騙されないんだかんね!(ハーレクイン風、誤解、牧場)
お題は「金」、しょっぱい作品を創作しましょう。補助要素は「家族」です。
*
自分の親ながらあきれてものが言えない。
「保証人になって30万ドルもの借金なんて……」
キャサリンは、跳ねる金髪をもしゃもしゃと机に掻いて突っ伏した。
体で返せるものなら返したいところだが、あいにくそれほどの価値があるナイスバディではない。
スレンダーと言えば聞こえはいいが、出るところがあまり出ていないことはコンプレックスだった。
「牧場と土地を売るしかないのね」
キャサリンは大きくため息をついた。
家は、テキサスで小さな牧場を営んでいる。
大学で獣医の勉強をした彼女は、卒業をしてから実家を手伝っていたがまさかの事態に途方に暮れた。
牧場は、両親だけでなく兄夫婦も携わっている。
姪のルーシーまで路頭に迷うのは避けなければ……。
青々とした牧草を馬たちがのんびりと食んでいるのを見ながら、キャサリンは泣きそうになった。
こんな穏やかな日々がずっと続くと思っていた。
なのにどうして……。
「キャット、泣いてるのか?」
背後から声をかけてきたのは隣の大牧場の一人息子。幼馴染のジョージだった。
「な、泣いてないわよ。それより、あなたいつ帰ってきたの?」
数年ぶりに会ったジョージは、カウボーイというより洗練された実業家の雰囲気を漂わせていた。
「ついさっき。それより、おじさんから聞いたよ。ここを手放すんだって?」
「ええ、それで済めばいいけど兄はこの仕事しか知らない人だし、就職先が……。あなたの実家でしばらく雇ってもらえないかしら?」
「それはいいけど、君はどうする?」
「私は、獣医だから借金さえ返せれば、無一文になってもやってけるわ」
たぶん……という言葉は飲み込む。
「キャット……つらいときは泣いていいんだぞ?」
「ダメよ。一度泣いたらずっと泣いてるようになる。
ずっと泣いててもよくなったら、その時に泣くわ」
「じゃあ、僕はいつ君に胸を貸せばいいんだ?」
「くすっ、面白い冗談ね。きっと永久にこないわね」
キャサリンはジーパンの泥を払いながら、重い腰を上げた。
「僕は本気だ。君のことが好きだから助けになりたいんだ!」
ジョージはそう言うと、キャサリンを強く抱き寄せる。
彼女は、しばらく小さな頭を彼の胸に預けたが返事は手荒なものだった。
大きく手をしならせた体重の乗った平手打ちがあたりに響く。
「キャ、キャット??」
「私は、ガリガリでショートで男っぽいかもしれないけど女なの!
あんたハイスクールの頃うちのお兄ちゃんにキスしてたでしょ!?
ゲイなのに私に告白するなんてどういうつもり。
ジョージのことは家族だと思ってたのに!」
キャサリンはそのまま荒馬も真っ青の勢いで母屋へ走り去った。
ジョージは、呆然と頬をおさえ我に返る。
「ちょっと、それ誤解!! 誤解だよ。キャット!!」
かっこよく告白したつもりが、女性として見ていなかったと思われ彼女を傷つけた挙句に、彼の兄を好きだと思われていたとは。しかも、ハイスクールの頃から!?
キャサリンが見たという衝撃的な場面は、彼女に告白しようと兄のトーマスに相談していたときのアクシデント。事故だ。
―――― ずっと彼女のことを想っていたのに!!
ジョージは命がけでキャットの後を追って行った。
二人がうまくいくかどうか、詮索すると馬にけられてしまうかも?
* E N D *
ハーレクインロマンスが好きで結構読んでます。
どれを読んでもハッピーエンドなのがいい(笑)
テキサス物よりは、ヒストリカルなのが好きかなぁ~。
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