耳に聞こえて来る。これは蓮見の虚像の発火と違った一撃の矢だと三人の直感が感じ取る。すかさず美紀も槍を投げる。
槍と矢が空中で衝突するも、絶対貫通の前に美紀の槍が明後日の方向へと飛ばされた。
「させない! スキル『導きの盾』!」
だけど、これも絶対貫通の前に粉砕される。
どうやら小百合の弓使いの腕は蓮見より格段に上らしく、簡単に防げないらしい。
それでも。
攻撃である以上。
――神眼の前では無力と化す。
「喰らえ! スキル『虚像の発火』!」
二本の矢が空中で衝突し爆風を巻き起こしながらも、お互いを相殺し消えていく。
爆風が収まるタイミングで三人の十メートル前に着地する小百合。
蓮見は一人、遠くの方にいる。
「た、助かった。ありがとうございます、紅さん!」
「おう!」
拳を握り親指を上げ、ニコッと微笑む蓮見に瑠香もつられて笑みをこぼす。
美紀の槍が手元に戻ってくるタイミングで三人が再び同じスキルを使い今のステータスを維持する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます