プロローグ

第2話 目標設定

 ――神の目を持つ弓兵。


 ある日、誰かが言った。

 いつ、どこで、誰が、言ったかはわからない。

 だけど、奇跡と呼ばれる現象を起こす人間はいる。


 つまるところ、奇跡とは何なのだろうか?


 あるサイトではこう定義されている。

 人間の力や自然法則を超え、神など超自然のものとされるできごと。


 結局のところ身も蓋もなく言うならば、それが本当に奇跡なのかを確認する事は誰にもできない。もっと言うなら、人によっては奇跡でも他の人から見れば奇跡でも何でもないと言う事はよくある話なのかもしれない。


 それはゲームの中でも同じ。


 ――――――――。


「さてと……久しぶりにゲームでもするか」

 先日幼馴染から一緒にしよと言われたゲームのパッケージに目を向ける福永蓮見ふくながはすみ


「っても……もう一ヶ月近くプレイしてないしな……。そもそも初期設定以外何もしてない状態だけど……」


 天空の城ラピュタを連想させる城を背景にして剣を持ったイケメン少年がデザインされたパッケージに視線を向ければ『YOUR FANTASY MEMORY』と表記されている。


 今年2027年1月24日に販売され大ヒットVRMMOゲームと世界的に有名なゲームの一つである。しかし蓮見は家族の不幸事から始まり家の引っ越しとここ一ヵ月忙しかった事からゲームをしている時間はなく気付けば出遅れた感のせいでスッカリと興味が失せていた。

 

 父が他界し母の意見で引っ越しした家は二人で住むにはとても広く快適ではあった。更には高校も家から近くと通学にも便利がいい。



 だが。


 家の立地が問題だった。


 もっと言えばお隣さんに問題があった。


 引っ越した後に気付いたのだが、お隣の家がまさかの幼馴染の家だったのだ。



「引越した家の隣に偶然小学生の時に疎遠になった幼馴染が住んでいたってこれは奇跡か……。てか家が近すぎてゲーム断れねぇ……」


 二階の自室から隣の家を見れば電気のついていない幼馴染の部屋が見える。

 母から聞いた話しでは家族旅行中で今は誰も家にいないらしい。


「美紀の前でカッコ悪い所は見せたくないし感覚戻しておくか……。それに噂ではアップデートがかなり進んでるみたいだし」


 ハードに電源を入れ、ゲームを始めると。

 新しくアップデートされたデータのダウンロードから始まるがすぐに終わった。


 久しぶりの感覚。

 目を閉じて、しばらくしてから目を開ける。

 そこには以前見た時より活気溢れる街、その中心地に位置する冒険者ギルドの建物の前にある憩いの場だった。


 変更箇所を確認のため、まずはステータスを確認する蓮見。


 空中に出現したウインドウを操作する。


 紅 

 Lv.1

 Hp.69

 MP47


【STR30(+0)】

【VIT17(+0)】

【DEX40(+0)】

【AGI39(+0)】

【INT22(+0)】

【MND9(+0)】

【CRI33(+0)】



 続いて装備を確認する。

「My装備は……えっとここだっけ……」


 久しぶりの事に少し戸惑う蓮見。

 尚、ゲーム内では本名ではなくくれないと言う名前を使っている。


「ふむふむ。今装備しているのはMy装備1か」


 そのままリストを確認する。


 装備


 頭【空欄】

 体【空欄】

 右手【空欄】

 左手【空欄】

 足【空欄】

 脚【空欄】

 装備品【空欄】

    【空欄】

    【空欄】




「まぁ、初期ステータス何てこんなものだろ」


 このステータスが良いのか悪いのかはわからない。

 だけど初期ステータスは見たところ皆同じぐらいだろうと勝手に思う事にした。

 周りを見渡せば初期装備の人間もチラホラと見えたがそこまで大きくは変わらなさそうだったからだ。

 最初に自分が選んだ武器で若干の差は合っても大きくはないように見える。


「はて……これからどうしたものか……」

 思い悩みながら視線をキョロキョロと移動させると、この街の中と外を案内する提示版が目に入って来た。

 早速確認しにいく蓮見。


「なるほど……南は初心者、東西は初心者から中級者、北は上級者用か」


 「う~ん」と言いながら腕組みをして考える。


 本来であれば南にある初心者の森という場所に行くのが正解なのだろう。

 しかし正直レベル上げ程めんどくさい事はない。

 だからと言っていきなり北にある熟練の森に行けば、初期装備の蓮見では瞬殺されるだろう。

 ならばと思い、蓮見が答えを出す。


「初心者とも書いてあるし西に行くか……!」

 蓮見は何の迷いもなくそう呟いて、西にある魔の森へと向かう。

 歩きながらまずは目標を決める事にした。

 そして、目標は『死なない!』で決定した。

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