第30話 美紀とエリカよ、これが弓使いだ!!



「仕方がないわね。紅に代わって今度は私が相手よ!」

 美紀が槍を持って、走りだす。

 三人の目標が終わらなかった事に安堵しているのか表情は柔らかかった。



「手加減はなしよ。スキル『加速』!」


 ダークネスの攻撃を見極めながら距離を詰める。

 限界まで集中した美紀の前では、攻撃パターンが変わった程度では殆ど意味がない。

 火球やアイアンテールと言った攻撃を躱し、空を飛ぶダークネスの真下まで行く。


「スキル『ライトニング』!」

 真下から降り注ぐ雷撃にダークネスがスキル効果の感電を受けひるむとその間に二段ジャンプをして今度はダークネスの背中に飛び乗る。


「悪いけどゼロ距離ならその障壁を貫通できるわ! スキル『破滅のボルグ』!」

 ダークネスの背中から容赦なく襲い掛かる美紀の槍。

 障壁を貫通、破壊し突き刺さる槍を抜くと同時に今度は連撃を仕掛ける。


「スキル『連撃』!」

 苦しみながらも美紀を振り落とそうと暴れるダークネス。

 連撃を決めると同時に美紀が振り落とされる。


 態勢を崩した美紀に火球が襲い掛かり、HPゲージを七割近く削って来た。

 その時、ようやく蓮見が動けるようになる。

 スキル『火事場の俊足』『弓兵の観察眼』『領域加速(ゾーンアクセル)』 の三つの効果が最大値で発動した蓮見は今までで一番速く動けた。


「うぉぉぉぉぉ! これが俺の究極全力で全速ダッシュ!!!!」


 そのまま全力で蓮見がダークネスに向かって走る。

 ダークネスのHPはまだ二割残っており、とても一撃で倒せる状態ではなかった。

 今度は美紀のHPがヤバイと思った蓮見は左手にHPポーションを持ち、右手に「危険」と書かれた物を持って突撃する。


 雄叫びに気付いたダークネスが空中で方向転換をして、蓮見に向かって急降下してくる。

 どうやらそのまま口を大きく開き蓮見を噛み潰すつもりらしい。



 美紀がそれに気づいて叫ぶ。

「危ない!!!」


 エリカが声を張り上げる。

「ダメェ! 無茶よ!!!」


「おい、ボスよく聞け。俺のパーティーメンバーに手を出すってなら俺はお前を殺す!!!」

 そう言って左手に合ったHPポーションを飲みHPの回復と同時に急激に失速する蓮見。


 ――両者の距離は三メートル!!!


 そして今度は不敵な笑みを浮かべて言う。

「悪いな。これが俺の弓使いとしての戦い方だ!」

 左手で安全ピンを抜き、それをダークネスの口の中に全力で投げ込む。


 ――ゴクリ!?


 勢い余り「危険」とかかれた爆発物を飲み込んでしまったダークネスが次の瞬間。

 黒龍から火炎龍となる。

 手榴弾が体内で爆発しダークネスの身体が膨張、そして目、口、耳と言った穴から炎が噴き出てくる。

 空中で態勢を崩したダークネスはその巨体で蓮見に突撃するようにして落下し、エリカがいる場所まで吹き飛ばす。

 一瞬でHPがゼロになりかけるが、先程獲得したスキル『不屈者』の効果でギリギリのところで踏ん張る。そして、ダークネスのHPが全て削られ、光の粒子となって消えていく。それと同時に二層に続く魔法陣を護る結界が消えた。


「よっしゃー!」

 大きくガッツポーズをする蓮見。


「「えぇぇぇぇぇーーーー。弓関係ないじゃん!!!!」」

 まさかの展開に美紀とエリカの声が綺麗にシンクロしてボス部屋に木霊こだまする。


 しばらくしてフラフラする蓮見を肩で支えに来るエリカ。

「よく頑張ったわね。お疲れ様! 最後の紅君カッコ良かったよ」

「ありがとうございます」

「私思ったんだけど私の発明と紅君の発想コンビは絶対最強だと思わない? まさかあんな方法で勝つとは思わなかった」

 嬉しそうに笑みを向けてくれるエリカでは合ったがこの時蓮見は「……あはは。そうかもしれませんね」としか答える事が出来なかった。間違っても貴女の発明で命を二回落としかけましたとは言える雰囲気ではなかった。


「ほら~早く早く!!! 先行っちゃうわよ~?」


 二人をせかすように美紀がいち早く魔法陣の前に行き手招きをする。

 蓮見とエリカが返事をしてからどこか落ち着きのない美紀の場所まで行き、三人一緒に無事二層に到着する事ができた。


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