第154話 瑠香とエリカのタッグ
突撃してくる敵プレイヤ―に対して瑠香とエリカも臆することなく突撃していく。
瑠香が手に持っていたレイピアで敵の身体を貫こうとしたが、障壁によって攻撃を弾かれてしまった。
その隙を狙い、他の敵プレイヤーが瑠香を攻撃しようとするがそれをすぐにエリカが大剣を振り回し護るようにして後方から姿を見せる。
初めての二人パーティーでは合ったが瑠香はエリカを、エリカは瑠香をずっと見て来た。
その為、口にしなくてもお互いが何を考えているかは何となくわかるし、二人はそれぞれ信用し信頼もしている。
だからこそ二人は更に敵陣に向かって駆けながら叫ぶ。
敵の後方支援部隊は遠距離攻撃の姿勢に入っている。
まずはこれを止めなくてはならない。
「紅! 暴れなさい!」
「紅さん! 敵は後方に四人、前衛に六人です!」
あたかもそこに【神眼の天災】がいるように叫ぶ二人に全員の意識が散乱する。
全員の頭の中に【神眼の天災】が自分達を狙っているとすり込まれる。
周囲を見れば、傾斜が厳しく足場も悪い木の茂みがある。
ただ、それは二人による見せかけでしかない。
だけど突然の地響きからの蓮見の声からの爆発にリアリティーが更に増す。
エリカが『遠隔操作』を使い予め罠として配置していた自動音響装置の一つを作動させたのだ。
一瞬の隙が瑠香とエリカを敵前衛部隊の中に入り込む時間を作り、後方支援隊は急遽仲間に攻撃が当たる可能性を考慮し、支援魔法へと切り替える。
「見せてあげるわ、スキル『バーニングファイヤー』!」
大剣が赤色のエフェクトを纏い、敵に炎属性を付与した攻撃を行う。それは大剣の特性を活かし、敵の片手剣にプレイヤーの盾を力技で吹き飛ばした。
それはエリカが両手で大剣を振り回し、全体重を乗せており、シンプルな攻撃ではあったが、細身とは言え筋肉質の男の体勢を崩すには十分過ぎた。
「ナイスです! スキル『連撃』!」
そこに瑠香の七連撃。
あっけなく細身の男は倒された。
「見つかったか?」
「まだだ!」
「何処にいる!?」
「とりあえずこっちは任せろ!」
蓮見の声を聞いた前衛プレイヤーが後方にいるプレイヤーに叫ぶ。
索敵スキルを使い魔法使いが必死になって蓮見を探す。
だが見つかるはずがない。彼らは今両サイドにある茂みに蓮見がいると思い込んでいるために、スキル効果範囲を限定している。その事こそが誤りなのだから。当の本人は綾香対策を必死になって拠点の中で考えている。まぁ周りは何でもいいからとりあえずリュークとの戦闘で疲弊している蓮見を休ませたかったので、意見の食い違いは多少あるが……。
「エリカさん!」
「OK~! 任せて!」
そしてエリカの大剣が石段の上で振り回される。
瑠香は一旦足場の悪い脇道に移動して回り込むようにして動く。
そしてエリカを先に倒そうと相手の意識が瑠香から外れた瞬間、瑠香の鋭い視線が油断したプレイヤーに向けられる。
今まで沢山の強敵と闘って来た瑠香に取っては、どのプレイヤーが誰に殺気を向けているかは見たら大体わかる。それに不慣れな石段の上と言えど、スイレンとの戦いを通してもうだいぶ慣れており、最初に比べるとほとんど思い通りに動ける。
これが瑠香の強みであり強さの象徴でもある。
瑠香の一番の武器は、小柄ですばしっこい事でもステータスが高いことでも、ちょっとエッチで好きな人には沢山イジメられたい事でもない。そうそれは姉以上の適応環境能力が異常に高いことである。
悪魔アリステインの時も始めての蓮見との共闘でも瑠香は十分に配慮し蓮見の援護を見事成し遂げた。
故に瑠香はもうエリカの力を正しく理解し、エリカの力を十分に引き出し、それを利用し始めていた。
そしてエリカもその期待に答えようと全力で頑張っている。
「もういっちょ! スキル『バーニングファイヤー』!」
エリカのスキルタイミングを見切り、反撃しようとしたプレイヤーの背後から瑠香のレイピアが心臓部に突き刺さり倒される。
そして。
「スキル『連撃』!」
周囲にいるプレイヤー達の攻撃を躱しながら追撃。
最後はエリカの大剣によってダメージ量自体は少ないが全員吹き飛ばされしまった。
瑠香はエリカの攻撃タイミングに合わせてギリギリで大きくジャンプする事で無傷である。
「ダメだ……」
後方にいた魔法使いの一人が呟いた。
まぁ見つかる以前にそこにいないのだから幾ら探しても無駄なわけで。
傷付いた前衛部隊を回復させるが、圧倒的な力の差、そして索敵の失敗と敵の戦意は大きく削られた。
「撤収!」
そう言った魔法使いが敵の視覚を封じるスキル『煙幕』を使い全員逃亡を開始した。
後を追い、全員倒そうとする瑠香をエリカが止める。
「待ちなさい。ここは逃がしていいわ」
「でも!」
何処か気合いが入った瑠香に対してエリカが冷静になって答える。
「もし里美とミズナとすれ違いで綾香が来たら、誰が対抗するの? 仮に紅が対抗するにしても私一人じゃあのギルドメンバー相手に数分も戦えないわ。それに――」
「それに……?」
「私達のリーダーは誰だと思っているの?」
少しもったいぶってから。
「【神眼の神災】が生きている以上、ルナと同じトッププレイヤー達が黙っているわけないでしょ。本気はその時まで取っておきなさい」
天災ではなく神災と言うエリカはとても楽しそうにニコニコしてこう言い切った。
「少なくともリューク、スイレン、綾香、後はソフィ。この四人を纏めて相手に出来る機会なんてそうそうないわよ。だったら今は我慢した方がいい。違う?」
その言葉に瑠香の口角が上がる。
「ふふっ。それもそうですね。この四人を全て紅さんに任せるわけにはいきませんよね」
二人は今後起こるであろう、最後の戦いに備えて一旦蓮見のいる拠点まで石段を登りながら戻る事にした。
状況は絶望的なのかもしれない。
だけどエリカもだが瑠香から見た、美紀と七瀬がまだ勝つことを諦めていない理由。
それは二人と同じく、何故かこの状況下でもこのメンバーならもしかしたら本当に勝てるかもと心の何処かで思っているからなのかもしれない。
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