第260話 信頼と信用と狙い
途中で美紀と七瀬が離れ距離を取り、二人同時に狙われないようにしてキリンに近づいて行く。その反対方向からはルナが走って来ていた。
三人は特に会話をすることなく、仲間の動きを見て次にどう動くかを予測しそれぞれが武器の矛先を向ける。
かつて多くの大会で名を轟かせた三人。
「はぁぁぁぁあああああ!!!」
その雄たけびに呼応するようにしてキリンが空に視線を向け吠える。
「ウォーンン!!!」
するとキリンの角から一筋の光が空に向かって放たれ、その光を中心として円状に
六つの小さい青白い魔法陣が出現する。
美紀、七瀬、瑠香は一瞬視線を上空に出現した魔法陣に視線を向けるがすぐにキリンへと視線を戻す。
キリンが美紀に向かって突進してくる。と同時に魔法陣も一緒にキリンの動きに合わせて動きバチバチと音を鳴らし始めた。
「……来るか。スキル『加速』『アクセル』!」
蓮見と同じくスキルの重複使用によるAGI強化による速度で対抗する。
バチバチと音を鳴らす青白い魔法陣から連続して放たれる雷を躱し、キリンの突撃に合わせてカウンターを入れる。
「舐めないで! 私は負けない!」
槍捌きだけで僅か数秒で八連撃を叩きこむ美紀の実力は相当なものだと言える。
なぜなら攻撃と回避を同時にしているのだから。
それでも美紀の攻撃は止まらない。
小柄な体系を活かし、九連撃目、十連撃目、十一連撃目、と攻撃をひたすら続ける。
槍が回転し時にキリンの身体を貫き、切り裂く。
だけどキリンの防御力が高すぎるせいでなかなかダメージが通らない。
それでも――。
「スキル『加速』『アクセル』!」
スキルの効果が亡くなる前にスキルの再発動と攻撃の手を休めない。
「スキル『加速』『覚醒』!」
そこに遅れてやって来た瑠香が参戦する。
大技のスキルは仲間の邪魔になると判断し、純粋なPS(プレイヤースキル)を中心に立ち向かう。これは圧倒的な経験値があってできる言わばトッププレイヤー達だけに許された手法とも呼べる。
瑠香のレイピアが光沢のあるキリンの身体を貫く。
場所によっては硬く弾かれるが、下半身に力を入れて隙を大きく見せないように努める。
それでも標的が増えたキリンは落ち着いて身体を回転させたり、角で美紀や瑠香の一撃を弾き返しカウンターを決めてくるなど抵抗をしてくる。特に身体を回転させられると意外にダメージを受ける。また蹴り上げや後ろ蹴り、ジャンプ攻撃は意外にダメージが大きい。
「キャァぁぁ!!!」
一瞬の判断の遅れで美紀が蹴り飛ばされる。
槍でキリンの後ろ両足を受け止めても軽く七メートルは吹き飛ばされてしまった。
美紀と入れ替えるようにして七瀬が杖を使いキリンの懐に入り攻撃する。
どこぞの魔法使いのように杖を手や身体の周りをクルクルと回転させて放たれる一撃に型はない。
「スキル『覚醒』!」
白いオーラを纏いし姉妹はアイコンタクトだけでお互いをフォローし攻撃を続ける。
徐々に減っていくキリンのHPゲージ。
だけど三人の狙いはこれで最後まで戦い抜く事ではない。
「ルナ! 攻撃パータン見えた?」
「うん! 里美は?」
「見えた!」
返事と同時に二人の元に戻ってきた美紀。
「ならここから一気に決めるわよ。紅とエリカさんが合流してアイテムによる遠距離攻撃の準備をしてくれている。私達は今のうちに削れるだけ削る!」
「「任せて!!!」」
七瀬の言葉に返事をした二人がさらに攻撃のペースを限界まであげる。
流石に近距離専門ではない七瀬は二人のペースについていけないと判断し一旦キリンから離れる事を考える。
自分は自分でやるべきことを果たす為の準備を始めるためだ。
「ごめん。二人共ここは一旦任せる!」
美紀と瑠香が頷く。
それを目で見た七瀬も頷きキリンから距離を取る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます