第67話 【神眼の天災】の御用達


「よし……これでまた強くなった! それに思わぬ収穫もあったしやっぱりゲームって本当に楽しいな!」

 美紀の想いにまだ気づいていない蓮見はようやく女性に男として見られていると思えることが出来て嬉しかった。


「にしても、エリカさんって彼氏いるのかな……」

 考えても分からない事は考えない事にして蓮見は採掘をするエリカの元へ歩いて行く。

 そして今度気が向いた時にでもさり気なく聞いてみる事にした。


 エリカの用事が終わると二人は奥にある魔法陣の所に行く。

 そして魔法陣の光に包まれてギルドがある街まで転送された。


「ねぇ、紅君一つお願いがあるんだけどいいかなぁ~?」

 エリカはギルドホームの奥に作った工房から話しかけてくる。

 ちなみにエリカのお店はギルドホームからすぐ近くの工房を貸し切って運営されている。


「はい?」


「ピッケルの質の良さを告知して少しお金を稼ぎたいから今日の紅君の戦闘シーンをダイジェストにまとめて荒稼ぎ……じゃなくてpv映像として私のお店で流してもいいかな~?」


 今完全に荒稼ぎと聞こえたがと言うカットインは止める事にした。

 なぜなら蓮見はVRMMO初心者なのだ。

 自分にそんな人気がない事等百も承知なわけで、言った所で何勘違いしてるのと言われるのが関の山だと分かっていた。

 きっとこれが蓮見ではなく美紀ならば宣伝効果としては抜群なのだろう。

 スタイルが良くてかわいくて強い誰が見ても完璧である。


「別にいいですけど、俺じゃ宣伝にすらならないと思いますよ?」


「そんなの知ってるわよ~。でもありがとう~。売り上げの一部と宝石のお礼はまとめて紅君に新装備として返すから期待せずに待ってなさい~」


「ありがとうございます」


「にしてもどんな装備かな……楽しみだな~」

 蓮見は新しい装備と聞いて心が躍った。宝石の価値など知らない蓮見にはどれくらいの金額になるかなんて想像もつかないし、ピッケルの宣伝も平凡な男ではそこまで絵にならないだろう。だけど、新しい装備がタダで手に入るならそれはそれで性能に関係なく楽しみだった。武器が出来るのか防具が出来るのか、はたまた装備品となるのか。


「あぁ~楽しみだな~」

 色々と考えただけでワクワクが止まらなかった。


 そのまま蓮見はエリカの邪魔をしたら悪いと思い、今日は第二層の街を少し散歩してからログアウトした。


 蓮見がログアウトした頃、エリカのお店では早速蓮見と毒龍の戦闘シーンがpv映像として公開されていた。蓮見は情報提示板を見ない事から知らないが、プレイヤーは好きな戦闘シーンを三つまで保存する機能がこのゲームにはあるのだ。エリカはその機能を使い少し映像を編集してお店の宣伝用の大型モニターに映し出していた。


「おい! 【神眼の天災】だぞ!」

「マジか! 【神眼の天災】の御用達ごようたし……なら俺達も一本買って行くか!」


 噂はたちまち第二層に光の速さで広まり、エリカのお店は大繫盛する。

 発掘系のアイテムの売り上げだけで、プレイヤーが運営する第二層鍛冶屋の中で売り上げ高が上位に来てしまうぐらいにバカみたいに売れた。当然蓮見はこの事を知らなかった。装備が欲しければエリカに直接言えば鍛冶屋に行かずとも用意してくれるので蓮見がそもそも鍛冶屋に行くことはなかったからだ。


 そして提示板はいつも通り……。


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