第六章(3)以洋、懷天と夕飯後に散歩する
一緒に夕飯を食べた後、
「この後はまた講習に戻らなきゃならないんだよね?」
繋いだ手を握り返しながら
「そうだよ。でも今日が最終日だから、明日からはいつも通り家に戻れる」
笑ってそう言った
「うん……」
頷いた後、
「
「なんで突然そんなこと考えたの?」
「ええと……」
少し考えてからまた
「心配だから、かな。でも
「それって、何が言いたいんだい?」
「うう……」
どう答えるのか適切なのかひとしきり
「つまり……
「だから君もまた何か危険なことをしようと思ってるってわけ?」
あっさりと
「あなたが犯人から逃げないのと同じだよ。どんな凶悪な犯人が相手でも、だからって
「だから……心配してほしくないから、先に言っておこうと思って。少なくともあなたには、僕のすることを信じていてほしいから」
「それなのに君が何をする気かは俺に言わないわけ? それじゃ俺だって信じようがないじゃないか」
やるせなさげにそう言いながら
「痛た……痛いよ」
そのままぎゅっと頬をこねられ、悲鳴を上げた
「だって……説明したら絶対心配するだろうし……、あなただって僕に、犯人と対峙する時はこんな風にするんだなんて詳しく説明したりしないでしょ」
頬をさすりながらの
「大丈夫だって言うのは、本当に確かなんだね?」
至近距離から
「うん。大丈夫だって自信を持って言える」
それでもまだ
「なら、俺ももう何も言わないよ。怪我をしないように気をつけてくれればそれでいいから」
「うん!」
大きな声で力強く
ただし、この点についての自信は実はない。死にはしないだろうけれど、ちょっとしたかすり傷くらいは負うかもしれない。もしくは、致命傷にならない程度の怪我だとか……。
決して
足を停めて、軽く
怪訝そうな顔で
数瞬後、
「身長高過ぎだよ」
少し冷たい夜風の中、自分の身体がどんどん熱を帯びていくのを
やがて
「君が自発的に動き出すと心配になるな」
低い声でそうささやかれ、
「心配って何が? 僕が僕でないかも、って? それとも、また僕が暴走するんじゃないかって?」
「君が、君か君でないかの区別はもうつくようになったと思うよ。でも、君が暴走するんじゃないかってのは本当に心配してる」
「あなたが心配してるのはわかってる。だから僕も気をつけるよ」
……どうも……僕もあなたのことが好きだよって伝えるのは、また別の日にした方がいいみたい……かな……?
告白するつもりで――自分も
「うん」
もう一度
「俺はそろそろ戻らないと。午後に行ったあの先輩の家まで送るんでいい?」
「それでお願い」
『なんで遺言の一つも残さないんだ? 万一死んだ時のために、遺体の回収も頼んどけよ』
『でなかったらまだ時間はあるんだし、この機会にホテルとかどうだ。道を渡ったところに一軒あるぜ? 今ヤっとかなかったら、今後チャンスはないかもしれねえんだし?』
『お前、こいつが好きなんだろ? 一目瞭然なのになんで言わねえんだよ? てかお前さあ、お前がこいつに相応しいとかそういう勘違いしちゃってるわけ?』
『こ~んないい男がお前と付き合ってるとかマジもったいねえわ。そもそもこいつと吊りあうような価値とかお前にゃ全然ねえんだっつの!』
一切聞こえていない振りで
別にこの手のろくでもない悪口を耳にしたことがないわけでもない。聞いていて気分のいいものでないのは確かだが、悪口を言いながら
今回の件で自分はまた一つ知識を得たなと
こっそりと溜め息を漏らし、
だから……僕は絶対に死んだりしない。絶対に。
心の中でこっそりと
自分のことも、
本気で
大きく息を吸い込み、
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