ふるさとの駅舎(駅、擬人化?、旅立ち)
お題:無人駅
(この山も、川も、空も、見納めかも知れない……)
ひとりの若者が大きな荷物を抱え 見送りもなくホームにたたずんでいる。
山村の小さな小さな駅。
高校を卒業すると、若者はみな都会へ行ってしまう。
この古い木造の駅舎を後にして……。
――――――――――――――――――――
レールに耳をあて、遥か都会に夢をはせていた子供たち。
枕木を数えていた小さな影が大きくなるにつれて、
私は、あなたたちとの別れが近いことが分かってくるの。
誰もいない駅。
みんなここを通り、旅立って行く。
私は、その背を見送るだけ。
立ち止まらない、あなたたち。
たとえこの場所にもどってこないとわかっていても、
祈っています。
あなたたちの成功を……。
この駅舎から。
――――――――――――
知っている。
知っていた。
たとえ人影がなくとも、
母親にも似た暖かいまなざしを
戻ってくるとは、誓えない。
けれど、これだけは約束する。
僕はこの場所のことを忘れない。
力強いSLの鼓動が迫ってくる。
汽笛の音。
桜舞う中、僕は新しい土地へ旅立つ。
彼は、最後に心に刻むようにふるさとの風景を、駅舎を振り返った。
『いってきます』
『……いってらっしゃい』
誰もいない駅に、
囁きがきこえる……。
・FIN・
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