嗅覚
26才の夏、夕陽がビルの窓に反射していて思わず目を細める。今日も4才になる娘と同じような毎日を過ごして何も変わらない家に帰る。
何一つ変化がない日常。
『ママー!はやくー!』
娘が走りながら駅から出た角の道を曲がっていく
『危ないから道路の近くでは走っちゃダメだって!』駆け足で後を追いかけ角を曲がると娘がスーツ姿の男性とぶつかりそうになっていた
『あっ、すみません!ぶつかってませんか?ほら、走ったら危ないって言ったでしょ、こういう時は何て言えばいいんだっけ?』
『....ごめんなさい』拗ねたように唇を尖らせて下を向きながら謝る娘を見ながら男性が微笑んだ。
『僕は大丈夫です。お気になさらないで。』
私と同年代だろうか、男性はお辞儀して横を通り過ぎていった。
その時忘れもしないあの香りが私の嗅覚を刺した。
人生が一番輝いていた一九歳。
あの日々の記憶が走馬灯のように駆け巡る。
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