拍手 133 二百三十「領主の城」の辺り

 シセアドがその報せを受けたのは、午後の訓練が終わった辺りだった。

「何だと?」

 聞いた内容に、思わず睨んでしまったいては、この情報を持ってきた同僚だ。

「それは本当か?」

「ああ、間違いないらしい。そもそも、あの村の連中はお互いを根絶やしにでもしない限り、争う事をやめやしないさ」

 同僚の言葉にも頷ける。セガン村とクダ村の争いは、馬鹿馬鹿しい事にシセアドが生まれる前から続いているという。

 しかも、最初のきっかけはセガン村の長の息子の思い人を、クダ村の若者が横取りしたという、なんとも小さな理由だそうだ。

 だが、小さく馬鹿馬鹿しい理由であっても、人死にが出る争いを何度も繰り返すようならこちらも考えを改める必要がある。

 ともかく、今は早急に対応をしなくては。

「まずは、領主様の耳に入れなくてはな」

 シセアドは訓練後の身支度を終えると、すぐに主である領主に今聞いた話を報告した。

「何? またか?」

 領主も呆れた声を出している。彼も当然、二つの村の争いについては理由から全て知っていた。だからこその一言である。

 これまでにも、幾度となく和解するよう申し伝えてはいるのだが、長く諍いあった相手とは相容れない、とばかりにどちらの村も言う事をきかない。

 もちろん、表向きは了承したと言うくせに、今回のように何でもないような事で再び争い合うのだ。

 ちなみに、今回の争いの理由はセガン村の猟師の獲物をクダ村の猟師が横取りしたというものだそうだ。

 セガン村の方は、争いの大本の理由が理由だけに、また横取りかと息巻いているらしい。

「全く、懲りない連中だ」

 領主は溜息を吐く。いくら領主の命に背く村といえど、さすがに住人全員を捕縛する訳にもいかない。せいぜいが争いの中心人物を捕らえる程度だ。

 とはいえ、ここらで抜本的な手を打たなくてはならない。その為にも、今回の争いには水を差しておきたいのが領主の考えだ。

「シセアド、少し朝が早くなるが、行ってくれるか?」

「もちろんです、ニウーズ様。私の剣は、ニウーズ様に捧げたもの。いつなりとお使いください」

「うむ、頼んだぞ。その後には、引き続き力の強い呪い師を探してくれ」

「はい」


 そうしてシセアドが少々手荒い仲裁に向かった結果、呪い師を拾ってくる事になったのだから、世の中本当にわからない。

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