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紙を受け取りながら
「今すぐじゃなきゃ駄目か? 仕事もあるし、急に休むなんて言ったら迷惑をかけちまう。お世話になってるし出来れば迷惑はかけたくないんだ」
「はぁ、本当にちゃんと分かっているのかな。命と仕事どっちが大事なの?」
「両方だな」
胸を張っていう
「わ、わかってるぞ、ちゃんと。命あっての仕事だというのは。でも仕事も大事だ。そうだな、四日後なら迷惑もかけず仕事を休めるかもしれない」
「それじゃ駄目だよ。四日後は
「そうか、ブッキングしないようにだな。うん、分かった、二日後に行くようにするよ」
「本当にわかっているのか不安になるな。まぁ、でも行く気で居るならいいかな」
「おう、ちゃんと二日後に休みをとるぞ」
(湯治でもすれば良くなると言うのだろうか。まぁ、温泉治療とかいうからな。でも……)
自分のこの変な病気は、今までの話を聞く限り湯治などという物でどうにかなるようには思えない。
この宿に行く目的は一体何なのか
「三日後に必ずね。必要ないかもしれないけれど、数日分休みを取っておくと良いかもしれないから、取れそうなら取っておいて。宿の方への予約は自分がしておくよ」
そう言って受話器を持った
「予約も入れておくし、気持ち的には宿に行ってほしいけど、最終的に行くか行かないかは
「自由。
「当然でしょ、だって
鼻息を一つ、嘲る様に言い放った
そうして
言われるままにやってきた宿で言わるままに入った部屋。
自分の意志というものとはあまりにも遠い気がする。
普通の和室の宿泊施設と大差はなく、畳の上には座卓があり座椅子が一つ、座卓の上にはポットとお茶が置いてある。
入口左手の襖がある場所にはおそらく布団が入っているのだろうと
「何にもないな。ここで何をすれば良いんだ?」
来るんじゃなかったかもしれないと、そんな事を思いながら座椅子に腰かけ部屋を見渡してみる。
部屋を見渡して初めて自分が座っている位置が普通の旅館と違い上座ではないことに気付いた。
さらにあたりに漂う香りがどこかで嗅いだことのある香りだと一度大きく吸い込んでみる。
「あぁ、これって
そうして呟いた
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