第三章(1)以洋、幽霊との対話を試みる
第四日目。
あの幽霊と話し合ってみることに
朝、
ぐっすり眠れたし、昼には
時々
なぜか男に生まれてるけどね……。
その点がどうにも不可解だが、そんなことは考えても一文にもなりはしない。さっさと頭を切り替えて料理を始める。
角切りにした豚のバラ肉を、旨味が中に閉じ込められるようさっと炒めて焦げ目をつける。肉を電鍋に移して調理時間を設定し、家の中も綺麗になったところで、
いよいよあの幽霊と話をしてみようとする。
「この間は怒鳴ってごめん。……もしいるなら、出てきて僕と話してみない?」
そう口にした後、
返事はない。
「出てきて話さない?」
「君、なんで自殺したわけ?」
「それとも誰かにそう仕向けられた?」
「何かの濡れ衣を着せられたなら、僕が手を貸せるよ?」
「家族はいるの?」
「君、そもそも僕と話す気あるわけ?」
独り言を言い続けている自分が馬鹿みたいで、
いったいどうしたいんだよ……?
溜め息を吐いた
關帝様が見える方を向いて寝れば、比較的安全なはずだ……。
そんなことを考えながら、
夜、玄関のドアを開けた
笑いながらソファに近付き、
「
うっすらと
「なんでこんなとこで寝てるの? 風邪引くよ?」
不意に
「……」
思わず
その場で凍りついた
棒立ちになりながら
だが、
付き合うようになってから、同居するようになってから、全ての期間を合わせても、まだたったの四回だ。
一度目は、二人が知り合ったあの日。誘拐されていた女の子のおかげでのキスだった。
二度目は、
三度目は三日前の晩、四度目は一昨日の晩。
キスされた時の
今、この初めての
なのに、今のこのキスは非常に手慣れたもののように感じられた。それどころか、どんな風にすれば相手をその気にさせられるか熟知しているような気配がある。
お前は誰だ? そう訊ねるのも妙だろう。だが、誰なのかもわからないこの幽霊に、これ以上
険しい顔になった
「
「……」
しばらくして、
「ど、どうしたの?」
「
きょとんとして
「うん。……どうしたの? なんで今日はこんなに早く帰ってきたわけ?」
状況がよくわからない。ソファでちょっと居眠りしていたら、
首を傾げつつ、傍の時計に目をやった
「嘘でしょ? なんでもう七時になってんの? なんで僕、寝ちゃったわけ? ええええ、まだご飯全然できてな……」
言葉の途中で急に
「いったいどうしたの?」
びっくりさせないでくれ……。
ほっとして一息吐いた
だが、もしこの幽霊がこんなにも……影響力を持っているのなら、
「
「君はしばらく、
「僕、何かしたの?」
おずおずと訊ねてきた
「別に何もないよ。最近抱えてる事件のせいで夜中でも出動しないといけないから、君を一人にしていくのが心配なだけ。だから、先に
「うん、わかった」
いい子過ぎる返答だ。かえって心配になった
「
「うん、わかってる」
そう言いながら、それでも
そしてもしその事情のせいで
「君たちの関わってる世界には、俺は手が出せないからなあ。俺の存在が助けになるなら、絶対に君の傍を離れたりしないんだけど」
丸い頬に手を滑らしてやると、それに反応して顔を上げた
「僕のことでそんな風に悩むのはやめてほしいんだ。
やっぱり自分のせいだと、そんな風に
そのまま顔を近づけ、軽く唇に口吻けた。
ほんのささやかなキスにさえ、息もできなくなったような反応を
そんな
その後、耳元にささやいた。
「送っていくよ」
「うん」
まだ頬の血の気が退かないままの
「先にご飯食べないと……、あ、でも、煮込みしかないんだけど」
「なんでも食べるよ」
台所に駆け込んでいく
ざっと事情を説明して電話を切った後も、確信は持てない。
しかしどうあってももう二度と、あの幽霊が
溜め息を漏らし、
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