拍手 040 百三十七話 「エルフ」の辺り

「な、何だ!?」

 男達に動揺が走った。いきなり見えない何かによって動きが封じられたのだ。

「ぐお!!」

 隣にいた仲間が、いきなりくぐもった声を上げて倒れる。何が起こったというのか。周囲を見回すが、誰もいない。

 いきなりこんな事が起きるなんて。そう思っているうちに、彼の意識もいきなり途切れた。


「う……ここは……」

 意識が戻って、周囲を見回すと、仲間が全員後ろ手に縛られて転がされている。しかも、周囲は土の壁だ。

 まさか、と思って上を見ると、丸く縁取られた空が見える。まっすぐ掘られた大穴の底に、自分達はいるのだ。

「どうなっているんだ……こんなの……まるで……」

 おとぎ話で聞いた、昔の魔法使いの仕業のようではないか。エルフ共は魔法が使える者を「魔導師」と呼ぶらしい。今回捕らえる予定のエルフの中にも、魔導師がいたはずだ。

 だが、彼がこれをやれる訳がない。エルフに対して魔封じの珠を使うのは基本だ。あの珠で作った枠の中に魔導師が入れば、途端に魔力を盗られて動けなくなる。

 エルフは魔導師でなくとも魔力を必要とするらしく、現にあの剣士の女エルフも力をなくしていた。

 では、これをやったのは一体誰なのか。

「おい! 起きろ!!」

 声をかけて仲間を起こしても、縛っている縄を解く事すら出来ない。しかも自由になったところで、この穴から脱出出来るとも思えなかった。

 どうしてこんな事に。いつも通りに仕事をしていただけではないか。絶望が押し寄せる中、男はうなだれていた。

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