第12話 歌唱力の高い男



 骸骨の騎士はその名の通り骸骨が騎士の格好をしており、大きさは人間とほぼ変わらない。集団でプレイヤーを襲ってくる習性があるのだが攻撃と防御力が高い割には経験値がまずく人気がない。故にプレイヤーは蓮見一人しかいなかった。


 蓮見が骸骨の騎士の生息地まで来ると地面から次々と骸骨の騎士が出現し襲い掛かってきた。そのまま武器も構えず歩く蓮見に戦闘態勢で走ってくる骸骨の騎士。


「って数が多いな……。まぁいい。かかってこい!」


 HPが1割しかない蓮見はそのまま集中して骸骨の騎士達の攻撃を躱し始める。


 強くなることが嬉しい蓮見はスキル『火事場の俊足』の効果を使い次々と身軽なステップと身体捌きで攻撃を躱していく。


 そして、ハイテンションになっていく蓮見。


「英雄と呼ばれた貴方なら どんな時もたたえる……」


 とうとう歌を歌い始める蓮見。

 唯一の救いは蓮見の歌唱力が高い所だった。

 そのまま踊るようにして攻撃を躱して、この状況を一人楽しむ。

 それがただのバカではないと奇跡的にも証明されたのは歌い始めて30分後だった。



『スキル『歌の変換』を獲得しました』


『スキル『領域加速(ゾーンアクセル)』を獲得しました』


「お! 本命も来たな」

 スキルを確認するには今も四方八方から来る攻撃を何とかしなければならない。

 そこで蓮見は妙案を思いつく。


「お前達に見せてやる。俺の本気を。行くぜ全力で全速ダッシュ!!!!」

 そのまま走って骸骨の騎士が戦闘区域としている場所から全力疾走で脱出する。

 そしてなけなしのお金で予め勝っておいたポーションを飲む。


 ゴクゴク


「ぷはぁーーー。危うく死ぬかと思った……」

 蓮見は新しく手に入れたスキルを確認する。



 スキル『歌の魔力変換』 自動発動。

 効果:歌を歌い続けている間MP回復。1秒でMP1回復。

 獲得条件:戦闘中に歌を30分以上歌い続ける。



 スキル『領域加速(ゾーンアクセル)』 スキルスロットに装備する事で常時発動。

 効果:半径三メートル以内からの攻撃に対する回避率50%アップ。

    また遠距離攻撃(15メートル以上から)の場合、

    半径10メートル内に攻撃が侵入してきた場合も効果が発動する。

 獲得条件:デスペナルティを受けずに一定時間一定の間合いからの攻撃を躱し続ける。



「おぉ!! 素晴らしいスキルだ!! 頑張ったかいがあったな~」

 蓮見は『深紅の弓』に『領域加速(ゾーンアクセル)』を付与する。

 これで弓の弱点である近接戦闘に持ち込まれても対処できるというわけである。


「内心はクリティカル率をあげる魔法攻撃やスキルを一緒に手に入れたかった所ではあるがまぁいいか。これもきっと何かの縁(えん)だろうし!」


 後はイベント当日までに少しでも戦い方の基本を覚え、レベルを上げるだけとなった。


 果たして蓮見の初イベントはどうなるのだろうか。 


 そもそも美紀はどれぐらい強いのだろうか。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る