投稿その4

 高校に入学してはや1ヶ月。真純くんと出会ってからも1ヶ月なのに、ぜんぜん距離が縮まってないよ~。

 きっと私のこと「隣の席の人」ぐらい……うーん、さすがに自分で言っててこれは寂しいな。

 テイク2。きっと私のこと「自分のSNSの話ばかりしてくる人」ぐらいにしか思ってなさそう。(これはこれでどうなんだ?)

 もはやこれは私の“匂わせアピール”が足りないせいだね!もっとガツンといかないと振り向いてもらえないよ!


 ということで、私のツイッターを使って、カップルの定番「記念日匂わせ」を投稿することにしました。

 なぜツイッターか、それはラブラブ写真が撮れないから!

 中二の弟を使って仲良しアピール写真を撮ろうと思ったけど、弟から冷たい目で見られそうでやめました。

 なので文字だけでアピールします。そのツイートがこちら!

「毎日楽しい!ありがとう(ハート)キミの好きなところ もう10個以上言えるよ。#1ヶ月記念日」


 【匂わせポイントその4】いろんな数字を散りばめて“ラブ深度”をアピール!


 おぉ~、これはいいんじゃないですか?

 毎日が充実しいて楽しいことを伝えつつ、短期間でこんなにたくさん好きなところ見つけちゃったよっていう、想いの強さも表現!

 これなら真純くんも焼きもちどころか「香織さんと付き合ったらこんなに好きになってもらえるんだ!」って気付いてくれそう。

 ほら、さっそく「いいね」がいくつも付いてる!ふふ、これは効果がありそう……。


 翌朝、教室に着いてすぐ、真純くんに聞いてみた。

「ねぇ、ツイッター見てくれた?」

「見た見た。彼氏さんと出会って1ヶ月なんだね~」

「そうそう、あっという間だったよ~」

「それなのに、好きなところを10個以上も言えるなんてすごいね。どんなところが好きなの?」

 そ、そう言われたら教えずにはいられないなぁ。真純くん、よーく聞いててよ。

「えっと……まずは人を疑わない素直なところかな」

「へぇ~いいね」

「あとは……人の話をちゃんと聞いてくれるところかな」

「わかるなぁ。それって、できそうでできないよね。」

「うんうん。あとはSNSをちゃんとチェックしてくれるところ」

「そっか。いつも香織さんのこと気にしてくれてるんだ~」

「あとは……」

「あはは、ごめんごめん、お腹いっぱいだよ。やっぱり香織さんの彼氏さんだけあって、素敵なところがいっぱいだね」

 えぇ……ぜんぜん伝わってないぞ……。

「あ、そういえば香織さんとボクが初めて会ったのも1ヶ月前だね」

「そうそう!そうなの!」

 嬉しい!覚えていてくれたんだ!

「でもボクはまだ香織さんの好きなところ、10個も言えないなぁ」

「えっ!?も、もしかして、少しぐらいなら言える?」

 ……これは!なんというチャンス!ぜひとも参考にせねば!

「うーん、ちょっと待って……えっと……考えてみるけど……」

 えっ?そんなに出てこないの?

「うーんと……えーっと……うぅ……」

 頑張って真純くん!……って、そこまで頑張らないとダメなの!?ホントに無いの!?

「ご、ごめん!……来週でもいいかな」

「そんなにかかるんかい!」

 ――思わず声に出てしまった。


 ジェラシー度0%!匂わせ失敗!


 【反省点】好きになるのもいいけれど、好きになってもらうのも大事だね。


 週が明けて月曜日。学校につくなり「私の好きなところ」を問いただしてみると……。

 一週間考えてひとつだけ。「彼氏さんのことが大好きなところ」だとさ。

 つまり、架空の彼氏を好きな私が好き?……って、もしかしてこれ、詰んでませんか~!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る