言霊

もうすぐ春が来る匂い。天気が良くて無意識にスキップしたくなるようなあの日私は未だに人生で1番後悔している選択をした。


もし別れを告げたら私のことを好きだと必要だと引き止めてくれるのか、私が居なくなることに抵抗してくれるのか気になって、あんなに大好きでしかたなくて一方的でも良かったと思っていたのに欲張って気持ちを試すようなことがしたから罰が当たったんだ。


あなたの家の近くの居酒屋で軽くお酒も入り

この前考えたことをつい出来心で聞いてしまった

『ねぇ、私たち別れる?』

もうすぐ春が来る匂いがして妙に天気が良くて無意識にスキップしたくなるようなあの日、人生で1番後悔している選択を私はした。

別れを告げたら私のことを好きだと必要だと引き止めてくれるのか気になって行動にうつしてしまったあの日の自分を今でも許せてない


あなたの家の近くの居酒屋で軽くお酒も入り

めんどくさい女になってしまった。

『ねぇ、もし別れるって言ったらどうする?』

珍しく驚いた顔をしたあなたはグラスを見つめて少しの沈黙の後『なんで?』真っ直ぐ私の目を見つめてそう聞いた。

『私のこと好きか分からなくて毎日不安になってるのにあなたからは連絡こないし好きだって言われたことがないことに気がついて、自信が無くて....追うのが当たり前の日々だったのが歩幅を合わせてくれるようになってから欲張りになっちゃって疲れちゃった』

真剣な視線に耐えられなくて独り言のようにテーブルを見つめながらそう呟く私の言葉を微動だにせず聴いてくれた。

ああ、繋ぎ止めようとしてくれるんだと思った。

別れたくない、不安にはなってるけど変わらずずっと好きなのって弁解しようとしたのに声が出てこなくて。

『わかった』

今まで何回も聞いてきたあなたのその4文字に世界が止まったように感じて一瞬で酔いが覚めて血の気が引いた。

『.....でも好きだよ。過去より常に今の方がずっと好きなの』目と鼻の間がツンと痛んでどうしようもない

『好きなのに別れるか聞くなんて...俺には考えられないよ』

視界が歪んで顔を上げられない

嗚咽が漏れそうで声も出せない

涙がこぼれ落ちないように必死に太もものスカートの裾を握りしめて震える声で

『....別れたくない』そう呟いた私の声は今までで1番小さくて、あなたに届くことはなかった


それから数日間の記憶はない。

ただ一つ覚えてるのは最初から最後まであなたから一回も好きだとは言われなかった事。

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