苦味

19歳、タバコを吸い始めた。

きっかけは卒業後に始めた仕事のストレスでつい。

初めて彼に見られた時止められて。

ストレスのせいだって言ったらタバコの代わりはないのかって聞くからあなたしかいないって分かってるでしょって抱きしめた。


『そんなに安心する?俺の腕の中』

『分かりきってるのに聞かないでよ』

『ごめんごめん。最近、吸ってる?』

『....なんで?吸う女嫌い?』

『吸いたくなったらここに来ればいいじゃん』

呆れたように少し掠れた声で笑うから

もっと強く力を込めて抱きしめた

『私はしつこいから毎日来るよ』

『知ってる』

『あなたと比べちゃったらセブンスターは足元にも及ばないもん』

『単純だね、俺もお前も』

吐き出すように言ったその言葉が何故か無性に嬉しくて少し背伸びしてあなたの唇目掛けて飛び込んだ。



右手にあるパーラメントを見つめながらそんなやりとりを思い出す。

あれからセブンスターは吸えなくて旦那が当時吸っていたこれに辿り着いた。


『1番好きな人とは結婚できないってタレントがテレビで言ってたの本当だったなぁ...』

日付が変わる頃のベランダでの呟きは煙と共に跡形も無く消えた。

用も無く、いや、有事でも連絡できなくなってから何年も経つというのにどうして未だに思い出しては辛くなるのか、泣けてくるのか。


結局あの時一番可愛いのがあなたじゃなくて私だったからなのか。


あと一回太陽と月が交代すれば私は二十七歳になる。

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