拍手 071 百六十八話 「地下のエルフ」の辺り

 薄暗い地下牢で思うのは、里での暮らしばかり。

 あの頃は少し退屈さを感じながらも、そんなものだと思って過ごしていた。

 でも、違ったんだ。あの何でもない時間こそが、何にも代えがたい幸せだった。

 今更思い知っても遅いのだけど。

「ふう……」

 私が攫われたのは、里のすぐ側だった。里にはユルダ……人間達に気づかれない為の工夫がしてあったのに、あいつらには通用しなかったらしい。

 私の他にも、四人の仲間が捕まった。うち一人は男性だったから、すぐに別の場所に送られたと聞いている。

 一緒に捕まった仲間も、別々の街へと売られていった。ここにいるのは、私とは違う里から攫われた女性ばかり。

 ここから出られる事なんてない。私達はユルダに比べて寿命が長いから、死ぬまで出る事はないと聞かされている。

 本当に、どうしてこんな事になってしまったのか。確かに里の端まで出てしまったのは、私達が悪かったのだろう。ほんの好奇心からの事だったのに。

 その結果がこんな生活なんて……

 誰か、ここから助けて……

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