第245話 蓮見、美紀、エリカのタッグ


 翼を失ったアルティメットは雄たけびをあげ、近づいてくる三人を威嚇する。

 両翼を失うと同時にHPゲージも六割まで減少した。


「やっぱ、あの姉妹変態だけど凄いわー。まさか本当に破壊するとは」


「そうね。二人共トッププレイヤーなだけあって、かなり頼りになるわよね」


「えぇ。とりあえずエリカは私と紅の援護がメインかな。可能なら注意を引き付けたり、閃光弾、音響弾で敵をかく乱。それくらいなら出来る?」


「任せて! 少なくとも紅君には被害でないようにするわ!」


「…………ん?」


「うそ。里美にも……でないように極力気を付けます」


「よろしい」


 そんな楽しい会話をする二人の元に蓮見が合流する。


「エリカさん?」


「わかってる。その時が来たら任せて!」


「お願いします」


「えぇ。全てを無に帰すその時まで」


 見つめ合い、真剣な表情で意思疎通をする蓮見とエリカ。


「待って! なにその不穏当な会話は? てかその会話を当たり前にしないで! いつか本当に死者がうちのギルドメンバーから出ることになる!」


「もぉ~私と紅君の女と男の会話に入ってこないでよ。なにもしなくても里美が巻き沿い喰らうだけだから安心して」


「そう……って、ばかぁ!」


「あはは、冗談よ。多分大丈夫だから今回も大丈夫よ、多分。うん、そうね、今回は多分大丈夫……かな、多分」


「多分を多用して誤魔化さないでよ」


「里美?」


「なに?」


「俺を信じてくれ!」


 ドヤ顔蓮見に。


「……悪意のある巻き沿い喰らったら私今日の夜、リアルファイトしに家行くから。それと反撃してきたら一生口聞いてあげないし、学校で嘘泣きしてやるから覚悟してね。は・す・み・さ・ま。それと・え・り・か・さ・ま・も♪ エリカは恥ずかしい秘密皆に暴露してあげるから、ね?」


 ここでその呼び名と名前に二人が悪寒を感じ取る。

 これは冗談が冗談ですまない可能性がある奴だと。


「「はい……気を付けます」」


 そんなこんなをしているとアルティメットが三人に向かって突撃してきた。

 三人はすぐに別々の方向に大きくジャンプすることで躱す。

 翼を失い、行動に制限がかかったとは言え相手は毒龍の一角を占めるアルティメット。

 油断などできる相手ではない。

 巨体でありながら敏捷的な動き。


「コイツ……HP減少に伴うステータス強化がもうされているの!?」


 美紀は持っていた槍で攻撃をしながらその事実に気付く。


「スキル『アクセル』『パワーアタック』からの『連撃の舞』!」


 使用者が頭でイメージした攻撃がシステム補助で強化され放たれる十四連撃スキルがアルティメットの身体を高速で貫いていく。


「その目六個貰うわ!」


 エリカが持っていた閃光弾を投げる。

 すぐに爆発し眩しい光がアルティメットの視界を奪う。


 美紀の攻撃とエリカの補助で動きが鈍ったアルティメット。


「まずはその障壁を全て壊す! エリカさん!」


「こっちは任せて! 里美も援護お願い!」


「オッケー!」


 エリカが音響爆弾を投げアルティメットの聴力も奪いにかかる。

 そして生まれた隙に美紀がアルティメットの背中に乗り、背中を切り刻んでいく。

 敵が背中にいることしかハッキリとわからないアルティメット。


「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」


 五本の矢がアルティメットの三つ首を護っている三枚の障壁をそれぞれKillヒットで撃ち抜きダメージを与える。


 美紀と蓮見の同時攻撃を受け、苦しむアルティメット。

 そこに――。


「スキル『バーニングファイヤー』!」


 炎を纏った大剣がアルティメットの身体を熱で溶かし、切り裂く。

 さらに力任せに何度か振り抜き、ダメージを与える。


「はい、これ。食べていいわよ」


 三つ首の内の一つがエリカを潰そうと口を開けてやってきたので、躱すついでに手榴弾を一つ置き土産として口の中に放り込む。

 そしてスキル『遠隔操作』を使い爆発させる。


 ボスッ!


 っと黒い煙を口から吐き出すアルティメット。


「ゼロ距離ならいけるはず。スキル『破滅のボルグ』!」


 美紀の必殺の一撃がゼロ距離で決まる。

 そのため遠距離攻撃に対する障壁は発動しなかった。

 ただし毒のダメージを受け続けた為に、美紀は回復の為一旦背中から離れる。

 その時だった。

 大きくジャンプした美紀にアルティメットの半ば強引に振り回された尻尾が直撃し身体を吹き飛ばした。


「里美!」


 心配するエリカ。

 だが。


「エリカ!」


 美紀が叫ぶ。

 エリカが視線を元に戻すと、手榴弾を食べてない首二つがエリカ目掛けて飛んできていた。戦闘がメインではないエリカにこの二撃は危険。そう誰しもが思った。


「しま――ッ!?」


「スキル『覚醒』! からのスキル『爆焔:炎帝の業火』!」


 投影スキル二つを使い人様の必殺スキルを当たり前のように模倣した蓮見の一撃がエリカに襲い掛かる首二つに向かって飛んでいく。

 それによってエリカを間一髪の所救った。


 動揺するエリカの手を握り、一旦走って美紀と合流する蓮見。


 白いオーラを纏いし者が言う。


「今日の俺は白の日。里美俺が少しだけ一人で時間を稼ぐからHPとMP後は一度毒の異常状態回復してくれ」


「ありがとう。それで白の日って?」


「いつもは水色だから、気分転換に白てきな?」


「あっ……うん。わかった。とりあえずならお願い」


「おう、任せろ! 俺も少しはダメージを与えるからよ!」


 蓮見は頑張ってダメージを与えてくれた二人が回復する為の時間稼ぎをすることにした。


 ただし、少し離れたところでは。


「それ私達のスキル……」


「いつも思うんだけど、ハリーポッターじゃないんだから鏡面の短剣を細い木の枝みたく変形してからの爆焔って……」


 瑠香と七瀬が思い、口にしていた。




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