第262話 その提案はどうかと思う七瀬
瑠香と七瀬のスキル『覚醒』が効力を失い、白いオーラが消失する。
だけど二人は覚醒を使う度に少しずつ身体が慣れてきたと言う事もあり、今までとは違い立ったまま燃え広がった炎を眺めていた。
だけどそんな成長を実感しつつも流石にこれではもう終わりだなと思い、ギルド長である蓮見の元へと向かう七瀬。視線を周囲に移せば美紀達も七瀬と同じ考えらしく、一足先に向かい始めていた。
「皆お疲れー」
「里美もお疲れー」
蓮見を中心に集まった五人はそれぞれ労いの言葉を送り合う。
「お疲れ様です。それにしてもAランクなだけあって終わって見ればなんだかんだ皆余力残りましたね」
「そうね」
美紀、七瀬、瑠香にとっては少し物足りなかった感があったが、それでも皆でこうして仲良く楽しめたのなら申し分なかった。
それに新しい技の確認や自分達の成長を確かめる相手としては十分過ぎた。
「紅君?」
さっきから四人と目を合わせるどころか燃える火の海を見たままの蓮見。
それに気付いたエリカが蓮見の顔を覗き込む。
だけどそれにすら反応しない、蓮見。
エリカは仕方ないので、今度は助けを求めて美紀達に視線を移すが全員首を横に振って何もわからないと意思表示をしてきた。
しばらくすると――。
「エリカさん?」
「なーに?」
「キリンって一定以上の攻撃を受けたら怯んだりして動かなくなりますよね?」
「そうね。それがどうしたの?」
「あれ……立ち上がろうとしてますよね?」
エリカが視線を炎の海へと向けるとその中で黒光りした身体を四本足で起き上がらせようとするキリンのシルエットが見えた。それによく見れば、炎の海の中を黒い雷がバチバチと音を鳴らし駆け巡っているではないか。
思わず息を飲み込むエリカ。
そんなエリカを護るようにようやく蓮見がなぜ一人黙っていたのか気付いた三人が護るようにして武器を手に取り構える。
「エリカ下がって! 前衛は私達がする。エリカはミズナと一緒に私とルナのフォローお願い」
「わ、わかった」
「第二ラウンド開始ってわけね。これでAランク……幻獣は恐ろしいわね」
「そう言いつつ里美さん、内心燃えてますよね?」
「バレた?」
「バレバレです」
五人がキリンのHPゲージを確認すると二十五パーセント程残っており、後一押し足りなかった事がわかった。クエストクリア条件である撃退まで後少し。その後少しがどうやら大変そうなのだが、最後の最後で蓮見がニヤリと微笑み始めた。
そして七瀬の側に行き耳打ちを始める。
「ミズナさん?」
「どうしたの?」
「タイミングはミズナさんに任せますので後でスキル××を使ってくれませんか?」
「それはいいけど、どうして?」
「俺が××使って××するからです」
急にミズナの顔色が悪くなり始める。
だがそれに気付かない蓮見はゴニョニョと残りの三人に気付かない小声で続ける。
「――××○○☆☆×××――――――なんですけど、もし里美達が――××ならお願いします」
どこか乗り気な蓮見と。
「わ、わかった……」
どこか乗り気じゃない七瀬。
「ならお願いします」
「う、うん……」
そう言って二人も第二ラウンドの為にそれぞれ武器を手に取り構える。
キリンが炎の海から出てきた所で全員が一斉に動き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます