第211話 平和な夜の時間
「なら蓮見君。三人で一緒に食べましょうか」
「はい。それにしてもエリカさんもお料理お上手って凄いですね」
「えへへ、ありがとう」
「美紀もまた上手くなったんじゃないか? 前回食べた時より美味しかった!」
「そう? ありがとう。特に何もしてないけど工夫は毎回変えてるからね」
「すげぇー。俺は料理がサッパリだから普通に料理ができる人は尊敬しかないな」
するとここでエリカが冗談半分で笑いながら言う。
「なら蓮見君は私や美紀みたいに料理ができる人と結婚しないと毎日カップ麵になるわね」
そこに美紀が便乗する。
「確かに。料理できる人と結婚しないと大変なことになりそう。それこそ毎食カップ麺とか」
「それは辛いわね」
「まぁ私とエリカはその心配ないから大丈夫だけどねー。でも蓮見はそうもいかなそうだけど」
美紀が悪戯半分で蓮見を困らせる。
「でも私とエリカが蓮見の為に料理しなくなったら、場合によっては今日からずっととかあり得るかもしれないわね。蓮見のお母さん忙しそうだし」
「…………」
美紀とエリカの冗談だとわかっているが、二人みたいに「あはは~」と言って笑えない蓮見。
なぜならそのような状況に蓮見は何度も陥っているからである。
美紀には迷惑をかけたくないことから言わないだけでそんな日が月に一度はくるのだ。
今まではそれが長くても一週間とかだったが、今度からも今までどおり基本は一日、二日で長くて年に一から二回は一週間程度とも限らない。そう考えるとかなり現実味があったので蓮見はつい黙ってしまった。
「…………」
「大丈夫よ。今度からそんな日はお姉さんに相談しなさい。今日みたいに金曜日だったらお姉さんが泊まり込みで料理作ってあげるから」
「……ん? エリカさんもしかして泊まるんですか、今日?」
「うん。美紀の家に泊まる予定だったけど、予定変更で蓮見君の家に今日は泊まるわ」
満面の笑みで答えるエリカ。
「なら私も蓮見の部屋に泊まる。いいよね、蓮見?」
「う、うん。まぁいいけど……この家の距離で?」
「だめ?」
「別にいいけど、二人だと寝るとき少し狭いと思うけど……それでもいい?」
「うん、いいよー」
美紀が頷く。
あろうことか二人が急に泊まることになったが、まぁこれはこれでと蓮見は納得する。
元々エリカは今日美紀の家にお泊りして、明日一緒に美紀の家からログインして遊ぶと聞いていたからだ。つまりこのままでは二人きりでまた何処かに行かれてしまうが、今日一緒に寝て明日一緒に起きればようやく蓮見も美紀とエリカに自然な形でついて行くことができるわけで仲間外れになる心配がないのだ。なにより今は美紀とエリカの信用も回復しなければならないと蓮見は心の中で思い、勘違いしたままなのだ。
「そう言えば美紀とエリカさんってあれからどれくらい強くなったんですか?」
「私? 私はやっと七瀬達と同じ魔法陣を使うスキルを手に入れたぐらいかな」
「マジか……めっちゃ強くなってるじゃん!?」
「まぁね~」
「私は残念ながらそこまで強くなっていないわ。元々生産職だしね」
「たしかに生産職の人が無双とか聞いたことがないしな……」
蓮見がウンウンと一人頷いていると、
「そうなのよ。だからお金になるモンスター程度は狩れるようにしか強くなっていないわ」
とエリカが笑いながら言った。
「まぁエリカにも強くなってもらわないと第三層はキツイだろうから私が修行してあげてるのよ」
「いつもありがとうね」
「気にしないで。また第三回イベントみたいなのきたら大変だから」
「うん。とりあえずご飯冷めないうちに食べてしまいましょう」
「そうね」
この時、蓮見は焦ってしまった。
結局のところ美紀だけでなくエリカまで強くなっているではないかと。
これはもう俺様の全力シリーズを新たに開発するだけでなく、新しいスキルを主軸とした戦い方も覚えなければいけないと蓮見の中でなにかが変わる。
そしてニヤッと微笑んでから残りのご飯を食べてしまう。
それからご飯を食べ終わった蓮見達は一旦別れて、蓮見は自宅で美紀とエリカは美紀の家でお風呂にそれぞれ入り、寝る前に合流して蓮見の家で夜を共にした。
そう三人は仲良く寝ると言ったいい子ではなく悪い子になったのだ。
具体的には深夜から始まった人生ゲームからのトランプ大会で大いに盛り上がり気付けば朝日を迎えていたのである。
そのまま三人は変にハイとなったテンションでゲームにログインした。
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