第243話 長い年月からの目覚め


 五人が苦戦をし始めた頃。

 別の場所では――。


「ギルド長……それは……」


「ルフラン様……まさか巨大な龍を真っ二つとは……」


 言葉を漏らす者達が巨大な龍の屍を背にして立ち尽くすギルド長を見て驚いていた。


「【神眼の神災】は俺達九人の攻撃を受けても立っていた。俺はまだ強くなる。そして今度こそ正面からアイツを斬り伏せる」



 さらに別の場所では――。


「ソフィ……ついに……その力を手に入れたんだ」


「あぁ、あの日の屈辱は忘れん。なにより今度は必ず【神眼の神災】を倒す」


「そっかぁ」


「てか綾香。お前が神眼と同じ領域に手を伸ばすとはな……」


「あはは! 今までアイテムって必要最低限ってイメージがあったけど、そのアイテム一つで私達九人から生き延びたんだよ。だったら同じ世界に行くしかないでしょ。だってそれ以外に勝つ方法が思い浮かばないんだもん」


「ふんっ。それを楽しそうに言う所が私からしたら恐ろしいよ」


「「あはははは!!!」」


 二人の少女が声を揃えて笑い合う。

 その光景を見た【雷撃の閃光】ギルドメンバーは声を揃えて言う。


「「「岩石龍の鱗を強引に引き剥がしての滅多打ち。からのあの闘争心……色々と燃えすぎだろ……」」」



 はたまた別の場所では――。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


「大丈夫ですか?」


「あぁ」


「大剣によるパワープレイ連撃をまさか全力でここまで極めるとは恐ろしい……」


 巨大な七面鳥に似た鳥をその手に持つ大剣と爆炎で焼き鳥にした男は微笑んでいた。


「礼を言うぞ【神眼の神災】。俺をここまで燃え上がらさせてくれたことに」


 あの日、制限時間のタイムアップがこなければ、七瀬に狙われ負けていた。と思っている。そう、あのギルドメンバーは全員が日々成長しているのだ。そして武器を交えて気付いたことがある。生半可な攻撃ではあの男が率いる者達すら倒せないと。


 新しく出現したクエストを機に各トップギルドのギルド長を中心に多くのプレイヤーが更なる頭角を現し始めていた。足りない物をあろうことか初心者プレイヤーに教わった者達は今もなお狙われる側の人間として存在している。そしてそんな人間の近くにいるトッププレイヤー達もこの瞬間新たな領域に手を伸ばそうとしていた。


 首をポキポキと鳴らし、仲間を信じてその瞬間に全てを懸け繋いでいくことを考える七瀬。

 力には力。

 ならば――。

 神災には神災を使うしかない。

 そして――。

 神災を見て思いついた新たな戦術を遂に使う事を決意する。


「紅、里美?」


「はい」


「どうしたの?」


「悪いけどさ、アイツ地面に落としてダメージを与えられるだけ与えるから後お願いしていい? 私とルナの全力でまずはあの両翼を破壊して飛べなくする。そうすれば今度はエリカさんも戦えるようになる。ギルド長、副ギルド長としての意見は?」


 蓮見と美紀がお互いの顔を見て頷き合う。


「任せました」


「あいよ!」


「ルナあれやるよ」


「オッケー! 紅さん許可ありがとうございます。ミニイベントでは奥の手として隠していましたが、これが今の私の全力ですので見ていてください。本当は紅さんの逃げ道をふさぐための戦術だったんですけどね」


 瑠香と七瀬の身体を中心に魔法陣が出現する。


「これは……」


 驚く蓮見。

 美紀とエリカは毒の霧の中でも白く綺麗に輝き始めた魔法陣に魅せられていた。


 魔法陣が光始めると、二人の身体の内側から白い光が出現する。


「これは紅君の水色オーラの色違い?」


 エリカは蓮見をチラッと見て、今はないが見比べるようにして言った。


「この一分に全てを懸ける!」


 瑠香が毒の霧の中で自由に動きまわるアルティメットに鋭い眼光を向ける。


「お姉ちゃんがフォローする。走って!」


「うん!」


 二人が一斉に動き始める。

 蓮見、美紀、エリカはニヤリと微笑み、闘争心全開となった瑠香と七瀬を信じて邪魔にならない所に移動し、自分達の出番が来るのを待つ。

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