第114話 金儲けババア
その頃、拠点では敵ギルドメンバーによる攻撃を受けていた。
「二人しかいないぞ、落ち着いてアイツらの首を取れ!」
そう言って四人の偵察隊と思われるパーティーから攻撃を受けていた。
だが四人は蓮見がいる拠点ではなく石段の上で美紀と一生懸命戦っていた。
「ほらほら、いつまで経ってもそんなんじゃ私には傷一つ付かないわよ?」
大きな欠伸をしながら、四人相手に美紀は余裕を見せつけていた。
時に屈強な男のバランスを崩し、石段から蹴り落とす。
片手剣で盾を構え斬りかかって来た者には盾に鋭い突きを入れて重心を後方にずらし石段から突き落とす。
逃げだそうとしたものには人質となってもらう為、逆に石段の上へ蹴り飛ばす。上には蓮見、下には美紀と逃げ道を無くす。蓮見は蓮見で今のうちにMPゲージをためておきたいのでKillヒットやテクニカルヒットは敢えてしない。ちなみに歌ってMPゲージを溜めようとしたが美紀に歌ったら殺すと言われて断念した。なんでもあまり目立たないようにとのことだった。
その為味方が捕まっている事から石段を蹴り落とされては何度も這い上がっては落とされを繰り返す二人。
そして美紀の準備運動がようやく終わり、四人は拠点に戻る事ができた。
一方的に利用され、利用価値がなくなれば殺される。だけど五分後には復活できる。
だがゲームオーバーにならないだけまだ救いがあった。
つまり二人にやり返すチャンスがまだ残されているのだから。
だけど四人はギルド長にこう伝える。
「あの山の頂上だけには絶対近づいてはダメだ」と。
拠点に戻ろうとする三人は帰り道何か第三回イベントに役立つドロップアイテムがないか周囲を探索しながら歩いていた。
この時、VRMMO経験者の七瀬はある事を懸念していた。
ここのイベント専用MAPアイテムがなさすぎる。
あるのは装備耐久値回復アイテムと食べて飲んでも効果がなくただ味覚を味わう為だけの果物に似た果実があるだけだった。
魔法使いにとってはMPゲージは生命線と言っても過言ではない。
今もイベントツリーにはそこそこにポーション効果を持つアイテムは残っているが、この先トッププレイヤーや大規模ギルドとの交戦を考えたら残り9時間弱で100を切っているMPポーションだけでは限りなく不安だった。
本気の戦闘ではいつも一人で15~20個のHPポーションやMPポーションを使う時だって場合によってはある。もしそんな戦闘が4、5回続けば皆の足を引っ張る事になる。イベントが始まる前の提示版では第三回イベントはかなり時間も長いしアイテムもそこそこにあるだろうと皆が言っていた為にすっかり鵜呑みにしてしまった。
「誰かに貰う……にしても見たところルナもエリカさんもそんなに持ってなさそうだし…………」
恐らく今回のイベントで提示版を良く見て、情報収集をしていたプレイヤー程この状況に悩まされているのだろう。大規模ギルドであれば間違いなく皆で分け合って戦えば少なくとも無茶をする必要はない。
だが小規模ギルドはそうもいかない。
数で攻め込まれたら人数差を覆すのに強力な魔法やスキルを使って対抗をしなければならない。幾ら美紀でもそれは変わらない。例えばルフラン率いる【ラグナロク】が攻めてきた場合、ルフランと美紀が戦うとする。美紀は間違いなくルフランとの戦闘で大量のポーションアイテムを必要とする。
そして残りのメンバーでそれ以外のプレイヤー全てを相手にすると考えると勝機は絶望的に低い。
だが、それは自分達だけではないとも考える。
後半小規模ギルドや中規模ギルドはかなり苦戦を強いられることが考えられる。
勝機があるとすればそこのわけだが考えれば考える程、何か重要な事を忘れているような気がするのだ。
そしてエリカをチラッと見てその違和感が正しいとすぐに気付く。
――ここに金儲けババアがいると言う事だ。
そう、蓮見の為に絶対に要らないだろうと思われる物――アイテムまで幅広く取り扱う者が目の前にいるのだ。
「エリカさん?」
「ん、どうしたの?」
「今何を探しているんですか?」
「お金になりそうなイベント限定アイテムよ?」
――何か一人目的が違う気がする。
確かに七瀬達はアイテムを探して捜索を今しているのだが、七瀬と瑠香は当然今は実用性のあるアイテムを探していた。
だがエリカだけはどうやら違ったみたいだ。
「ちなみにMPポーションの予備とか持ってますか?」
「あるわよ」
エリカは首を傾げながらそう言う。
「もし良かったら余ったらお返しするのと、後でゴールドで全部お返ししますので少し分けてくれませんか?」
「なら先にゴールド頂戴!」
その言葉に苦笑いしかできなかった。
やはり【天災】は【天災】や【それに近い者】を呼ぶらしい。
七瀬はとりあえず一万ゴールドをエリカに渡す。
するとMPポーションが100個送られて来た。
「まぁギルドメンバーって事でおまけしておくわ」
「ありがとうございます。でもこんなに貰って大丈夫なんですか?」
「うん。回復系アイテムは所持数限界まで全部持ってきたから。後でアイテムを使うと言う概念があまりない紅君が困らないようにってね!」
「一応聞きますが、有料ですよね?」
「何言ってるの? 紅君は無料よ、無料!」
七瀬は何かが可笑しいとは思わずにはいられなかった。
何故だ。何故蓮見――紅だけには無料なのか……。
よく見れば、エリカが悪い笑みを浮かべている。
「流石エリカさんですね。紅に恩を売って好感度アップを狙ってるんですね」
「よくわかってるじゃない。だから後半さり気なく余ったアピールからのプレゼント攻撃よ!」
「流石ですね~」
空気を読んでここはエリカを持ち上げておくことにする。
それにしても少し前に美紀が言っていた通り、計算高いなこの人とは思わずにはいられなかった。
それからも二人は実用性のあるアイテムを探し、一人はお金になる希少価値が高いアイテムを探しながらギルドホーム(拠点)へと向かって歩いて行く。
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