第100話 我儘でゴメンね
「ありがとう。顔真っ赤にして誤魔化すあたり本当に思ってくれてるんだね。なら今日は素直に甘えてあげるから頭撫でてよ」
そう言って美紀は蓮見の手を掴み自分の頭に持っていく。
蓮見がそのまま美紀の頭を優しく撫でてあげると、美紀の表情が柔らかくなる。
「えへへ~。誰かに甘える私を見せるのは蓮見だけだよ」
猫のように気持ち良さそうに声を出しながら甘える美紀はとても可愛くて、いつも見てる美紀と違った。いつもこうだったらいいのになとつい思ってしまった。
「美紀甘えたら可愛いのに、何でいつもはとげとげしいの?」
「はすみぃ~それ以上言ったらもう甘えてあげないしその口ふさぐよ?」
言葉のトーンからこれ以上の踏み込みは危険だと蓮見は判断する。
なので、少し期待を込めて別の事を聞いてみる。
「唇でふさいでくれるの?」
「ばかぁ。好きでもない男と何回もキスするわけでもないでしょ」
そして照れているのか美紀が顔を赤くして蓮見の太ももを指で掴み捻る。
「いてぇ!!!!!!!!」
蓮見の悲鳴が部屋に響き渡る。
だが、痛くて動こうにも美紀が足の上に乗っているので逃げる事は出来なかった。目から涙を溢しながらも美紀を見ると、ジッーと蓮見を見ていた。
「キスして欲しいなら私を落として彼女にしてみなさい。そしたら……蓮見が望むなら……いっ……幾らでもしてあげるわよ」
「……美紀って可愛い顔して意地悪なんだな」
「そうでもないよ。蓮見が本気でアプローチして告白してくれたら、真剣に考えてあげるわよ」
「つまり……」
蓮見は美紀に確認するかのように言う。
「可能性はゼロではないと?」
「うん。だから少しは頑張ってみなさい。そしたら蓮見の初めての彼女が私になるかもしれないわよ。それにもしそうなったら私は何処にもいなかないよ?」
昨日泣いた内容をしっかりと覚えているのか、美紀がほほ笑みながらそう言ってきた。一体どこまでが本気でどこからが冗談なのかはわからなかったが希望はゼロではないとわかったのでとりあえず良しとすることにする。
「でも蓮見はエリカにデレデレしてるから今の所それはないかな」
だがここで美紀は全て見抜いていると言わんばかりに言ってくる。
「そっ、それは……」
図星をつかれて慌てる蓮見。
でもこればかりは本当の事なので特に否定はしない事にした。
だって健全な男子と言うか今まで美紀以外の女の子とスキンシップすらまともに取った事がない男子高校生が年上のお姉さんに優しくされたら相手に好意がないとわかっていてもやはり勘違いをしてしまう生き物なのだから。
「それで今日、エリカの柔らかい胸で幸せそうな顔をして甘えた感想は?」
「見てたのか?」
「うん。それで感想は?」
「ぷにぷにしてて、後は程よく弾力が合って気持ち良かったです……」
言い訳をしても無駄だと考えた蓮見は素直に自白する。
すると、美紀がプイッとソッポを向いて背中を向けてきた。
そして少し怒っているのか、ソッポを向いたまま美紀が言う。
「蓮見ってエッチなんだね」
――と。
そして美紀が不貞腐れる。
蓮見は仕方がないので、とりあえず美紀の頭をしばらく撫でてみる。
が反応はなかった。
そこで手を止めてみると「んぅ~」と不満を口に出しながら美紀が背中で撫でろ語りかけてきたので、小さくため息を吐いてから美紀の機嫌が直るまで撫でて上げる事にする。
「蓮見?」
しばらくすると美紀が名前を呼ぶ。
「うん?」
「我儘でゴメンね。でも私もたまには誰かに甘えたいし蓮見を一人占めしたくなるの。だって今までずっと一緒だったのに急に離れたって思うと心が寂しくもなるから」
それを聞いた蓮見は安心する。
いつものちょっと我儘で素の美紀だと。
そして素直に相手の気持ちを考えてくれる美紀だと。
「うん。こっちこそゴメン」
「いいよ。だってよくよく考えたら蓮見も男の子だもん。仕方ないよ」
「あはは……」
蓮見は笑って誤魔化すことしかできない。
すると、下にいるお母さんの声が部屋に聞こえてくる。
「はすみーご飯で出来たわよー」
「はーい!」
蓮見がリビングまで聞こえるように大きな声で返事をする。
すると、美紀が起き上がる。
「なら私帰るね、でもまたすぐに甘えに来るから。今日だけの特別だよ!」
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