まるで主人公

付き合ってから初めて知ったことの一つ、あなたは香水をつけるのを好きじゃないということ。


みなとみらいで遊んだ夜。少し混んでる帰りの電車の中で思い出したように私が聞いた。

『そういえば香水とか使ってないの?』

『匂いが強くてあんまり好きじゃないから持ってない』

『でもいつも良い匂いするよね。爽やかだけど少し甘いような...もしかして体臭?』

『多分、柔軟剤』

私のボケはいつもスルーして真顔で答えるそんな彼がまた好き。

『何の柔軟剤使ってるの?!』

『....聞いてどうするの』

『今日帰りに走って買いに行く』

『メーカーとかよく分かんないから家に帰ったら写真送るよ。だから買うのは今度にしな』

少しそっけなくてもちゃんと教えてくれる。

お揃いにすることも許してくれるあなたがどうしようもなく好き。


その後ちゃんと写真を送ってきてくれて私は次の日朝一で寝起きのジャージ姿でドラッグストアへ走った。

その事を報告したら、どんだけその匂い気に入ったんだよって笑ってたあなた。

違うよ、あなたの匂いだから好きなの。そう伝えたら女心はよく分かんないって首を傾げてたよね。


夏の朝のジリジリ肌に刺すような日差しも、近くで鳴ったクラクションも気にならなくて。

日常全てがキラキラのフィルターがついたみたいに輝いてた19歳の夏

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