第115話 私だってやればできるんです
あと少しでギルドホーム――拠点へと到着と思われた時、瑠香が何かに気付いたように静かに七瀬に近づく。
「エリカさんもこっちに来てください」
か細い声で、何かを警戒している感じでそう言う。
瑠香の声を聞いたエリカはすぐに二人の元に歩いて行く。
「あれを見てください。ここだと私達のギルド拠点から結構近くないじゃないですか?」
山奥にある如何にも怪しげな家が一つ。
その周りには沢山のプレイヤーがいる。
「だね。でも三人じゃキツイ気がする……かと言ってこんなに近かったら向こうが私達の存在にいつ気付いても可笑しくないわね。となると里美だけでもこっちに呼ぶか、私達だけで何とかするかよね」
「お姉ちゃんの判断に私は任せるよ」
「私も。ここはミズナが決めて。経験って意味ではこの状況ではミズナの判断が一番正しいと思うわ」
瑠香は目を細めて状況を確認する七瀬の決断を静かに待つ。
紅なら山火事一択で後先きを考えずに行動しそうではあったが、これが普通で当たり前だと瑠香は密かに心の中で思っていた。
「行くしかないわね。ここで私達が仮に死んでも生き返る事ができる。だけどこの数に拠点が襲われたら多分紅なら…………何とかしそうだけど、そうなると他のギルドが私達のドンパチに気付いて攻めてくるかもしれない。どうせバレるならこっちの拠点の方がまだいいと思うのだけど異論は?」
「ないよ」
「私もないわ」
三人はお互いの顔を見て、頷き合う。
そのまま三人は敵に気が付かれないようにして行動を開始した。
「よし、何とかここまでこれた」
瑠香は敵に気が付かれないように敵拠点の近くまで来ており、今は木の上で身を隠して七瀬とエリカの合図を密かに待っている。
敵のギルドは中規模ギルドなだけあって、うじゃうじゃとプレイヤーがいる。
それにこのギルドは余程自信があるのか、ギルド長までもが防衛人員の一人となって後方ではあるが配置についている。
「今思ったけど、お姉ちゃんとエリカさん……どうやって裏手に敵の目を引き付けてくれるんだろう?」
瑠香は一人疑問に思った。
七瀬の指示でここまで来たはいいが、肝心なことは何一つ聞いていないからだ。
だけどここまで来た以上、後は信用して時が来るのを待つしかない。
「裏手に侵入者だ、数は女が二人!」
見張りに発見された、七瀬とエリカが一斉に動き始める。
そして聞こえてくる爆発音に一人、また一人と裏手に向かって走り始める。
「流石! お姉ちゃんとエリカさん!」
瑠香は頬を叩くと集中して敵ギルド拠点に突っ込んだ。
「おい! こっちにも一人出たぞ!」
半分以上のプレイヤーが裏手に回っている為、今ギルド長の護衛はかなり少ない。
「スキル『加速』!」
瑠香は加速し一気に距離を詰める。
「スキル『水流』!」
防衛の第一陣と第二陣の半分は既に裏手に移動しており、残り第二陣は瑠香の『加速』に対して反応が遅れあっさりと抜かれる。
最終防衛線となる第三陣は瑠香の突撃と『水流』に対して障壁を展開する。
障壁は精度よりも広範囲と言わんばかりに全方位からの攻撃に対処可能なように展開される。
それと同時に敵がスキルを使う。
正面からのスキルによる攻撃の盾となるように水流が瑠香を護りながら直進する。
そして障壁と衝突する。
「まだまだ! スキル『ペインムーブ』!」
水流が突撃し、障壁の一部にダメージを与えた場所に追撃をするように『ペインムーブ』が炸裂。
――狙うは一点突破。
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