第113話 自己変革が必要な女
『頭が良くて美人でもねぇ…性格が悪いからなあの女は』
いつもどこかで陰口を叩かれているのは自覚していた。
『困ったときに頼りになるのは同期なのにさぁ…同期は自分一人だけという態度で本当に大丈夫なの?』
群れることでしか安心を得られないような連中に興味はなかった。だいいちそんな連中はあてにならない。
興味があるのは自分をひきあげてくれる地位の高い男だけ。
官僚として役職が向上するためならば、いかなる手段も用いた。それゆえ一部の者からは「客を選ぶ娼婦」と陰口を叩かれた。
武器になるものはすべて用いる。
それが出世の最短距離になるのなら、自分の美貌を用いることに何の問題があるというのだろうか。
ミレアには自分が悪いなどという意識は毛頭なかった。
むしろ自分という女を評価できない者はすべて愚か者とさえ思っていた。
そしていつかは自分の「本当の魅力」に気づいてくれる理想の恋人があらわれるものと信じていた。
その結果が妻子ある男との関係。破綻。
他人に騙される人間というのは、結局のところ自身に対して盲目であるといえよう。
自分を変えたい…人生をやり直したい。宇宙の果てにも人生があると言い聞かせて地球から遥か彼方のラザフォードに赴任した。
しかしいまだ満足な成果を得られずにいる。
前任地での悲しみが時の流れと共に少し癒されて、自己変革の必要性をあまり認めなくなったからなのだろうか。
このままでは同じことの繰り返しとなる。
誰も救いの手を差しのべてはくれない。
自分の心を欺いて現実から目を背けることをやめ、まずは自分自身に対して誠実にならないことには変革が起こるはずもない。
「惨めな思いをするのは二度といや…私は自分を変えたいのよ」
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