第三章(4)以洋、幽霊に激怒する
目を瞬かせて
しかし、
呆然としながら
ええっと、これっていったいどういう状況? 僕、
あれ? でもそれなら、なんで
きょとんとして考え込んでいた
なにこれ? 口の端が切れてるっぽい? ……けど、ええと、つまり今のこれってどういう状況?
顔を上げて
「……どうか、した?」
「
「うん。あの僕、僕達? どこにいるの?」
それに答えるのをなぜか
ズキズキと痛み始めている頬に手を押し当て、
「ここは……」
そう言いかけた
「ごめん」
「え? ……何が」
何が何やらさっぱりわからず
「痛むか? ごめん。本当にごめん」
謝罪する
腕を伸ばし、
「別にそんなに痛くないよ……。だから、謝らないでよ……」
痛みのせいで意識がはっきりする。この状況は、昨日と同じだ。ソファで居眠りしていた自分を起こしたあの時も、
何が起こっているのか、
「僕、何かしたんだね?」
確信をもってそう訊ねている
「いや……別に。まだ痛む?」
結局言わないことにした
「ん……」
愛撫のような指の動きに別の何かを感じてしまったらしく、
「い、痛くないから」
頬を赤く染めてそう告げる
天真爛漫で純真で、すぐ真っ赤になってしまう
ほっとして
「本当にごめん……。すぐに良くなるとは、思うんだけど」
「うん……」
いったい何が
どうにも理解できないまま、
「大丈夫だから。もう全然痛くないんだから、だから気にしないでよ」
そう口にしてから、違和感を覚える。
改めて
ここは、ホテルだ。つまり、僕は
眉を顰めつつ、着ている服になんとなく手を滑らせた
「ええええええ!!」
「どうした?」
いきなり大声を上げた
「どこか具合が?」
それに答える余裕もなく、
続いて
それでもいささかパニクって
「僕、僕いったい
ようやく気付いたのかと言うような苦笑が
「大丈夫、君は俺には何もしてないから」
いや、そんな顔してそんな風に言われても。
「じゃあ、じゃあ、なんで僕達、ここに……ホテルみたいなところに……」
こわごわと
「話すと長くなるんだ」
まだ苦笑したまま
「取りあえずここを離れようか」
「今、話して!」
今度
「あいつ、いったい僕の身体を使って何しでかしたのさ?」
「
聞いたこともない名前が突然出てきて、
「知らないけど」
「その人物は、君の大学の教授なんだけど……今朝方、君は道でその人物にだね……声を掛けてこのホテルに……来てくれるよう頼んで……」
「嘘でしょ! なんでそんな!」
頭を抱えて
もうちょっと早くにわかっていたら……こんなことなら、いっそ一昨日、いや、もう三日前ってことになるのか、あの時にあのまま最後まで……。
放心するあまりそんなことまで考え始めた
「安心していいよ。君達はまだ何もしてなかったから。ホテルの下で君を見掛けたんで、急いで止めに来たんだよ」
「ほ、ほんとに?」
そろそろと
「本当だって。……あの男がそこまで素早かったとも思えないし」
「ほら、まずはここから出よう」
まだ顔を強張らせたまま
いったいなんだってあいつは、僕の身体を使って白昼堂々うちの教授をナンパしたりなんか。おまけに僕は全然意識がなかったんだぞ。
別に女の子じゃないんだから、とそんな風に言う人もいるだろう。別に減るもんじゃないし、と言う人も。
けど……いやだ、ものすごく嫌だ。……せめて、せめて……こういうことは好きな人としないと!
でないと気持ちが悪いだけだ!
ますます腹が立ってきて、涙が出そうになる。膝に乗せた両手をきつく握り締め、掌に爪を立てて
そんな
「あまり怒らない方がいいよ」
「大丈夫だから、怒らない方がいい。君が怒れば怒るほど、あいつの思い通りになるだけだって気がする」
「うん……わかった」
涙を拭って嗚咽混じりに答えた
「泣かないで」
「うん」
頷いて顔を上げた時、車のフロントガラスの中、前方の電信柱の上に
「
「え?」
よく聞き取れなかったらしく
「まずは、まずは
再度
無言で
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