第六章(1)以洋、幽霊の実家を再訪する
開かれたままの玄関に、用心深く近付く。棺が安置されている部屋の外には、招魂用の簡素な祭壇がまだそのまま置かれていた。ずっと呼び掛け続けているのに
鍵の掛かっていない金属の格子ドアを、軽くノックしてから
「どうぞ入って。
「ええ、はい」
頷いて
「お母さんは、お身体の方は大丈夫ですか?」
蒼白な顔で目を泣き腫らしている
「おかげさまで。大丈夫よ、心配しないで」
そう答えた彼女が、躊躇うそぶりを見せた後にまた口を開いた。
「あのう、あなたは
「後輩なんです。
答えながら、
「
「じゃあ、あなたが今朝言った、
「それは……」
しばらくして今度はそう訊ねられ、どう説明しようかと目を彷徨わせた時に、
しかも、上に書かれた金額は、
「
信じられない気持ちで
呆気に取られた表情になった
「そうよ。そのお金を持ち出したのが
「
怒りのあまり、思わず
その言葉を耳にした
「あの、
「ありがとう……、ありがとう、
「私も信じているの。あの子がお金を盗ったりなんてするわけないって……」
涙を拭い、彼女が言葉を続けた。
「でもこのお金のせいで
「その考えは理解できます。でも……お願いだからそんなことしないでください。僕が方法を考えます。
真剣に言い募る
こんなことは到底認められないし、自分のした悪事を人に押し付けるような奴の存在も認めたくはない。おまけに自分の行動を悔いるどころか、のこのこ出てきて人から感謝されようとするなんて。
大学へ向かって移動しながら、ますます腹が立ってくる。
キャンパスに入った
こうなると
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